「案件ガチャ」はなぜ起きる:スライムしか出ないダンジョンを周回していませんか(2/5 ページ)
IT業界解説シリーズ、第5弾は三次請け以降で働くエンジニアが知っておきたい「案件ガチャ」の発生メカニズムと攻略法を徹底解説します。
良いガチャを引くために必要な条件その1「スキルシート」
1ページ目で「確率が高いガチャを引くには、スキルよりも重要な2つの条件が存在する」と書きました。その1つが「スキルシート」です。
ユーザー直の案件を獲得するには「選ばれるスキルシート」が必須です。SIer経由案件に存在する良い案件を獲得する確率も、スキルシートの出来によって大きく変わります。
では、「選ばれるスキルシート」とはどのようなものでしょうか。
「非エンジニアの壁」を超えるスキルシート
選ばれるスキルシートとは、「非エンジニアの人が見てもNGにならないスキルシート」です。
スキルシートは通常、エンジニア→自社の営業→(エンドユーザー or SIerの)窓口→(エンドユーザー or SIerの)開発責任者、という流れで審査、フィルタリングされます。
多くの場合、「自社の営業」と「ユーザー企業の窓口」は「非エンジニア」です。
彼らは、「ユーザー企業の開発責任者が要求したスキル」がスキルシートに書かれているかどうかだけを、長くて3分、短くて数秒くらいでパパッとザッピングして、採用の可否を判断します。
すると、こんなことが起こります。
開発責任者のオーダーには「Amazon EC2」と書かれていた
エンジニアのスキルシートには「AWS」と書かれていた
自社の営業やユーザー企業の窓口の人がAmazon EC2がAWS(Amazon Web Services)のサービスの一種であることを知らなかった場合、そのスキルシートは不採用となる可能性があります。実際、多くのスキルシートが非エンジニアの壁を超えられずに開発責任者の目に届いていないのです。
非エンジニアの壁を超えるために
非エンジニアの壁を超えるためにスキルシートに「書かれるべきこと」と「書かれていると良いこと」を列挙します。
書かれるべきこと
- SQL、HTML、CSSなどの「エンジニアからすると当たり前過ぎるような言語」
- HTML、CSSなどの「マークアップ言語」
- SQLなどの「問い合わせ言語」
- ストアドプロシージャのような「データベース系」
- 古い言語から新しい言語にリプレースした際、「古い言語」は何だったのか
基本的な言語の他に、フレームワーク、担当フェーズ、役割などもしっかり記入しましょう。
また、AWSと大枠だけではなく、Amazon EC2、AWS Lambda、Amazon Lightsailのどれなのか、細かく分解して書きましょう
書かれていると良いこと
- プログラミング言語ではないからと書き漏らしがちな「アプリ/サブシステム」
ex. Crystal Reports、DataSpider、Systemwalkerなど
これらは教育コストがかかるツールであるため、アピール材料になります。熟練度が高ければここをフックにスキルチェンジを狙うこともできます。
その他にバージョン、案件の概要、経験が少ない人は案件の量、開発以外にやっていたことなどをしっかり記入しましょう。
ぜひ少しでも多くの情報をスキルシートに追加してください。追加すればするほど非エンジニアの壁を超える確率が上がります。
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