内部動作を知らずしてチューニングは語れない真・Dr. K's SQL Serverチューニング研修(3)(1/3 ページ)

パラメータの設定値で、あなたの実力まで分かってしまいます。3種類のラッチ動作を学び、自信の持てる設定を解説します(編集部)

» 2010年07月26日 00時00分 公開
[熊澤幸生株式会社 CSK Winテクノロジ]

潜んでいる問題にどうアプローチするか

 私がお客様のSQL Server環境を見せてもらうとき、何をしているのかをよく聞かれます。ほとんどの場合、事前にデータベース環境と領域利用状況、インデックス定義などを取得するスクリプトをお客様に渡し、データを取得します。

 お客様が最も監視してほしい時間帯を2時間ほど設定していただき(通常は本稼働環境の最もトランザクション負荷の高い時間帯)、パフォーマンス測定ツール(Quest SoftwareのSpotlight on SQL Server)、動的管理ビュー(DMV/DMF)を用いてデータを取得し、2週間程度の時間をかけて解析の作業に入ります。今回は、その動的管理ビューのデータの「どこをみているのか?」を解説しましょう。

やはり重要、RDBエンジンの内部動作

図1 SQL Serverの内部構造 図1 SQL Serverの内部構造(クリックで拡大します)

 図1は、SQL Server 2008 R2の内部構造をブロックで表したものです。前回までにお話しした2つのチューニングステップのうち、第1フェイズのクエリーチューニングは、この図のクエリープロセッサ(リレーショナルエンジン)部分に対するチューニングです。第2フェイズのプラットフォームチューニングはストレージエンジン部分に対するものです。このストレージエンジンの挙動を知ることが、チューニングを体系的に理解する第1歩です。

 リレーショナルエンジンはCATチームの専門家、ドクター・ルバー・コラー(Dr. Lubor Kollar)氏が最も得意とする分野です。ここにはパーサがあり、オプティマイザがあり、コンパイル結果をプロシージャキャッシュに保存し、クエリー・エグゼキュータがコンパイル後の、複数ステップで構成される実行プランを基に実行するわけです。

 SQLOSが管理するプロシージャキャッシュに保存された実行プランは、再利用可能なものとアドホックなものに分けられます。再利用可能な実行プランは、オプティマイザやパーサ、コンパイラを通さず、すぐに実行が可能です。つまり、「再実行が可能」なプランに落とし込めるようなアプリケーションの作り方が重要になります。皆さまには当たり前のことかもしれませんが、これをもう一度認識しておきましょう。

 第2ステップであるプラットフォームチューニングのポイントは、ストレージエンジンのコンポーネントをきちんと理解することです。例えばトランザクションサービスは、トランザクションのACIDプロパティの保証や、同時に実行しているユーザ間のアイソレーション(分離レベル)をコントロールします。また、ロックマネージャはロックとラッチと呼ばれる2つの排他制御をつかさどっています。ロックはトランザクション完了まで継続的に保持されるもの、ラッチはストレージエンジン内部処理で使われる、リカバリ処理をしないものです。この2つを理解することは、チューニング作業を行う上で大変重要です。

 ロックについては、アプリケーションのアーキテクチャに起因するものですので、ダーティリードをどこまで許すか、SQL Server 2005からの機能であるリードコミッテッドスナップショットアイソレーション(RCSI)を利用するなど、アプリケーション側の対策で回避できます。

 今回はストレージエンジンの内部動作に起因する、SQL Serverの「ラッチ」をチェックしていきましょう。

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