UHF帯RFIDの先駆者として産業の現場へ
浸透を深める富士通
工藤 淳
オフィスローグ
2006年11月3日
増加する個人の労働負荷をRFIDが省力化する
――那須工場と小山工場でのUHF帯RFID入出荷管理システムの稼働について教えてください
吉田 2005年5月から13.56MHz帯のシステムを使ってRFID導入を始めたのですが、立ち上げ当初はなかなかうまくいかず、批判を浴びました。それでもあきらめずに生産現場やBPR推進部門などの知恵を借りながら、どうしたら現場の負荷が少なくなるかということをポイントに、タグの有効利用の方法を探っていき、2006年5月にはUHF帯に切り替えました。これを自社工場の導入による成功例のリファレンスモデルとして、対外的にも公開したわけです。
【関連リンク】 国内初、工場間でUHF帯RFID入出荷管理システム稼動 |
――具体的な導入効果は
吉田 まず、作業時間の大幅な軽減が挙げられます。いままで使っていたバーコード読み取りでは、スキャンに1件当たり5秒かかっていました。出荷時の検品で20個の荷物があるとすれば、合計で100秒かかる計算です。これがRFIDになった途端に、10秒以下に短縮されます。検品時間だけ見ても、10分の1に抑制できるわけです。
しかしながら、私は実際の効果はさらに大きいとみています。製造業では多品種少量生産の傾向が強まり、1人当たりの作業量が増えている一方で短納期化が進んできています。この結果、現在の生産現場では、1人の人間の作業時間の中で実際にモノを作っている時間は半分しかなく、残りの時間は前工程の確認など複雑化した工程を維持するために割かれているのです。こうした雑務をRFIDが省力化できるということを、私はぜひ強調していきたいと考えています。
――省力化といっても前提になるのは、100%の読み取り精度が確保できることですよね
吉田 それが可能なのは、富士通の技術力とノウハウというところに尽きる、とお客さまにいっていただけるようならば格好いいのですが、実際は試行錯誤の繰り返しです。それをどれくらい積み重ねていけるかで、最終的な品質が決まるのだと思っています。
そういう意味では、「技術とノウハウ」というよりは「汗と涙」でしょうか(笑)。那須工場/小山工場の事例ではUHF帯に移行して以来約5カ月になりますが、1件も読み飛ばしが発生していません。
導入に当たっては、「一括検品=100%の読み取り精度」を証明するために、ゲートの前で2000回は荷物を引っ張って実験しました。受け入れ検査の現場にも、思い思いのやり方で250回は荷物を引いてもらいました。それで1回もエラーが出なくて、「これなら導入しましょう」という言葉をもらえたのです。
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UHF帯RFIDの先駆者として産業の現場へ浸透を深める富士通 | |
Page1 UHF帯、FRAMと他社が進出していない分野へ積極展開 |
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Page2 「RFIDは人に優しい技術」をアピールすることが普及を促す |
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Page3 増加する個人の労働負荷をRFIDが省力化する |
Page4 RFIDは日本の産業構造変化を乗りきるキーツール |
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RFID+ICフォーラム 日本のRFID業界をけん引する人々 |
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