石川編:「取りあえず、どこかに就職」は危険――金沢のIT企業に就職する際のポイントを、Iターンエンジニアが指南しよう:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(41)(2/2 ページ)
「石川県で働きたいのに、他地域に出向になった」「入社してみたら開発ではなく営業職だった」――ご当地ライターがリアルな情報をつづる「UIターンの理想と現実」、石川編第1回は、地方IT業界あるあるを防ぐためのアドバイスや金沢のIT企業インタビューを、Iターンエンジニアがお届けします。
金沢のIT企業インタビュー
石川県にはたくさんのIT系企業がありますが、今回は、組み込みエンジニアフォーラムやKITハッカソンなどの交流会に会社として参加していて、地元密着型の会社として交流会に参加するエンジニアたちに認知度の高い、「金沢エンジニアリングシステムズ」(以降KES)を紹介します。
1988年に設立され創業30年を数える同社は、石川県金沢市に本社があります(※)。以下では同社の小林康博部長、桐山達彦人事課長に伺ったお話を紹介しましょう。
業務内容
KESの仕事は「開発」です。組み込み開発を中心に、制御系、画像処理など幅広い分野の開発を行っているので、低レイヤーから高レイヤーまでのプログラム開発に携われます。
開発OSは組み込みLinux、RTOSをカバーし、OSレス(マイコン)もあります。
KESの業務内容
ソフトウェア開発
組み込み機器(IoT関連/ICカード決済端末/魚群探知機/パネルコンピュータなど)、車載システム(オーディオ/ナビゲーション/バッテリー/トランスミッション・ECU制御/機能安全/モデルベース)、デジタル家電(IoT対応/液晶モニター/PC周辺機器など)、画像処理システム、監視/検査システム、Linux環境でのシステム構築、技術支援など、あらゆるジャンルや業種に組み込まれるソフトウェア
制御系アプリケーション開発
FAシステム、周辺機器制御、IoT化の導入
自社製品/システム開発
医療介護現場の作業支援機器/システム、PC操作入力支援システム(視線入力システム)、フォーム(姿勢)解析、画像監視システム、IoT関連システム/機器の設計/開発など
環境エネルギー
「RENERGY SYSTEM」燃料供給制御システム(廃食油の再利用など)
環境、職場の雰囲気
開発環境は基本デュアルモニターで、メモリも大容量のPCを使えます。
開発に必要な部材は、都度申請すると購入できます。「本年度の予算がないから、来年度まで待たなければならない」ということはないそうです。
勤務時間は8:30〜17:30。社員の平均残業時間は月26時間で、「サビ残」はもちろんなし。
職場の中での人間関係のトラブルは、お二人が知る限りこれまでなかったとのこと。チームメンバー同士や上司が怒鳴り合うことのない、平和な職場環境だそうです。
筆者が驚いたのは、「いろいろな経験をして人として成長することをサポートする」制度があることです。
社員の親睦も目的としているので2人以上で活動する必要がありますが、活動に参加する社員1人につき上限2000円/月まで会社が補助してくれるそうです。
「スキル向上のためにラズパイで何かやってみよう」という活動のためにラズパイを購入したとか、音楽好きの社員が集まって音楽を演奏する活動のために音楽キーボードを購入したという事例があります。KESが社員を個人として大切にしているのが分かりますね。
自転車、バスケ、音楽、ダーツ、卓球など、同じ趣味を持つ社員同士のクラブ活動も盛んです。
社外との連携
KESは社外との連携にも力を入れています。
前述のように、組み込み技術者をターゲットとした「組み込みエンジニアフォーラム(E2F)」や、IoT技術に関する交流会「IoTあるじゃん(ALGYAN)」の金沢支部に会社として参加して、会を盛り上げています。
大学との連携では、金沢工業大学(KIT)が実施する「KITハッカソン」にも参加しています。
石川県で働こう
北陸新幹線が開通して金沢の知名度が上がっていますが、それは観光地としてです。
都心と比べれば、石川県は田舎です。しかし、ITエンジニアの仕事が全くないわけではありません。今回は組み込み開発者が働ける場所として「KES」を紹介しましたが、組み込み開発に限らず、アプリ開発に携わっているエンジニアも大勢いらっしゃいます。
金沢は技術交流会が頻繁に開催されており、ITエンジニア同士のつながりが広げやすい好環境です。UIターンをお考えのエンジニアの皆さん、ぜひ移住先の候補に加えてください。
「U&Iターンの理想と現実:石川編」、次回は金沢のエンジニアの勉強会や交流会事情を紹介いたします。
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筆者プロフィール
「インフラ勉強会」発起人メンバー。プログラマー&ライター。
2004年にTera TermをOSS化。
著書計13冊を上梓。
エンジニアライフ「生涯現役のITエンジニアを目指して」執筆中
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