実験
中古PC活用講座パート2【RAID構築編】 ―― ソフトウェアRAIDかハードウェアRAIDか―― 澤谷琢磨 |
「実験:中古PC活用講座」では、Windows PCとしてはすでに実用性を失ったPentium II搭載PCを再利用し、ファイル・サーバ(NAS)に利用するアプローチを提案した。プロセッサがPentium II程度でも、ハードディスクさえ高速ならば、クライアントPCの数が少ないSOHOや企業内の部署といった環境ではファイル・サーバとして十分に利用可能である。しかし、記録したデータの安全性という点では一抹の不安が残る。先の実験で構築したファイル・サーバでは、データ領域の物理的な保護についてはまったく考慮していなかったからだ。
そこで、構築したファイル・サーバをさらにバージョンアップすべく、RAIDシステムを導入してデータ記録領域を冗長化することで安全性を高めることにした。IDEハードディスクが十分安価になってきているため、2台のハードディスクを用いてRAID 1を構築しても、データの安全性を考えれば十分に許容できるコストになってきている。また、「特集:IDE RAID実践導入術【低価格IDE RAIDカード編】」で紹介したように、IDE RAIDカードも多くのベンダから販売されており、しかも低価格で導入可能だ。なおRAIDとは何かについては、「特集:RAIDの基礎知識」を参照していただきたい。
さらにLinuxには、カーネル2.4から組み込みのソフトウェアRAIDドライバ(md)が用意されている。mdを用いることで、RAID 0/1/4/5までをハードウェアRAIDコントローラなしで構築できる。RAID 1とRAID 5ならば、カーネル本体をRAIDディスクにインストールすることも可能だ。また、Linuxでは同時に、ハードウェアRAIDコントローラのサポートも拡充され始めている。これまでLinuxでは、各コントローラに対応するデバイス・ドライバの入手が困難であることが欠点として挙げられてきたが、最近では一部のRAIDコントローラ向けのドライバ・モジュールはすでにカーネルの配布パッケージに含まれるようになってきている。さらに最新のIDE RAIDコントローラ製品の中には、ベンダが独自にLinux用ドライバ・モジュールを開発し、提供しているものも少なくない。例えば、「特集:IDE RAID実践導入術【低価格IDE RAIDカード編】」で用いたPromise Technology製IDE RAIDカード「FastTrak TX2000」にも、製造元のPromise Technologyからデバイス・ドライバが提供されている。
製品名 | RAIDレベル | 製造元(ドライバ提供元) | 対応ディストリビューション |
■マイクロコントローラなし(低価格) | |||
FastTrak TX2000 | 0/1/0+1 | Promise Technology | Red Hat/Caldera/SuSE/Turbo |
RocketRAID 404 | 0/1/0+1 | HighPoint Technologies | Red Hat/Caldera/SuSE/Turbo |
■マイクロコントローラあり(高機能) | |||
Escalade 7000シリーズ | 0/1/0+1/5 | 3ware | Red Hat/SuSE (オープンソース・ドライバも提供) |
SuperTrak SX6000 | 0/1/0+1/3/5 | Promise Technology | Red Hat/Caldera/SuSE/Turbo (オープンソース・ドライバも提供) |
Linux向けデバイス・ドライバが提供されている代表的なIDE RAIDカード | |||
HighPoint Technologiesからは、Rocket RAID 404に用いているのと同じHPT374コントローラ用に、カードの製造元を問わない汎用ドライバも提供されている。ただし、こちらは現時点ではRed Hatのみに対応する。また、カーネル2.4にはFastTrakシリーズおよび、HPT370搭載のIDE RAIDカードをサポートするデバイス・ドライバが含まれているが、バージョン2.4.18の時点でこれらのドライバはExperimental(動作確認がまだ十分ではない「実験」レベル)扱いとなっている。 |
ここではLinuxにおけるソフトウェアRAIDとIDE RAIDカードを用いたハードウェアRAIDの2つの構築法を紹介する。導入のしやすさ、障害時の復旧の手間、そして読み出し/書き込みの性能という観点から両者の評価を行いたい。
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