「ITエンジニア争奪戦」はむしろ激化、AIがあっても“技術者不足”が深まる理由:どのIT人材が足りないのか(2/2 ページ)
生成AIやAIエージェントで開発・運用の自動化が進む一方、IT人材不足は解消していません。企業の間での争奪戦は激化しているともいえる状況です。AIがあってもなぜITエンジニアは足りないのでしょうか。
日本では「採用より育成優先」が加速
「採用より育成」という傾向は、日本市場でより顕著に表れています。Linux Foundation Japanが公開した「2026年 日本の技術系人材の現状レポート」では、日本企業の技術系人材の純雇用増加率は2026年に54%、2027年に35%と、世界平均(2026年26%、2027年18%)を大幅に上回る予測となっています。
ただし、雇用を増やせば課題が解決するわけではありません。
日本企業でAI/機械学習の専任人材を配置している企業は13%にとどまり、世界平均の53%を大きく下回りました。
能力面でも、日本企業の多くが「AIの運用・監視に関する能力不足」(52%)、「AIのセキュリティおよびリスク管理に関する能力不足」(49%)を課題として挙げています。また、29%の企業は「インフラ関連スキルの不足」をAI活用における最大の障壁に挙げました。
外部からの即戦力採用より育成(アップスキリング)を選ぶのはなぜか
Linux Foundationの世界調査では、不足する人材を確保する手段として「既存スタッフのスキルアップ」を挙げた企業は57%で、「新規技術スタッフの採用」の49%を上回りました。
日本ではこの傾向がさらに強く、必要なスキルを確保する際、外部から経験者を採用するより既存社員を育成する方を選ぶ傾向には9倍以上の開きがありました。
その背景には、採用してから戦力化するまでの時間と定着の問題があります。新たな技術スタッフを採用して育成する場合、既存社員をアップスキリングする場合と比べて必要な時間が約81%長く、新規採用者の46%は6カ月以内に離職しているといいます。
既存社員を育成する利点として、調査では人材の定着、生産性向上までの期間短縮、仕事の質の向上、事業や業務への理解の深さが挙げられています。人材市場から必要なスキルを持つ人を探すだけでなく、自社の業務を知る社員に新たな技術を身に付けてもらうことも、人材不足への重要な対応策になっているのです。
AI時代に問われる「人材の奪い合い」から「育成・定着」へのシフト
生成AIやAIエージェントによって、ITエンジニアの仕事の一部が自動化されても、IT人材の需要がそのまま減るとは限りません。ITRの調査が示すように、DXや生成AI活用、セキュリティ強化といった取り組みが広がるほど、それを支える高度な専門人材への需要はむしろ高まります。Linux Foundationの調査からも、世界的にはAIが技術職全体の雇用創出を後押ししていることが分かります。
その一方で、AIを安全に本番運用するための体制づくりや、能力不足への対応は、世界でも日本でも共通する課題です。特に日本では、専任人材の配置率が世界平均を大きく下回る水準にとどまっており、AI活用を本格化させる上での足かせになりかねません。
AI活用の拡大によって必要な仕事やスキルが変化する中、企業には不足する高度人材を単に奪い合うだけでなく、既存人材をどう育成し、必要なスキルを確保していくかが問われています。
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