11gからは、ログの管理機構に大幅な変更が加わり、Automatic Diagnostic Repository(以下、ADR)で管理されるようになりました。今回は、ADR、ADRに格納されている診断データ、および診断データを参照するためのユーティリティであるADRCIの使用方法について解説を行います。
データベースインスタンスおよびASMインスタンスのアラート・ログ、およびトレースファイルは、各インスタンスに設定されている
・background_dump_dest
・user_dump_dest
で指定されたディレクトリに出力されていました。
リスナー・ログは、listener.ora内で指定されるパラメータ
・LOG_DIRECTORY_<LISTENER_NAME>
(デフォルトでは、ORACLE_HOME/network/logが指定される)
で指定されたディレクトリに出力されていました。
11g以降では、これらの、コンポーネントごとに出力先が異なっていたログをADRで一括格納/管理できるようになりました。これによって、ログの管理が容易になっただけでなく、出力先と動作が変更されたことで、障害発生時の診断情報の収集を敏速かつ正確に行えるようになりました。
補足
いままでの初期化パラメータの「BACKGROUND_DUMP_DEST」と「USER_DUMP_DEST」は11gでは廃止されています(設定してもエラーにはなりませんが、無視されます)。
まずはADRのディレクトリ構造を理解しておきましょう。デフォルトでは以下の環境変数を基に導出されます。
ADRのルートとなるディレクトリです。初期化パラメータ「DIAGNOSTIC_DEST」で指定します。 デフォルトでは以下のように設定されています。
・ORACLE_BASEが設定されている場合
DIAGNOSTIC_DEST = ORACLE_BASE
・ORACLE_BASEが設定されていない場合
DIAGNOSTIC_DEST = ORACLE_HOME/log
ADR_BASE以下には「diag」というディレクトリが存在し、その配下にすべての情報が入っています。
ADR_BASEの下に置かれます。トレースファイル、アラート・ログを保存するディレクトリです。インスタンス用の保存場所がそれぞれ<製品_id>と<instance_id>で識別されます。
上記ディレクトリは、「V$DIAG_INFOビュー」で確認できます。
SQL> select * from v$diag_info; INST_ID NAME VALUE ---------- ------------------------------ -------------------------------------------------- 1 Diag Enabled TRUE 1 ADR Base c:\11.0 1 ADR Home c:\11.0\diag\rdbms\110\110 1 Diag Trace c:\11.0\diag\rdbms\110\110\trace 1 Diag Alert c:\11.0\diag\rdbms\110\110\alert 1 Diag Incident c:\11.0\diag\rdbms\110\110\incident 1 Diag Cdump c:\11.0\diag\rdbms\110\110\cdump 1 Health Monitor c:\11.0\diag\rdbms\110\110\hm 1 Default Trace File c:\11.0\diag\rdbms\110\110\trace\110_ora_3260.trc 1 Active Problem Count 3 1 Active Incident Count 199
具体的なADRの中身は以下のような構造になっています。
以下はデータベースインスタンスのADRのディレクトリの各診断データの階層に格納されるファイルです。
XML形式のアラート・ログです。11gよりXML形式のアラート・ログが出力されるようになりました。このXML形式のアラート・ログは、ADRCIユーティリティを使用してテキスト形式(XMLタグは削除されます)で表示できます。
coreファイルが出力されるディレクトリです。
複数のサブディレクトリがあり、各サブディレクトリには特定のインシデントの名前が付けられ、そのインシデントのみに関するダンプが含まれます(インシデントに関しては、後述)。
バックグラウンドプロセスとサーバプロセスのトレースファイル、およびSQL トレースファイルが出力されるディレクトリです。従来のテキストタイプのアラート・ログはここに出力されます。
ADRホームのそのほかのサブディレクトリには、インシデントパッケージ、状態モニタレポートなどの情報が格納されます。
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