連載
福井編:東京生まれ東京育ちのめがね男子、鯖江でアジャイル開発しつつ都会と地方のいいとこどりを目指す:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(40)(1/4 ページ)
めがね産業で有名な鯖江市にIT企業メンバーズエッジがオフィスを開設した。鯖江市は地方自治体では珍しく、オープンデータ活用や起業が盛んで、福井県で唯一人口が増加している市でもある。鯖江市の熱意とメンバーズエッジの思いが合致して生まれたオフィスに、東京生まれ東京育ちのエンジニアが着任した。
明治〜昭和:めがね産業に着目し、世界最高水準のめがね産地に成長する
福井県鯖江市は、めがね産業で有名だ。めがねフレームの国内生産シェア約96%を誇る産地の中心で、市をあげて「めがねのまちさばえ」をアピールしている。鯖江駅からめがねミュージアムまでの道は「めがねストリート」と名付けられており、市内のところどころでめがねを模した装飾を見掛ける。人口は約7万人。めがねの他にも漆器や繊維の生産も盛んな産業の地だ。
福井県の冬は寒さが厳しい。かつて、足羽郡麻生津村庄野(現 福井市生野町)の増永五左衛門と弟の幸八が「冬の農閑期に収入を得る手段はないものか」と模索し、めがねづくりに着目し、明治38年(1905年)に大阪からめがね職人の米田与八らを招き、この地域でめがね作りが始まった。続いて東京から豊島松太郎を招いて技術向上に務めていく。
職人から手ほどきを受けた連中を親方に据えた「帳場制」(制作グループ)を形成したことも、技術発展の促進に寄与した。活字文化の普及とともにめがねの需要は増加し、めがね作りは現在の福井市から鯖江市にも広がっていく。昭和になると加工が難しいチタン素材のめがねフレームの開発に世界で初めて成功するなど、鯖江市は世界最高水準の技術を誇るめがね産地へと成長した。
こうした歴史を見ると、鯖江市には先見性や技術習得への熱心さ、組織力などが地域に根付いているのが分かる。
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