Interop Tokyo 2009レポート(後編)

DNSクエリを見ればIPv6の浸透度が分かる?


高橋 睦美
@IT編集部
2009/7/14


10GbE、その先を目指すベンダ

 仮想化技術などの普及により、サーバやストレージが高い密度でデータセンターに集約されるようになってきた。それらを繋ぐネットワークにも、ボトルネックにならないよういっそうの高速化が求められている。展示会では、そうしたニーズに合わせた10Gbps製品、さらにその次に控える40Gbpsや100Gbps対応の製品・サービスが紹介された。

日立電線が参考出展した、40GbE対応スイッチ「Apresia13000-X40XL-PSR」

 日立電線は直前に発表したボックス型のスイッチ「Apresia13100-x24-PSR」のデモンストレーションを行った。「1Gのコストで、10Gを」をコンセプトに開発された1Uサイズのスイッチで、10GbEインターフェイスとしてSFP+を24ポート搭載する。同社ではこのスイッチを核に、10GbE対応のブレードサーバやストレージを接続。さらに同じく10GbEをサポートしたUTMやアプリケーション配信高速化アプライアンスを組み合わせ、相互接続のデモンストレーションを実施した。

 同社ブースでは、10GbEの次をにらんだ40GbE対応スイッチ「Apresia13000-X40XL-PSR」と、40GbE用光トランシーバ「XL2」も参考出展した。トランシーバも含めて自社開発を行い、設計に工夫を凝らすことにより、1Uサイズのきょう体に40GbEポートを2個、10GbEポートを40個搭載することを狙っているという。40GbEの標準規格の動向をにらみつつ、1〜2年後を目標に市場に投入することを狙っている。

NTTコミュニケーションズが紹介した、幕張メッセと都内データセンターを結ぶ100GbE回線

 一方ジュニパーネットワークスは、これも展示会直前に発表した、100Gbps対応の物理インタフェースカードを紹介した。2010年初めに承認予定の業界標準IEEE802.3baに準拠したもので、同社のハイエンドコアルータ「T1600」に搭載することでワイヤレートでの100Gbps通信を実現するという。

 NTTコミュニケーションズは、「40G/100Gイーサネット伝送サービス」のデモンストレーションを行った。幕張メッセと都内のデータセンターを100Gイーサネットで接続するというものだ。実サービス化は、802.3ba標準化と前後する2010年を予定しているという。

 NTTコミュニケーションズによると、トラフィックの圧迫に悩んでいるISPでは複数の10GbE回線を組み合わせてしのいでいるが、40G/100Gイーサネット伝送サービスでは、それらを1本にまとめて通すことができる。伝送距離の点でも、10〜20キロメートル程度はカバー可能となる見込みだ。もちろんATM/STMに比べ比較的安価に提供できることもメリットという。

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省エネ、OpenFlow、省スペース……さまざまなアプローチ

 アラクサラネットワークスは「省エネ」という観点に特化したネットワーク製品群を紹介した。バックボーンスイッチの「AX6600S/AX6700S」とフロアスイッチ「AX1240S」を組み合わせ、スケジュールに応じてスリープモードや省電力モードに切り替えることにより、消費電力を大きく抑えることができる。ポート単位で稼働を停止したり、夜間・休日に省電力モードを適用することで、キャンパスネットワークでは電力代を25〜30%カットできる計算になるという。

アラクサラネットワークでは「MOTTAINAI宣言」と題して省エネネットワークソリューションを展示

 ほかにもスイッチ製品の中には、使用していないポートを停止する機能を備えたものがあるが、アラクサラのスイッチでは、通信を継続しながらオンラインで省電力モードに切り替えられることが特徴だ。この際、QoS機能を組み合わせ、途切れさせてはならないトラフィックを優先的に処理することも可能で、従来のスタティックな省電力から一歩進んだ、ダイナミックな電力カットを行えるという。

 また、普段のトラフィック量を踏まえて「夜20時過ぎから省電力モード、土日は基本的にオフ」といった具合にあらかじめ組んでおいたスケジュールに沿って自動運転が可能なことも、大きな特徴だという。将来的には運用管理ソフトウェアと連動し、トラフィックの変動に応じて自動的に省電力モードへの切り替えを行える機能を追加することも検討しているという。

OpenFlow技術を活用したプログラマブルフロースイッチ。情報通信研究機構のブースと結んで、任意に経路を変えるデモンストレーションを行った

 一方NECは「OpenFlow」をベースにした「プログラマブルフロースイッチ」を参考展示。情報通信研究機構のブースとの間を接続し、OpenFlowによる経路制御のデモンストレーションも行った。

 OpenFlowは米スタンフォード大学らが開発を進めている技術だ。従来は1つの機器内で行っていたパケットスイッチと制御機能を分離し、「OpenFlow Controller」と呼ばれる制御サーバと、フロー単位でのパケット転送を行う「OpenFlow Switch」とで役割を分担する。トラフィックの制御を行う「頭」と、実際のパケットフォワーディングを行う「体」が分離したスイッチというイメージで、この2つの間は「OpenFlow Protocol」で通信を行う。

 この2つの機能を分離することで、制御サーバ側で自由にプロトコルやアプリケーションを開発し、柔軟に適用できることがメリットだ。また、通信フローごとにポリシーを適用するため、経路の選択や品質確保といったきめ細かな制御も可能になるという。早くて2009年度内の製品化を視野に入れているということだ。

 またアンリツネットワークスは、いわゆるデータセンターやサーバルームに限ることなく、オフィス内のさまざまな場所に設置可能なレイヤ2スイッチ「MaxFlow AS」を参考出展した。縦置きタイプの小型の筐体に、SFPを4ポート、1000BASE-Tを8ポート搭載しているほか、電源を二重化して信頼性を高めていることが特徴だ。同じく、置き場所の効率を考えて1Uサイズに収めた帯域制御装置「PureFlow GS1-GR」も参考出展した。

SaaS型セキュリティも登場

 ゼットスケーラーは、5月に発表したSaaS型のWebセキュリティサービスを披露した。このサービスではHTTP/HTTPSトラフィックを検査し、URLフィルタリングやフィッシングサイトへのアクセスのブロック、HTTPを介して侵入するウイルスやスパイウェアのブロックといったセキュリティ機能を提供する。また、Webメールやブログ、ストリーミングといったWeb 2.0系サービスの利用を制御することもできる。

 同社が構築したクラウド側で処理を行い、クリーンなトラフィックをユーザーに返す仕組みだ。Zscalerのクラウド全体が、ユーザーにとって大きなプロキシとして動作するイメージとなる。処理の状況などは管理インターフェイスを通じて把握できる。現時点では英語版のインターフェイスのみだが、年内には日本語化を行って提供する予定だ。料金は「1ユーザー当たりコーヒー1杯くらい」(同社)という。

 ネットエージェントは、SSLセッションの監視に特化した「Counter SSL Proxy」を紹介した。暗号化されたSSLセッションを復号化し、どんなデータがやり取りされたかを把握する製品だ。同社の「PacketBlackHole」と連動することにより、SSLセッションを保存し、必要に応じて後から検索・再現することもできる。

 Gmailや宅ふぁいる便といったSSLに対応したサービスは、その便利さゆえに、企業でもしばしば連絡やデータのやり取りに用いられている。しかし「SSLトラフィックの中にもコントロールしなければならないデータがある」(同社)。こうした製品を導入することにより、情報漏えいを抑止し、万一インシデントが発生した際の経路・内容の特定が可能になるという。

 IPSに特化したアプライアンスを開発、提供するティッピングポイントは、小規模拠点向けのIPSアプライアンス「TippingPoint 10 Intrusion Prevention System」を参考展示した。

 同社はこれまで、中〜大規模企業向けにTippingPointシリーズを提供してきたが、TippingPoint 10はスループットが20Mbpsと、コストパフォーマンスを重視したモデルだ。ただし、「ターゲットはSOHOや中小企業ではない。遠隔地に多数の拠点を持つ企業で、小規模拠点にも本社と同等のセキュリティを提供するためのもの」(同社)という。耐久性、耐障害性を重視し、ファンレス構造を採用したほか、壁掛け可能なきょう体とし、ラックなどを置けないオフィスでも場所を問わずに設置できるようにしたという。

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Index
DNSクエリを見ればIPv6の浸透度が分かる?
  Page1
現実のものに迫ってきたIPv6移行、検証は?
クエリは増えたIPv6、しかし……DNSホットトピック 2009
「DNSサーバの増強も視野に入れた検討を」とJPRS
Page2
10GbE、その先を目指すベンダ
省エネ、OpenFlow、省スペース……さまざまなアプローチ
SaaS型セキュリティも登場

「Master of IP Network総合インデックス」


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