本連載「ユカイ、ツーカイ、開発環境」では、Javaが利用できるクラウドコンピューティングのPaaS環境について、いくつか紹介してきました。最近では、レッドハットの「OpenShift」とヴイエムウェアの「Cloud Foundry」などのPaaSクラウドのβサービスが提供され始め、また、いままで紹介した各クラウドの事情も変わってきました。
本稿では、Javaで利用できる以下の8つのPaaSクラウドの最新動向をお届けします。
連載第5回の「App Engine/AptanaなどJavaクラウド4つを徹底比較」では、Stax、Morph AppSpace、Aptana Cloud、Google App Engineについて紹介しました。Stax、Morph AppSpace、Aptana Cloudについては、サービスの見直しや企業の買収などにより大きな動きがありました。まずは、これらの最新の動きを紹介します。
以前は、Pythonのみをサポートしていましたが、Javaをサポートしたことによって、さらに普及したグーグルの提供するPaaS環境「Google App Engine」(以下、GAE)。その後も以下のようなさまざまな機能拡張を続け、最近は3番目のサポート言語として、グーグルが開発した「Go」の追加を発表しています。
GAEのJava版については、下記連載も参考になると思います。
Google App Engineで手軽に試すJavaクラウド
Javaに対応したことでユーザー数が一気に増加する可能性がある無料でお手軽なクラウド環境Google App Engineの超入門連載です。概要・特徴から環境設定、アプリケーションの作成、業務用として応用できるところまで徹底解説していきます
「Stax」を提供していたStax社は、Jenkinsの開発を支持する企業して有名なCloudBees社に買収され、サービスを「RUN@cloud」としてリニューアルしました。
また、Jenkinsを利用したCI(継続的インテグレーション)サーバを中核に据えた開発環境を提供する「DEV@cloud」と一緒に利用すれば、開発から運用までこなせます。RUN@Cloud、DEV@Cloudは2つの別々のクラウドの用に思えますが、図1のようなWebのGUIでは、2つのクラウドを意識することなくサービスを受けられるようになっています。
RUN@cloud上では4500以上のアプリケーションがすでに動作しているようです。現在はTomcatのみのサポートですが、将来的にはJBossもサポートすると表明しています。
DEV@cloud、RUN@cloudの特徴は次の通りです。
■リポジトリの提供
Git/Subversionを利用したリポジトリを作成できます。また、ビルドしたモジュールを管理するMavenリポジトリも作成できます。リポジトリは誰でもアクセスできる「パブリックモード」と、リポジトリのアクセスを限定する「プライベートモード」の設定ができます。
■CI機能の提供
「Jenkins as a Service」といわれており、Jenkinsを利用したCI機能を利用できます。ボタン1つでJenkinsのサーバを起動できます(ただし、筆者が利用を試すと、エラーメッセージが表示され起動できませんでした)。上記のリポジトリから取得したコードのビルドとテスト、アプリケーションのデプロイなどが可能です。
■アプリケーションの作成
Javaアプリケーションを作成できます。Webコンソールからアプリケーションを作成すると、サンプルアプリケーションが作成され、自動的に起動されたTomcat上で動作します。仮想マシンやアプリケーションサーバをセットアップする必要はありません。
■データベースの提供
Webコンソールから簡単にMySQLサーバを起動できます。MySQLにアクセスするための、web.xmlの設定情報やサンプルコードもWebコンソールから確認できるので、簡単にアプリケーションからデータベースを利用できます。データベースのスナップショットも簡単に取得できます。
■スケールアウト、高信頼性
ロードバランサによりアプリケーションの負荷に応じ自動的に負荷分散できます。
■Eclipseプラグインを提供
Eclipse上からJenkinsのモニタリングや管理ができるプラグイン「CloudBees Toolkit for Eclispe」を提供しています。Eclipse上でJenkinsによるビルド・テストの結果を参照できます。
Morphlabs社は、「AppSpace」として、Java/Groovyに主軸を置いたPaaSを提供していました。最近は、日本法人(株式会社モーフ・ラボ)を設立し、日本での営業を強化するとともに、AppSpaceは「mCloud」とブランド名を変え、サービス内容も変更しています。
特に、プライベートクラウド向けのmCloudシリーズの提供にフォーカスを当てており、簡単にPaaS型プライベートクラウドを構築できる「mCloud DCU」という新製品の展開を、この秋から日本でも開始するようです。初期バージョンの対応言語は、以前からあるJava/Groovy(Jetty、JBoss環境)に、PHP、Ruby on Railsが加わっています。
パブリッククラウド関連では、mCloudシリーズのIaaS部分の検証利用環境という位置付けで、「mCloud On-Demand」の提供を始めました。mCloud On-Demandは、CentOSとWindowsのVMをAmazon EC2(以下、EC2)上に簡単に構築できます。mCloud On-Demand自体は無料ですが、利用にはEC2のアカウント登録が必要であり、VMを利用するとEC2の課金という形で課金が発生します。
今後、mCloud On-Demandはプライベートクラウド上で培ったノウハウを生かし新機能を拡充する予定で、有償版として独自性を持ったPaaSを含めたサービスに徐々に拡張される予定です。
次ページでは、記事「App Engine/AptanaなどJavaクラウド4つを徹底比較」公開以降に新たに提供され始めたJavaを使えるPaaSクラウドを紹介します。
開発ツールベンダであるAptanaが提供していたAptana Cloudは、残念ながら2010年10月31日にサービスを終了しました(参考:Aptana Cloud is Dead. (via @brandoncorbin))。その後、Aptana自身はHTML・JavaScriptのネイティブ・アプリケーション開発環境「Titanium」を提供するAppcelerator社に買収されました(参考:TitaniumとAptanaが買収により統合へ)。
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