実験
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ここまではソフトウェアRAIDとハードウェアRAIDとの間で、インストールと再構築の作業手順を比べるという、いわば使い勝手の評価のみ取り扱ってきた。最後にベンチマーク・テストにより、その性能を比較してみることにする。
ベンチマーク・テストには、UNIX用ディスクI/Oテストとしては比較的ポピュラーな、Bonnieというソフトウェアを用いた。比較項目としては、以下の3構成を選択した。
- Ultra100 TX2のIDE1にマスタ・ドライブとして接続した、1台のハードディスク(Seagate Barracuda ATA IV 40Gbytes)
- Ultra100 TX2のIDE1とIDE2に1台ずつ、ハードディスクをマスタ・ドライブとして接続した状態で、ソフトウェアRAIDにて構築したRAID 1ボリューム
- FastTrak TX2000のIDE1とIDE2に1台ずつハードディスクをマスタ・ドライブとして接続した状態で構築したハードウェアRAID 1ボリューム
この3構成についてベンチマーク・テストを行った結果を以下に示す。
ベンチマーク結果 |
ベンチマーク・プログラム「Bonnie」の出力した結果のうち、シーケンシャル読み出しとシーケンシャル書き込みの結果を示す。Bonnieは、1Gbytesのデータを、35Gbytesの/homeパーティションに対して読み書きする設定で実行した。 |
ベンチマーク・テストの結果、読み出しの性能はソフトウェアRAID、ハードウェアRAIDの間に差はなく、単体のハードディスクとほぼ同等であることが分かった。RAID 1構成では、2台のハードディスクから並列に読み出すことで読み出し性能をドライブ単体以上に上げられるとされるが、今回はその効果は見られなかった。
RAID 1は2台のハードディスクに同じデータを書き込まなければならないため、一般に書き込み性能はディスク単体の場合に比べて劣るとされる。実際、今回のテストにおいてもソフトウェアRAID、ハードウェアRAIDともに、ディスク単体の場合よりも性能の低下が見られた。意外だったのは、ソフトウェアRAIDの方がハードウェアRAIDに対して20%程度、書き込み性能に優れるという結果が出たことだ。ハードウェアRAIDはドライブ単体と比べると40%ほどの性能低下を引き起こしている。
今回は比較的低速なプロセッサ(Pentium II-233MHz)と、メモリ容量64Mbytesという貧弱な環境でベンチマーク・テストを行ったが、より高速なマシン環境では、ソフトウェアRAIDとハードウェアRAIDの性能差はさらに広がる可能性もある。あるいは書き込み時に安全な手法を用いている可能性もあるが、Promise Technology提供のデバイス・ドライバには、書き込みの性能において改善の余地があるかもしれない。
再構築の手間を考えるとハードウェアRAID
最後に、LinuxのソフトウェアRAIDドライバと、FastTrak TX2000を用いたハードウェアRAIDの長所、短所を比較してみよう。追加コストが少ないなど利点はソフトウェアRAIDの方が多いように見えるが、今回用いた方式は両方とも、ハードディスクのホットスワップはできないので、障害時にはいずれにしてもPCを一度停止しなければならない点を考慮に入れる必要がある。
ソフトウェアRAIDの場合、再構築に要する時間は35Gbytesのパーティションで40分ほどだが、再構築中でもファイルシステムにはアクセス可能だ。しかし、マルチユーザー環境でfdiskなどのシステム・コマンドを実行することが妥当かというと疑問がある。再構築そのものはともかく、その前段階の作業は一般ユーザーのアクセスを遮断した状態で行うべきだろう。結局ダウンタイムは、パーティションを切り分ける作業の分だけ余計に長くなる。
ハードウェアRAIDの再構築に要する時間は、交換に要する時間を含めても、40Gbytesのハードディスクで1時間強といったところだ。ダウンタイムは正味これだけの時間ということになる。
そのため、OS稼働中に再構築できるかどうかは実はそれほど重要な要素ではない。再構築時の手間を考えて、Red Hat Linux 7.2とIDEディスクを用いた低価格RAIDの構築には、ハードウェアRAIDを用いた方式を推奨したい。
ただ、現状のFastTrak TX2000のデバイス・ドライバでは、Red Hat Linux 7.2付属のLinuxカーネルのアップグレードが難しい。コンパイル済みのドライバ・モジュールにはカーネルのバージョン情報が含まれており、カーネル2.4.7向けにコンパイルされたFastTrak TX2000のドライバを、それ以上のバージョンのカーネルに組み込むことは難しいためだ。実際、Red Hat Linux 7.2のカーネルを、最新バージョンの2.4.9-31に自動アップグレード(rpm -Uvh)しようとすると、Linux起動時にFastTrak TX2000のドライバ・モジュールを組み込むためのinitrdイメージの作成に失敗する。このようにカーネルをアップグレードできないのは、セキュリティの点で望ましくない(セキュリティ・ホールを塞ぐためには、ときたまカーネルのアップグレードが必要になるため)。そのため、構築したファイル・サーバをインターネット側に公開しないという条件付きとしたい。ソフトウェアRAIDの場合、ドライバはカーネルに組み込まれているため、この問題は生じない。
[ソフトウェアRAID] | |
○
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OS稼働中に再構築するため、障害時のダウンタイムが短い |
○
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導入コストが低い |
○
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ハードウェアRAIDより書き込み性能に優れる |
×
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再構築にはパーティション単位で再生を必要とするため、パーティション構成が複雑な場合、作業工程が多くなる |
[FastTrak TX2000によるハードウェアRAID] | |
○
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再構築の手順がシンプルで分かりやすい |
×
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再構築中はOSを使用できない。 |
×
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Red Hat Linux 7.2のカーネルを、初期状態の2.4.7以上のバージョンにアップグレードすることが現状は難しい |
「PC Insiderの実験」 |
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