“非推奨機能リスト”に入っても使い続けたいWindows 10/11の機能:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(245)
2022年以降、MicrosoftはWindows 10/11の機能を次々に非推奨機能リストに追加しています。その流れは2024年も続くのでしょうか。非推奨の機能リストに入れられたとしても、その全ての機能がすぐに利用不可になるわけではありませんが、実際に利用できなくなった機能も幾つかあります。
非推奨の機能リスト入り、そのさまざまな理由
Microsoftは、Windowsの非推奨の機能をリスト化(以下、非推奨機能リスト)して、以下のWebページで公開しています。
- Windowsクライアントの非推奨の機能(Microsoft Learn)
“非推奨機能リスト”は、2021年までは「Windows 10」や「Windows 11」のメジャーバージョンがリリースされるタイミングで更新されることが多かったのですが、2022年以降、特に2023年になったからは毎月のように更新されています(画面1)。
2022年から2023年にかけて、実に19個の機能が新たに非推奨機能リストに追加されました。その半数以上の機能は、Windows 10以降で実装されたものであることも見逃せません。
なお、非推奨の機能のリストはWindows Serverにも存在し、そちらで非推奨とされている、Windowsクライアントと共通の機能(WinRM.vbsなど)もあることに注意してください。
- Windows Server 2016 で削除された機能または非推奨とされた機能(Microsoft Learn)
- Windows Server 2019以降で削除された機能または開発されなくなった機能(Microsoft Learn)
- Windows Server 2022以降で削除された機能または開発されなくなった機能(Microsoft Learn)
非推奨機能リスト入りする理由はさまざまあると思います。例えば、開発方針の変更(「Cortana」は「Copilot in Windows」へ、レガシーな「Microsoft Edge」はChromiumベースのMicrosoft Edgeへ)や、利用者が少ないこと(「Windows Mixed Reality」や「Wordpad」など)、意図しない機能不全によるサポート終了(「ソフトウェアの制限のポリシー」など)、古くて安全ではないプロトコルやサービスの排除(「TLS《Transport Layer Security》1.0/1.1」「Computer Browser」「リモートメールスロット」など)です。
非推奨機能リスト入りしても、その機能がすぐに利用できなくなるわけではありませんが、以下の記事で取り上げた「ソフトウェアの制限のポリシー」のように、利用できなくなってからリスト入りしたものもあります。
上記の記事では、「Windows Information Protection」(旧称、Enterprise Data Protection)がWindows 10 Proをサポートするために行われた変更の影響で、「ソフトウェアの制限のポリシー」が期待通りに機能しなくなってしまったと考察しました。そのWindows Information Protectionもまた、2022年7月に非推奨機能リストに追加されたわけですから、皮肉なものです。
また、以下の記事で紹介したように、トラブルシューティングツールの入れ替えについても粛々と進められているようです。
- Windowsに標準搭載されていた、あのトラブルシューティングツールは今どこに?(本連載 第242回)
2021年1月に一般提供された「Microsoft Defender Application Guard for Office」については、認知度がそれほど高くないだろう思って記事にしたのに、その翌月(2021年2月)には非推奨機能リストに入れられてしまいました。なお、この機能は非推奨入りしましたが、まだ利用できるはずです。
- Microsoft Edgeだけじゃない、インターネットの脅威からOfficeアプリも保護する「Microsoft Defender Application Guard」の実力(連載:検証! Microsoft&Windowsセキュリティ 第5回)
“非推奨”になっても手放せない機能もある! VBScriptとシステムイメージバックアップ
「VBScript(Visual Basic Scripting Edition)」が2023年10月に非推奨機能リスト入りしたのは衝撃でした。筆者はこれまで膨大なVBScriptベースのスクリプト(.vbs)を書いて、作業を効率化してきたからです。よく使うものから「Windows PowerShell」のスクリプトへ書き換えていますが、開始時に時間がかかるPowerShellはあまり好きではありません。
しかし、VBScriptのサポートが完全になくなることは「しばらくはないだろう」と勝手に思っています。なぜなら「slmgr.vbs」など、Windowsのライセンス管理に使用するシステムコンポーネントで利用されているからです(画面2)。「winrm.vbs」は「Windows Server 2016」の非推奨機能リストにありますが、「slmgr.vbs」はどのリストにもまだありません。
「システムイメージバックアップ(SIB)ソリューション」は、コントロールパネルでは「バックアップと復元(Windows 7)」にある、Windowsのシステム/ファイルのバックアップと復元機能です。これまで、「システムイメージの作成/イメージでシステムを回復」や「ベアメタルバックアップ/ベアメタル回復」「Complete PC バックアップ/Complete PC復元」とも呼ばれていた、「Windows Vista」から存在する機能です。コントロールパネルの名前に「(Windows 7)」が付いていることに違和感を持つユーザーも多いと思いますが、非推奨機能リストに追加されている以上、「(Windows 7)」が消えることはないでしょう。
SIBは、Windows 10の早い段階(バージョン1709)で非推奨機能リスト入りしましたが、筆者は物理デバイスについて数カ月に一度、USB外付けHDDにシステムイメージを作成し、万が一に備えています。過去に数回、ベアメタルリカバリーや、誤って削除してしまったデータの復元(「WindowsImaeBackup」ディレクトリ内のVHDXファイルをローカルマウントしてファイルをコピー)に役に立っています(画面3、画面4)。
SIBはWindows Serverの「Windows Serverバックアップ」と同じバックアップ/復元技術に基づいており、Windows 10/11ユーザーにも利用者が多いのではないでしょうか。Microsoftは「Microsoft OneDrive」を使用したバックアップを強く勧めてきますが、OneDriveのバックアップはベアメタル回復に利用できません(インストール時に設定を回復/移行することは可能)。筆者は、VBScriptとSIBの2つについては、完全に削除されるまでは使い続けたいと思っています。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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