Samba 3.0の全貌
開発者自ら語る次世代Samba

Samba 2.2系とは別に、Samba 3.0の開発が進められている。次世代のSambaとはどのようなものになるのか。日本人として初めてSamba Teamに迎えられた たかはしもとのぶ氏に、Samba 3.0の魅力や使い方を語ってもらった。

たかはしもとのぶ <monyo@home.monyo.com>
2002/3/26


編注:この記事はSamba 3.0 alpha当時のものであり、正式リリースされたSamba 3.0.xとは異なる点が少なくありません。そこで、Samba 3.0.x正式リリース版を基に2004年5月時点の最新事情を踏まえた

Samba 3.0の全貌 改訂版


を用意しました。こちらをご覧ください。

 Sambaの開発元であるSamba Teamは、Jeremy Allison氏を中心に安定版であるSamba 2.2系列をリリースする一方で、オリジナルのSambaの開発者でもあるAndrew Tridgell氏を中心に次期メジャーリリース「Samba 3.0」の開発を続けています。

 2002年3月現在、Samba 3.0はalpha0からalpha17までの開発者向けリリースを行い、徐々にではありますが、その全貌が明らかになってきました。そこで、Samba 3.0がどのようなものになるのかを紹介していきたいと思います。

Samba 3.0の新機能と変更点

 まずは、Samba 3.0で追加、変更される(予定)の主な機能をリストアップしてみました。各機能の詳細については、後で設定方法とともに紹介します。

  • 日本語関連パラメータの変更
     実装が大幅に変更され、文字コード変換にiconv()を利用するようになりました。これに伴なって、パラメータにもかなりの変更が発生しています。

  • SWAT国際化版の同梱
     Samba日本語版の成果が同梱されます。

  • Active Directory参加機能の追加
     Kerberos認証のサポートにより、Windows 2000と同様にActive Directoryへの参加が可能になります。

  • グローバルグループ機能の追加
     任意のグローバルグループが作成可能になります。

  • 通信路上でのUnicodeサポート
     ネットワーク上の通信がWindows NT/2000と同じUnicodeで行われるようになります。

  • WINS複製機能のサポート
     WINSの複製機能がサポートされます。

 なお、これ以外にも細かい改良や機能追加などが行われています。詳細については、リリースノート(http://www.samba.org/ftp/unpacked/samba/WHATSNEW.txt)を参照してください。

Samba 3.0の入手とインストール

 それでは、実際にSamba 3.0を入手してコンパイルしてみましょう。現時点でSamba 3.0を入手するには、以下の方法があります。

  • CVSから入手する
     Samba TeamのCVSリポジトリから直接入手可能です。 この方法だと随時更新されている最新のソースを入手できますが、CVSの設定が必要です。

      CVSから入手する場合は、cvsをインストールしたうえで、以下のようにcvsコマンドを実行してください。

    % cvs -d :pserver:cvs@pserver.samba.org:/cvsroot login
    (Logging in to cvs@pserver.samba.org)
    CVS password: ←cvs と入力
    % cvs -z5 -d :pserver:cvs@pserver.samba.org:/cvsroot co samba
    CVSから入手する方法

     詳細は、Samba TeamのWebページ(http://www.jp.samba.org/samba/cvs.html)を参照してください。なお、CVSについては市販の書籍やWebページなどを参考にしてください。

  • CVSのスナップショットから入手する
     日本Sambaユーザ会(Samba-JP)では、cvsが利用できない人の便宜を図るため、毎日cvsから最新のソースを取得して、FTPやHTTPでダウンロードできるようにしています。

    ftp://www.samba.gr.jp/pub/samba-jp/cvs/snapshot/
    http://www.samba.gr.jp/pub/samba-jp/cvs/snapshot/

    より、samba-head.snapshot-yyyymmdd.tar.gzもしくは samba-head.snapshot-yyyymmdd.tar.bz2()というファイルを入手してください。ちょっと試してみたいという方にはこの方法がお勧めです。

    注:yyyymmddの部分は日付を表す数字が入ります。

  • Samba Teamがリリースしているアルファ版を入手する
     Samba Teamでは、alpha0からalpha17までのアルファ版リリースを行っています。直接CVSから入手したり、スナップショットから入手したりする場合、入手したタイミングによってはコンパイルできないなどの不具合が発生する場合もありますが、alpha版では少なくともコンパイルできないといったことはないはずです。とはいえ、アーカイブの形でリリースされているからといって特に安定しているということもないので、当面はCVSかCVSのスナップショット版の利用をお勧めします。

configureとmake

 機能に関係するconfigureオプションのうち、実際に利用される可能性があるものを表1に示します。現在のところ、Samba 2.2系列と比較して、configureオプション自体にはあまり目立った変更はありません。機能を細分化してオプションとして切り出す代わりに、極力デフォルトの機能として取り込んでいく方針のように思います。

--with-smbwrapper smbmountに代わるsmbsh機能を有効にする
--with-automount automountをサポートする。詳細はsmb.conf(5)を参照
--with-smbmount Linuxカーネルのsmbfs機能をサポートするコマンドを作成する
--with-pam PAM認証機構をサポートする
--with-pam_smbpass ほかのアプリケーションから利用可能なPAMモジュールを構築する
--with-syslog syslogへの出力機能をサポートする
--with-profiling-data 性能に関する情報を収集する
--with-quotas QUOTA機能をサポートする
--with-utmp utmpによるユーザーのアクセス記録の収集をサポートする
--with-manpages-langs インストールするマニュアルページを選択する
--with-acl-support ACL機能をサポートする
--with-winbind Winbind(編注)を構築する
表1 主なconfigureオプション

 今回は汎用的な機能強化につながると思われるものを可能な限り有効にする方針で、最終的に以下のようなオプションでコンパイルしたバイナリを用いて検証を行いました。なお、検証は主にLinuxマシンとSolaris 8上で行っています。

./configure --with-smbwrapper (--with-smbmount) --with-automount --with-pam --with-syslog --with-quotas --with-profiling-data --with-utmp --with-acl-support --with-winbind
--with-pam_smbpassを有効にすると今回検証したソースではコンパイルに失敗してしまうため、オプションからは外しています。また--with-smbmountはLinuxマシンでのみ有効にしています

 特にインストール先の指定は行っていないため、make installを行うと、/usr/local以下に関連するファイルがインストールされます。

編注:Windows NTとLinux(UNIX)の統合アカウントマネージャ。Windows NTドメインユーザーとUNIXユーザーの統一ログイン(ログオン)を可能にする。詳しくは、
http://www.samba.gr.jp/project/translation/2.2.2/projdoc/winbind.html
を参照。

 
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Index
Samba 3.0の全貌
− 開発者自ら語る次世代Samba −
Page 1
Samba 3.0の新機能と変更点
Samba 3.0の入手とインストール
 configureとmake
  Page 2
新機能の詳細と設定
 日本語関連パラメータの変更
 SWATの国際化
 Active Directoryへの参加
 グローバルグループのサポート
 通信路上でのUnicodeサポート
 WINS複製機能のサポート
ぜひ開発に協力を

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