福井編:東京生まれ東京育ちのめがね男子、鯖江でアジャイル開発しつつ都会と地方のいいとこどりを目指す:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(40)(4/4 ページ)
めがね産業で有名な鯖江市にIT企業メンバーズエッジがオフィスを開設した。鯖江市は地方自治体では珍しく、オープンデータ活用や起業が盛んで、福井県で唯一人口が増加している市でもある。鯖江市の熱意とメンバーズエッジの思いが合致して生まれたオフィスに、東京生まれ東京育ちのエンジニアが着任した。
地元の熱烈歓迎ぶりに圧倒され 鯖江の一歩を踏み出したエンジニア
鯖江のオフィスに勤務するのは杉原貴彦氏。メンバーズエッジに転職して鯖江市に移住を決めた。東京生まれ東京育ちで、Web開発やタブレット端末のアプリケーション開発の経験がある。
2017年8月にメンバーズエッジが主催したイベント「エンジニアの移住交流会〜釣り、離島、まちづくり。『×IT』を実現する先駆者が語る“地方の可能性”」に参加してメンバーズエッジを知った。当時はまだ移住する意向はなかったものの、転職はなんとなく意識していたという。
イベントで、メンバーズエッジが提言する新しい働き方に興味を持ち、翌月には鯖江市のオフィス開設予定地の視察にも参加した。
塚本社長が述べた鯖江市の「自然と商業施設が適度にそろっていること」「オープンデータ活用など先進的な取り組み」に魅力を感じたという。おいしい魚と日本酒でもてなされるなど、地元の熱烈な歓迎ぶりにも心を動かされたようだ。
はた目にはあっさりと移住を決めてしまったようにも見えるが、移住となると相当の決意が必要なはず。そのことを質問すると、杉原氏はふと思い出したようにある人のことを語ってくれた。
「尊敬しているエンジニアの先輩が、今、地元の伊豆でフリーランスで働いているんです」――先輩の生き方が杉原氏の背中を押したのかもしれない。
オフィスは内装に鯖江市の伝統工芸をふんだんに取り入れている。ミーティングテーブルには「越前箪笥」(車輪があり可搬式)、間接照明にはメガネ素材の「アセテート」、玄関から見えるふすまには会社のロゴをあしらった「越前和紙」、その金型は玄関に飾られている。
まだ移住して数日もたたない杉原氏に感想を聞くと「1時間強あった通勤時間が34秒になり、忘れものをしてもすぐに戻れてしまいます」と楽しそうに話す。住居がオフィスと道を挟んだ向かいにあるからだ。
同氏は通勤時間が激減した効果を数字で説明する。
「通勤時間を1時間とすると、1日2時間のゆとりが生まれます。1カ月の勤務日数を20日とすると1年で480時間。どこからともなく有休が20日分でてくるようなものです」(杉原氏)
最後に、移住を考えているエンジニアに、メッセージをもらった。
「今はネットがつながっていれば、どこでも働けます。そうした働き方を支援してくれる会社はあるので、(移住や転職に)チャレンジするといいと思います」(杉原氏)
(取材協力:メンバーズエッジ さとやまオフィス鯖江)
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