日本のRFID業界をけん引する人々(1)

実業に根ざして使う人の視点を重視する
日立製作所


柏木 恵子
2006年7月19日

 セル型生産方式にRFIDが有効な手段になり得る

――日立の具体的な例で教えてください

中島 大みか事業所の事例は非常に分かりやすいのではないかと思います。大みかでは制御装置を作っていますが、多品種少量で、一品生産に近いものです。大きく分けると3つの場面でRFIDを使っています。部品の受け入れ、部品の在庫管理、生産工程の3種類です。

事業部紹介:大みか事業所概要
http://www.hitachi.co.jp/Div/omika/jigyou/1index.html

 まず、部品の受け入れの場面ですが、これは歴史的にも初期の段階に導入しました。この部分での課題は、RFIDを導入したことによって仕事の流れが変わってしまうことが、現場にとって導入障壁になるという点です。

 いかに導入障壁を減らしながらRFIDを導入するかという工夫が必要でした。具体的には、A5サイズくらいのRFIDの入ったリライタブルシートに、それまで使っていた伝票と同じ情報を書き込んで荷札タグとし、機械で正確に読みやすくするというところからスタートしました。

 2番目は、荷札タグによる在庫管理です。この結果、部品棚のどの場所に何の部品があるかが正確に把握できるようになりました。さらに、製造するものが変わっても、部品のピッキング順序を移動距離が最短になるように計画できます。なぜならば、その部品が確実にそこにあるということが保証されているからです。

 さらに、部品の有効期限管理も併せて行うことができます。部品の先入れ先出しが徹底でき、有効期限を過ぎた物がいつまでも棚に残っていたり、誤ってそれを組み込んでしまったりといったトラブルもなくなります。ピッキングしたものが正しいかどうかという正確さが保証されているため、それ以下の工程でチェックする手間や出戻り個数を低減できます。

 3番目として生産の場面ですが、組み立ては基本的に人間がやります。1つのものを少量作るので、極端にいえば毎回組み立てるものが違う。セル型屋台生産方式で、部品棚からピックアップしてきた部品を1つの製品に組み上げるわけですが、すべての製品の作業手順を覚えることはできません。

セル型屋台生産方式

 これまでは紙の作業指示票を渡されて、その指示書どおりの部品があるかチェックし、その手順に従って進ちょくをチェックしながら組み立てるという方法でした。この作業指示票もRFIDタグが付いています。セルのトレーにこのRFIDタグ付き作業指示票を置くと、モニタに作業手順が表示される仕組みになっています。

 部品が正しくそろっていることは、ピッキングの段階でRFIDタグの荷札により保証されていますので、そのまますぐに組み立て作業が始められます。さらに、進ちょく状況は作業消し込み画面によってリアルタイムにモニタリングできます。作業が正しいかどうかを、指示票と照らし合わせてチェックする必要もありません。

 組み立て標準時間とどの程度乖離しているか、そもそもその標準時間の設定は適切なのかどうかといったことの分析も簡単にできます。大みか事業所では20%のリードタイム削減と効率向上が実現しました。しかしこれも日々進化していまして、分析結果を基にさらに改善を進めています。

 RFIDタグの事例として有名なのはウォルマートの事例なので、物流での利用が大きく取り上げられます。しかし、日本はもの作りの国ですから、メーカーでの利用も大いに推進したい。米国ではシュリンケージ(納入業者による盗難や単純なミスによる商品ロスト)がなくなれば、すごい原価削減効果が出るでしょうが、日本では事情が違うので投資効果が出ません。小売りや流通だけでなく製造においてもRFIDを使うという視点で進めていくことが重要でしょう。

4/5

Index
実業に根ざして使う人の視点を重視する日立製作所
  Page1
チップからSIまでワンストップで提供する日立
  Page2
ユーザー企業の価値向上のためシステム全体として考える
  Page3
RFIDによって情報の精度・密度・鮮度が上がる
Page4
セル型生産方式にRFIDが有効な手段になり得る
  Page5
トレーサビリティが築く新しいマネジメント技術へ

RFID+ICフォーラム トップページ

 RFID+ICフォーラム 日本のRFID業界をけん引する人々
世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC
2004年にRFIDビジネスソリューションセンターを設置したNEC。米国のタグメーカーとのタッグチームの実力は?
RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱、NTTデータ
RFIDが社会インフラとして利用されることを想定し、共通プラットフォーム作りを推進するNTTデータ。RFID2.0とは何か?
RFIDで家電の製品ライフサイクル管理を目指す
家電電子タグコンソーシアムはRFIDを使った家電のライフサイクル管理と国際標準化を目指している。これまでの手応えを聞いた
UHF帯タグを付けてパレット利用を効率化、JPR
物流現場で利用される「パレット」にRFIDタグを付けると何が起きるのか? 日本パレットレンタルの取り組みの狙いとは何か
中間物流におけるRFIDの可能性、TKSL
トーヨーカネツソリューションズは、物流を最適化するロジスティクスシステムを提案する。中間物流でのRFID利用の未来予想図とは
  RFID+ICフォーラムフィード  2.01.00.91



RFID+IC フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)
- PR -

注目のテーマ

Master of IP Network 記事ランキング

本日 月間
ソリューションFLASH