竹中工務店は2024年7月30日、3種類の無線技術を用いて建設現場のデータ通信網を「完全無線化」したことを発表した。その目的、ネットワーク構成、他分野での企業ネットワークへの応用について述べる。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
筆者は「5Gオフィス」という5Gだけで構成する企業ネットワークを提案している。しかし、5Gオフィスは無線だけで構成できるわけではなく、高層ビルの内部には無線機や光ケーブル、アンテナなどで構成するDAS(Distributed Antenna System)と呼ばれる「有線ネットワーク」が不可欠だ。
しかし、竹中工務店(本社 大阪市、取締役社長 佐々木正人氏)の事例は「完全無線化」を実現したという。完全無線化という言葉に強い関心を持ったので、構築に携わった西日本機材センターの松原拡平氏に詳しい話を伺った。
図1は、ビル建設現場の通常のネットワークだ。完成したビルは通信インフラが整備されており、多数引き込まれている光ケーブルでイントラネットやインターネット接続ができる。ビル内にはDASが設置されて、モバイル通信がどこでも可能になっている。しかし、建設中のビルに通信インフラはない。
建設現場では現場管理アプリや施工ロボット、現場作業者間のコミュニケーションのためにデータ通信網が必須だ。
通常、光ケーブルは通信事業者の局から個別に引き込むが、日数がかかるし引き込めないケースもある。引き込んだ光ケーブルのONU(Optical Network Unit:回線終端装置)から建物までは有線LANを使うが、敷設の手間がかかるだけでなく、建機による工事などで断線するリスクがある。
建物内のネットワークは現場の環境に応じてWi-Fi、メッシュWi-Fi、電力線通信などが使われている。Wi-Fiを使う場合は図1のようにフロア間を接続する配線、各フロアのWi-Fiアクセスポイントを接続する配線とアクセスポイントの設置が必要だ。工事の進捗(しんちょく)に応じてケーブルの盛り替えもせねばならず、手間とコストがかかる。
これらの問題を解決することが「完全無線化」の目的だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.