連載:IEEE無線規格を整理する(3)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜
ZigbeeとBluetooth、UWBをめぐる動き
千葉大学大学院 阪田史郎
2005/10/12
3. Bluetooth |
3.1 Bluetoothの開発経緯
Bluetoothは、1990年代前半にEricssonで研究が進められた、10mの距離で1Mbpsの通信速度を実現する無線通信技術である。図7に示すような10m以内での、人と機器、機器と機器間でのさまざまな通信が想定されている。
図7 Bluetoothの利用イメージ |
1998年にEricsson、 Nokia、 Motorola、 Intel、 東芝の5社が業界団体のBluetooth SIG(Special Interest Group)を結成し、当初はこのSIGを中心に仕様の開発、標準化が進められた。2005年9月現在は、マイクロソフト、Agere、IBMを加えた8社のプロモータで運営され、3000社以上が参加している。Bluetooth SIGは認定制度を設け、認定された機器にBluetoothロゴが与えられる。1999年にバージョン1.0が公開された後、物理層とMAC層については、IEEE 802.15.1に移して標準化が進められ、バージョン1.0の問題点を盛り込んだバージョン1.1が2002年にIEEE 802.15.1で採択された。
2003年に承認されたバージョン1.2では、バージョン1.1に無線チャネルの干渉を防ぐ技術、リアルタイム伝送時に用いられるSCO(Synchronous Connection Oriented)リンクでの再送手順、初回接続時のコネクションの短縮機能などを追加している。さらに、従来の通信速度(最大721kbps)の約3〜4倍となる2Mbps、3Mbpsの通信が可能なバージョン2.0+EDR(Enhanced Data Rate)を、Bluetooth SIGが2004年に承認している。
3.2 Bluetoothの標準仕様概要
2005年現在実用化されているBluetoothはバージョン1.1または1.2で、表4に主要な仕様を示す。
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表4 Bluetooth 1.1/1.2主要諸元 |
(1)ネットワーク構成
Bluetoothは、中央のハブと1対1のリンクによって接続されたノードの集合から成る、スター型のトポロジを基本とする。ハブとなるノードをマスタと呼び、末端となるノードをスレーブと呼ぶ。1つのマスタに対して7つまでのスレーブを同時に接続することができる。1つのマスタと7つまでのスレーブで構成されるネットワークをピコネット(piconet)と呼ぶ。通信はマスタとスレーブ間のみで行われ、スレーブとスレーブ間で直接通信を行うことはできない。
ピコネットを形成する際には、近隣ノードの探索、発見されたノードの呼び出し、コネクションの確立の順に動作が行われる。始めに1対1でこれらの動作が行われ、以降マスタが次々にこれらの動作を行うことによって、複数のスレーブが参加するピコネットが形成される。9以上のノードに拡張する場合は、8つまでのピコネットがつながった、すなわち64ノードまでのネットワークを形成することができる。このピコネットが複数接続されたネットワークを、スキャタネット(scatternet)と呼ぶ。スキャタネットを構成する場合、各スレーブは時分割で複数のピコネットに属することになる。
図8にBluetoothのネットワーク構成を示す。
図8 Bluetoothのネットワーク構成 |
(2)プロトコル体系
Bluetoothは、携帯電話やPDA等のモバイル端末とその周辺機器間とを接続するための規格として検討され、多種多様な機器間の接続にかかわる物理的、論理的な仕様を規定したコアシステム仕様と、その上位における情報のやりとりを規定するプロファイル仕様から構成される。
Bluetoothプロファイルは、Bluetooth通信に対応した情報機器固有の通信機器の種類や特性ごとに標準化したものである。プロファイルでは、アプリケーションへの実装方法の規格化のほか、異なるベンダの製品との互換性を保つための相互接続テストが規定されている。
3.3 Bluetoothをめぐる動向
Bluetoothは2000年には初期バージョンが製品化されたが、仕様が詳細なレベルまで規定されていなかったため製造ベンダ間で互換性が取れなかった、仕様に適合したキラーアプリケーションを見つけられなかった、PCのOS(Windows)に標準搭載されなかった、などの理由で2005年の段階でも当初期待したようには普及していない。 Bluetooth SIGは、2004年にバージョン2.0+EDR、通信速度の2Mbps、3Mbpsへの拡張に加え、接続ノード数の増加(最大256という数も検討されている)、消費電力の抑制によるセンサの収容等を計画している。Bluetoothとしては、UWBや無線LANのような高品質な動画の通信までを含めず、データと音声と簡易動画の通信に特化した無線PANを目指す方向である。 また2005年5月には、Bluetooth SIGはUWBと互換性を持たせることを発表した。2008年ころに、BluetoothとUWBの両方のインターフェイスを備えた音響機器、映像機器、各種周辺機器の製品を市場に投入することを計画している。どのような形で互換性を持たせるかについては、利用周波数やUWBの標準化など多くの課題が残されている。 |
以上で、身近な生活で活用される無線PANについてご理解いただけただろうか。次回は、無線LANについて解説する。
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次回もご期待ください
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