35歳からのキャリア――中堅世代こそ「Will、Can、Must」を考えよう:仕事が「つまんない」ままでいいの?(90)(3/4 ページ)
あなたが中堅世代なら、将来のキャリアに不安になることがありませんか? そんなときは、Will、Can、Mustで整理すると、これからの方向性が見えてくるかもしれません。
40代になるとキャリアを自分で形成する必要が出てくる
さて、問題はここからです。
30代のころは会社からやるべきことが指示されますが、40歳前後になると、指示されることが少なくなり、やるべきことを自分で考えることが求められるようになってきます。
このとき、「いままでの経験を生かして、今後は○○をしていきたいな」のように、やりたいことがあればいいのですが、それがないと、会社のやるべきこととできることの重なりが小さくなっていき、「言われたこと(やるべきこと)はやっているけれど、このままでいいのかな?」と、何となく不安を抱くようになります。
ベン図はこんな感じ。できることはあるけれど、やるべきこと、求められることが少なくなっていく感じです。
しかも、近年は「人生100年時代」や「45歳定年制」などといわれ、いままでより長く働かなければいけないっぽい。でも、定年まで働けるのかも分からない。なのに、会社人生の先が何となく見えてくるし、役職定年をする先輩が身近にいたりすると、ますますやるべきこととの重なりが減っていく感じがして、さらに不安になってしまいます。
こんなときは、どうにかして、Will、Can、Mustの重なりを増やしていきたいですよね。
年代に合わせて、Will、Can、Mustをマネジメントする
年代別に、Will、Can、Mustがどのように変化していくかを、私の個人的な経験もふまえてお話ししてきました。
働く環境にもよりますが、35歳前後まで多くの人は会社からやるべきことが与えられます。やるべきことに対して、できることを増やしていけば評価されるし、成長も実感できます。そして周囲からの「ありがとう」という声に、「この仕事は楽しいな」と感じて、やりたいことが見えてきます。
一方で、やりたいことが見えてこなかったり、40代以降のように、会社のやるべきことが減ってきたりすると、Will、Can、Mustがなかなか重なりません。その結果、不安になります。
ここで、2つの提案をします。
1 あらためて「できること」を言語化しよう
若いころは、「○○ができるようになった」のように、できることが増えていくことを容易に実感できます。また、若いころに必要なのは、「ITのスキル」や「生産管理のスキル」「会計のスキル」などのように、第三者にも分かりやすい表現しやすい「スキル」です。
一方、経験を重ねてきて仕事がマネジメント……つまり、人を支援する領域に入ってくると、「スキル」が成長するような仕事が減り、「チームをまとめる」「折衝する」「成長を支援する」といった「人となり」が大切な仕事が増えてきます。これらの仕事は、「私はこれができます」「私はこれが得意です」といった言語表現が難しい……。
その結果、「管理職をやっていました」「課長をやっていました」「部長をやっていました」のように、これまでの経験を「肩書で」説明してしまうケースがあります。しかし、肩書では「何ができるのか」が明確ではありません。
だからといって、組織を円滑に回すためには、マネジメントだって大切な仕事ですし、信頼感という意味で「人となり」だって大切です。この「分かりにくいけれど、大切な業務」を言語化するためには、普段から「自分は何を大切にしていて」「どんな経験を積み(ときには挫折も味わい)」「どんな行動をしてきたのか」を認識し、第三者にも分かりやすく説明できるといいですよね。
そこで、年代に関わらず「私は何が得意で、何ができるのか」(つまり、Can)を、日ごろから意識的に言語化しておくといいでしょう。そうすれば「自分は何者か」という自己認識にも役立ちますし、「何ができるか」を第三者にちゃんと説明できれば、自己アピールにもなります。社内外に関わらず、次のキャリアにつながる可能性が出てきます。
ちなみに私は、良いことも悪いことも含めて「これまでやってきたこと」「気付きや発見」などを年齢別にまとめて、ポートフォリオを整理しています。経験を言語化することによって、「何ができるか」を明示できますし、ポートフォリオを整理するたびに「育っている感じ」を実感できます。また、以前仕事をご依頼いただいた方に、「経歴や考え方がまとまっていたので、どんな方なのかよく分かりました」と言われました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
東京でそこそこだったエンジニアが、地元で輝きを取り戻した日
地方のIT企業の仕事は公共の受託開発がメイン。いつまで続けられるか分からない。そんな不安にかられた筆者がとった行動は?――「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実 徳島編」。最終回のテーマは、地方での仕事の作り方です反省しても後悔しない! 35歳からの仕事と生き方
35歳は人生の中盤。仕事のキャリアやこれからの生き方に悩む時期です。仕事の不満や悩みを解消するヒントをお届けする本連載。今回のテーマは「35歳からの仕事と生き方」です予測不可能なVUCA時代に「将来のキャリアが描けず不安」と悩んだら?
会社に入ってある程度の経験を積むと、「将来のキャリアが描けず、不安」と悩む人が少なくありません。そんな、未来が心配なあなたへの処方箋「管理職」をネガティブに捉えるのがもったいない理由――古川陽介氏、和田卓人氏、松本亮介氏らが語るスペシャリストまでの歩み
キャリアの問題が「エンジニア35歳定年説」として議論されて久しい。では、ITの最前線で活躍するエンジニアはキャリアをどう考えているのか。2021年1月下旬にForkwellが主催した「Engineer Career Study #1」でITの最前線で活躍する古川陽介氏、和田卓人氏、松本亮介氏らが語った