【トレンド解説】コア・ルーティングに採用するそれぞれのテクノロジ
次世代ルータ開発に向けて進む業界再編(後編)
鈴木淳也(Junya Suzuki)
2004/7/16
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先週公開された前編「ギネス認定ルータの出現でコア・ルータ業界に異変」では、コア・ルータ業界のここ10年のほどのトレンドをさらっと追いかけてみた。コア・ルータ業界のトップとして、シスコ・システムズとジュニパー・ネットワークスの2社が君臨し、それ以外の中小企業が2社を追いかけ、つい昨年2003年には新たにプロケット・ネットワークスとカスピアン・ネットワークスというベンチャー企業2社がデビューしたところ、というものだ。だが記事の最後にも紹介したように、シスコによるプロケット買収が発表されたことで、あらためてこの業界で生き残ることの厳しさが証明された形だ。
今回は、生き残りをかけた各社の戦略を紹介し、今後のトレンドについて分析していくことにする。
■総合ネットワーク企業への道を歩むジュニパー
先日、ジュニパーが米ネットスクリーン・テクノロジーズの買収を発表したのは記憶に新しい。ネットスクリーンは、ファイアウォール・アプライアンスなどのゲートウェイ製品を主に取り扱うセキュリティ企業である。ジュニパーでは、ネットスクリーン買収で自社の製品ライン強化を行うのが狙いだ。
前回も紹介したように、ジュニパーが最も強みとするのがコア・ルータの分野である。コア・ルータの分野で通信キャリアからの評価を得たジュニパーは、エッジ・ルータ、そしていま企業ネットワークへの分野へと進出しようとしている。ネットスクリーンでは、ファイアウォールのほか、VPN、SSL-VPNなどの製品ラインも取りそろえている。ジュニパーの戦略は、これらすべての製品のIPv6対応を進めることで、キャリアのバックボーンだけでなく、企業ネットワークをもいち早くIPv6に対応させることにある。ジュニパーではルータ製品のIPv6完全対応を売り物にしているが、今回の発表で、難しいといわれていたファイアウォールなどのゲートウェイ製品のIPv6対応も実現した。もともとネットスクリーンはファイアウォールのIPv6対応に積極的なメーカーであり、ジュニパーの買収でそのベクトルが一致した形だ。IPv6対応ではやや後塵を拝するシスコへの対抗の意味から考えても、この戦略は順当だといえるだろう。
だがジュニパーが企業向け戦略を強化しつつあるのには、別の事情も考えられる。コア・ルータは価格こそ数千万〜数億円と高価だが、導入するユーザーはごく限られるため、ネットワーク市場全体の売り上げでいうと2〜3割に満たないという話もある。つまり、市場の多くが企業向けで占められるわけである。企業のゲートウェイ市場を攻めて、結果として通信キャリア向け市場でのシェアをシスコから奪う作戦も手だが、今後の発展を考えるならば、企業ネットワーク市場にも積極的に目を向けなければならない。企業がネットワーク機器を購入する場合、管理上の理由などから同一メーカーの製品でそろえる傾向がある。ジュニパーが企業向け市場で有利に戦いを進めるには、企業にとって必要な製品をすべて自前で賄える必要があるわけだ。そのため、今後ジュニパーがほかの企業向けネットワーク製品(スイッチ製品など)拡充のため、さらなる買収を狙う可能性もある。この分野でのライバルとしては、シスコのほか、ファウンドリー・ネットワークスやエクストリーム・ネットワークなどが挙げられる。
ジュニパーにとって、コア・ルータ事業とは同社のシンボル的な存在である。そこで培った技術や信頼をベースに、シスコが支配する企業向け市場を開拓していこうとしている。
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