テキストファイルに対する入出力は極めて簡単なものです。しかし、複数のユーザーが同時にアクセスする可能性があるWebアプリケーションにおける活用においては、重大な落とし穴があることも知っておくべきでしょう。
つまり、ファイルに対する同時書き込みの制御です。データベースであれば、トランザクションや排他ロックなどのしくみがデータベースサーバ自体にあらかじめ備わっていますが、単なるテキストファイルとなると、そのような状況はまったく考慮されていません。そのため、もしも複数のユーザが同時に同一のファイルを開き、書き込み処理を行おうとすれば、思わぬ不整合が生じる可能性があるというわけです。
そこで、テキストファイルの処理に際しては、必ず同時書き込みを防止するロックのしくみを「アプリケーション側」で組み込む必要があります。synchronizedキーワードや、サーブレットではjavax.servlet.SingleThreadModelインターフェイス、J2SE 1.4以降ではjava.nio.FileLockなどの専用のクラスも用意されていますが、これらによって提供されるロックはあくまでアドバイザリロックと呼ばれる「紳士協定」的なロックであるにすぎません。アドバイザリロックにおいては、あくまでプロセス自身がロックを行ないますので、他プロセスによる処理についてはロックは無効です。
そこで、ここではJ2SEのバージョンにも依存せず、ある程度汎用的に適用可能なロックのしくみをご紹介することにしましょう。
ここでご紹介するのは、専用のロックファイルを生成することで同時書き込みを制御しようという試みです。書き込み時にロックファイルが生成され、そのロックファイルが存在する間はほかのコードは書き込み処理を行なうことはできません。元のプロセスは書き込み終了後にロックファイルを削除します。
<%@ page contentType="text/html;charset=Shift_JIS"
import="java.io.*,java.util.*" %>
<%
boolean flag=true;
int intRetry=5;
File objFle=new File(application.getRealPath("lock.tmp"));
while(!objFle.createNewFile()){
if(intRetry--<0){
flag=false;
break;
}else{
if(objFle.lastModified() < Calendar.getInstance().getTime().getTime()-(1000*60*10)){objFle.delete();}
}
Thread.sleep(1000);
}
if(flag){
// 目的のファイルをオープン、処理を実行
objFle.delete();
}else{
out.println("Access is Denied. Other user is processing...");
}
%>
whileループは、File#createNewFileメソッドがtrueを返す(新規ファイルの作成が成功する)か、リトライ回数(intRetry)の制限を越えるまで、1秒間隔でロックファイルlock.tmpの作成を試みます。ただし、以前の書き込みプロセスが途中で失敗している可能性も考慮する必要があります。その場合に不要なロックファイルがいつまでも残ってしまっていると、以降のプロセスでは永遠に書き込み処理を行なうことができませんので、ロックファイルの最終更新日時が現在時刻の10分以上前であった場合にはロックファイルを強制的に削除します。
whileループから制御が抜けたときにフラグ変数flagがtrueであった場合には、正常にロックファイルを作成できたことを意味しますので、実際のファイル操作に移ります。処理の終了後、ロックファイルは削除します。もしもフラグがfalseであった場合には、ほかのプロセスが書き込み中ですので、その旨をエラー表示し、処理を終了します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.