「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)
無料で学べるオンラインコンテンツが数多く観られるようになってきました。従来は語学や、ビジネス系のものが目立っていましたが、最近では、質の高いIT系のオンライン学習のための教材がそろってきました。オンラインでの学習の利点はいくつか考えられます。
一方で、一緒に学ぶ同級生の存在が感じられにくい、サボる理由がいくらでもあり、モチベーションが続きにくいといった難点もあります。
また、音声だけの講座はなかなか難しいので、動画があるものを選ぶのも楽しみながら受講するポイントでしょう。プレゼンテーション資料などがあればまだしも、音声だけのものは日本語でも情報量が少ないため、理解が難しくなると思われます。
アップルが音楽やアプリを提供するサービス「iTunes」上に開設したオンライン上の学校が「iTunes U」です。最近、iTunes U専用のiOSアプリが登場し、ますます使いやすくなりました。
iTunes Uでは、大学や学校の講師が作成した資料や講座を観て無料で学習できます。さらにiPhone/iPad/iPod touchユーザーは、iBooksアプリで資料を読みながら取ったメモを、iTunes Uアプリで一覧表示し復習できます。
iTunes Uの講座は多岐にわたり、代数学から動物学など50万以上の無料の講義が用意されています。海外だと、スタンフォード、エール、MIT、オックスフォード、カリフォルニア大学バークレー校、MoMA、ニューヨーク公共図書館、アメリカ議会図書館などです。
日本の大学も東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス、明治大学北海道大学、中央大学、京都大学、関西大学(順不同)がiTunes U上に講座を開設しています。
その中から特に注目のIT系の講座を紹介しましょう。
スタンフォード大学のiPhoneアプリ開発講座です。オンライン講座の中では老舗の部類に入ります。質・量ともに充実しており、年々内容が更新されつつ洗練されています。
アップル社内の技術者や業界第一線で活躍するプログラマがゲスト講師として講演するなど、実学に基づいた大変質の高い講座です。この講座の内容を一通りクリアすると、アプリをリリースできるようなるまでの内容です。クリエイティブ・コモンズライセンスで公開されています。
イエール大学のゲーム理論講座です。学術的アプローチから、ゲーム理論と戦略的思考に関しての定石などを解説しています。政治経済や映画などの事例からの紹介もあり飽きさせません。
オープンユニバーシティのコースU101「デザイン思考」の紹介コンテンツです。iTunes Uにある素材自身はごくごく短いもので、本講座の紹介的なものとなっています。
カリフォルニア大学のiPhone講座です。開発ツールの使い方やObjective-C言語、MVC(Model/View/Controller)の解説、各種センサやAPIの使い方まで、多岐に渡った充実した講座内容です。
グランドバレー州立大学のモバイル機器に関する講座です。モバイル系の基本技術や市場リサーチに基づく内容などがあります。初回は、iPadの開封から始まり、後半はAndroidアプリの開発に関してです。
ETSU(東テネシー州立大学)のPHPとMySQLを使ったサーバサイドアプリの開発講座です。ETSUからは、ほかにもモバイル系など、多くの講座が提供されています。
慶應大学湘南藤沢キャンパスの講座です。インターネットの仕組みを詳しく解説しています。学生のみならず、新人教育の教材などにも役立つでしょう。
iTunes Uのほかにも、オンラインのIT系学習サイトが数多くあります。ユーザー層を考えて英語のものが多いのは否めませんが、英語の勉強を兼ねてプログラムを学べるので、一石二鳥かもしれません。
現在開設準備中のスタンフォードのHuman Computer InteractionやSaaS、自然言語処理、暗号理論、アルゴリズム、コンピュータビジョンのオンライン講座も注目されています。世界各国で優秀な人材を育てることに、さまざまな工夫がなされているようです。
プログラミングの自学自習のためのWebサイトです。米国政府が若者の就業促進のために作ったサイトです。すべて無料です。成績優秀な受講者は登録企業にインターンとして参加する道もあるそうです。
対話型のレッスン形式で受講できるとともに、講座の内容自身を自分で構築することもできる環境が用意されています。扱っているのは主にJavaScriptやRuby、Pythonです。
プログラミング環境そのものもWebブラウザ上で完結するLabs版を使えばプログラミング言語環境のインストールも必要ありません。また、バッジなども用意されていて、いま注目のゲーミフィケーションを取り入れています。
オンラインでプログラミングを学び、指導を受けられるWebサイトです。安価ですが有料(月額課金)です。
さらにプログラミングをゲームとして楽しむサービス「Code Racer」というサービスも運営されています。Code Racerはプログラミング、コーディングを学ぶ人同士がレーサーとなって競争することで学びを促進するゲーミフィケーションされたWebサービスです。
jQueryとJavaScriptに特化したオンライン学習サイトです。1つの講座が30分から40分程度のものを積み重ねて学習していきます。
CoffeeScriptなど最新技術が学べるWebサイトです。無料でいくつか利用できますが、講座ごとに有料課金があり、月額課金もあります。Ruby on RailsやjQuery関連の講座が充実しています。
前出のCodecademyのサービスの1つです。毎週1通のプログラミング問題が届きます。TwitterやFacebookでの口コミとうまく連動したサービスです。
一般的な初等教育を英語で学べるWebサイトです。短時間で観られる小粒で簡単なものが多く、算数を英語で学ぶことなどができます。歴史や美術、金融など、興味が広がる分野もあると思います。
自身が書いたソースコードと、お手本のソースコードが一致しているか、比較しながら学び進める無料のWebサービスです。Node.jsなどを利用した具体的なサービス作りなどJavaScript系が充実しています。
主に、画像編集ソフトPhotoshopや、エクセル、3次元CGソフトなど、ソフトウェアやツールの使い方を解説したWebサイトです。自学自習するのに適しています。解説本を読むよりも、画面で操作を見た方が圧倒的に分かりやすいです。
主に映像系の編集ソフト、InDesignやIllustratorといったクリエータ向けツールの使い方を解説したWebサイトです。プロフェッショナル向けの内容で、スキルアップしたい人向けです。
ここまで紹介したのは主に米国、英国の英語によるサービスですが、日本でもオンラインで学習できるサービスが登場してきました。3分の動画でプログラミングを学ぶというコンセプトの無料の学習サービスです。
IT技術者向けの資格試験を中心としたさまざまな問題を土日祝日を除く毎日、1問ずつ出題するサービスです。問題は、WebとRSS両方で利用できます。最近は、PHPやRuby/Rails系も増えて充実してきているうえに、TOEICやビジネス基礎講座などもあります。
iTunes Uも専用のiOSアプリの登場で受講を継続しやすく、使いやすくなりましたが、iTunes U以外のIT系学習講座のおすすめアプリを、いくつか紹介しましょう。
著名な講演者によるTEDの講演の視聴専用アプリです。ほとんどの講演がボランティアによる字幕付きで視聴できます。1つ1つの動画の時間が20分弱でコンパクトで見やすい点もポイントです。
主にユーザーインターフェイス、ユーザーエクスペリエンスに関する講演をまとめて視聴できるアプリです。「UX Week」「MX Conference」といったイベントの講演内容を、講演者ごとに視聴できます。
Web上で学習ができるコンテンツをいくつか紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。専門のWebサイトではなくても、勉強会や講演のUSTREMのアーカイブや、YouTubeで公開された学習講座やハウツー動画など、参考になる情報は豊富にあります。
また、学びを享受するだけではなく、自分が学んだ内容を誰かに教えたり、学んだ内容をまとめておくのもいいでしょう。まとめることによって、考えが整理されたり、あいまいな部分をはっきりさせることができるでしょう。「iBooks Author」で教科書などの教育コンテンツを制作し、iTunes Storeで公開することも可能です。
学びのポイントは「継続は力なり」でしょう。この言葉は筆者の高校の校訓であり、その当時は何とも感じていませんでしたが、いまになってひしひしと実感する言葉です。
学びを継続するには、お互いに切磋琢磨し合う仲間も重要ですし、教えを請うことのできるメンターの存在も重要です。最近のオンラインの学習サービスは、TwitterやFacebookなどソーシャルの要素を取り入れているものも多いので、良い仲間、良い師を見つけ、少しずつの時間からでも質の高い教材に親しんでみてはいかがでしょうか。
次回記事は、2012年5月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部や@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
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OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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