Windows Server 2022のもう1つのエディション、「Essentials」ってどうなの?:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(236)
本連載で過去に何を書いたかを振り返っていたところ、ちょうど4年前に『Windows Server 2019 Essentialsってどうなの?』(第129回)という記事を書いていました。今回は、Windows Server 2022 Essentialsはどうなのかという話にしましょう。
Essentialsは小規模向けのサーバライセンス(インストールメディアもなし)
ボリュームライセンスプログラムやMicrosoftリセラーを通じて購入できる「Windows Server 2022」のライセンスとしては、「Windows Server 2022 Datacenter」と「Windows Server 2022 Standard」があるのは皆さんご存じの通りです。
「Microsoft Azure」や「Azure Stack」(Azure Stack HCIなど)を利用している、または、したことがあるなら、これらのプラットフォーム上でのみ実行できる「Windows Server 2022 Datacenter:Azure Edition」というエディションが存在することもご存じでしょう(画面1)。
- Windows Server 2022 Datacenter
- Windows Server 2022 Standard
- Windows Server 2022 Datacenter:Azure Edition
DatacenterとStandardの最も大きな違いは、Datacenterの方には「無制限の仮想化の権利」があり、「仮想マシン自動ライセンス認証(AVMA)」を利用できることです。Azure Editionは、Windows Server 2022 Datacenterの全ての機能に加え、Azure Editionだけの「Azure拡張ネットワーク」「SMB over QUIC」「記憶域レプリカの圧縮」「ホットパッチ(Server Coreは正式サポート、Desktop Experienceはプレビュー)」をサポートしています。エディション間の詳細な機能差については、以下のドキュメントで確認できます。
そして、Windows Server 2022にはもう1つのエディション「Windows Server 2022 Essentials」が存在します。
Windows Server 2022 Essentialsとは?
本連載の第129回で説明した「Windows Server 2019 Essentials」と同じく、Windows Server 2022 Essentialsは「コアライセンス」モデルであるDatacenterやStandardとは異なり、コア数に関係なく「1台のサーバにライセンスされるサーバライセンス」として提供され、25ユーザー、50デバイスまでの小規模企業での利用を想定しています。サーバにアクセスするために、ユーザーやデバイスごとの「Windows Serverクライアントアクセスライセンス(CAL)」を購入する必要もありません。
本連載第129回でも指摘しましたが、「Windows Server 2016」以前まで提供されていた「Windows Server Essentialsエクスペリエンス」の機能は「Windows Server 2019」で廃止されたため、「サーバーの役割」や機能としてはWindows Server Standardと全く変わりません。単に、小規模環境向けの低コストなライセンスオプションを提供するだけなのです。
実は、Windows Server 2019 EssentialsとWindows Server 2022 Essentialsには大きな違いがあります。Windows Server 2019 Essentialsは、ボリュームライセンスやMicrosoftリセラーを通じて購入できる製品でしたが、Windows Server 2022 EssentialsはOEMベンダーのプリインストールOSとしてのみ購入できる形に変更されました。
また、Windows Server 2019 Essentialsには製品のインストールメディアが存在しますが、Windows Server 2022 Essentialsについてはインストールメディアが用意されておらず、Windows Server 2022 Standardをインストールして、Windows Server 2022 Essentialsのプロダクトキーを使用してライセンス認証するという方法に変更されました。
つまり、Windows Server 2022 Essentialsのバージョン情報を確認しても(「winver.exe」など)、おそらくそこには「Windows Server 2022 Standard」と表示されるはずです(画面2)。実物を見たわけではないので確信はありませんが……。
画面2 Windows Server 2019 Essentialsには専用のインストールメディアが用意されたが(画面左)、Windows Server 2022 Essentialsはソフトウェア的にはStandardと全く同じ(画面右、筆者の想像)
以下のドキュメントを見る限り、Microsoftとしてはこのエディションを積極的に売るつもりはないらしく、「Microsoft 365」サービスの方を推しているようです。Microsoft 365のようなクラウド接続型IT基盤の最初(1台目)のサーバとして、あるいは完全にサーバレスで利用することを勧めています。
- Windows Server Essentialsの概要(Microsoft Learn
2022 Essentialsの提供方法はIoT 2019以降と同じ?
Windows Serverベースのネットワーク接続型ストレージ(NAS)など、固定目的デバイスのためのサーバOSは現在「Windows Server IoT」です(特にNASに限ると、「Windows Server IoT for Storage」と呼ぶこともあります)。
Windows Server 2016以前は、「Windows Storage Server」という製品名を持つ、専用OSでしたが、Windows Server 2019以降はOEMベンダーからのみプリインストールOSとして購入できるWindows Server IoTになりました。
実は、Windows Server IoT 2019やWindows Server IoT 2022は、Windows Server 2022 Essentialsと同じようにソフトウェア的にはWindows Server 2019 StandardやWindows Server 2022 Standardと同等です。プロダクトキーでのみ、エディション(IoT StandardかIoT Workgroup)がライセンスされる形になっています。バージョン情報に「Standard」と表示されることは、アイ・オー・データ機器のQ&Aでも示されています。
- Windows Server IoT 2019の概要
- Windows Server IoT 2022の概要
- Windows Server IoT 2019 for Storageにおけるエディションの確認方法について(アイ・オー・データ機器 サポート&サービス > Q&A)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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