日本のRFID業界をけん引する人々(2)

UHF帯RFIDの先駆者として産業の現場へ
浸透を深める富士通


工藤 淳
オフィスローグ
2006年11月3日
2006年5月に、自社工場におけるUHF帯RFID入出荷管理システムを稼働させるなど、RFID分野における先駆者ぶりをアピールした富士通。チップ開発からソリューション提供までのトータルパワーで、積極的に事例提案を推進する同社の取り組みや展望について、同社ユビキタスシステム事業本部ビジネス推進統括部ユビキタスビジネス推進部部長の吉田正氏に伺った

 UHF帯、FRAMと他社が進出していない分野へ積極展開

――富士通のRFIDへの取り組みの経緯は

吉田 ビジネスとして正式に立ち上げたのは2003年12月のことです。このときの主眼となったのは、「UHF帯にフォーカスして立ち上げる」ということでした。国内でUHF帯が本格的に使われ出したのは2005年からですが、当社は立ち上げの時点で今後ビジネスとして推進していくべきはUHF帯しかないという確信を抱いていました。

 というのも、UHF帯には大きなメリットの1つとして「通信距離が長い」というのがあったからです。実際にRFIDシステムが出荷の検品などに使われる場合、1個ずつ人間がチェックせずとも、離れた距離から1度に全部を読み取れるのは大いにメリットがあります。こうした実用面を見ても、UHF帯は今後の需要の起爆剤の1つとして、大きなインパクトを持つと考えたのです。

――UHF帯RFIDシステムに対して富士通の特色は

吉田 取り組みを始めてから間もなく3年になりますが、UHF帯にフォーカスすると決めて最初に手掛けたのは、FRAMというデバイスを使ったタグチップの開発でした。これは日本で初の事例とあって開発は非常に困難を極め、実用化までに2年半を要しましたが、UHF帯で実用化するにはこのFRAMが不可欠だったのです。なぜならば、UHF帯でRFIDシステムを実用化するのに必要な条件として、「通信距離」に加えて「読み書きが迅速に行えること」があったからです。

【関連リンク】
FRAM 技術解説

 現在、タグチップの主流になっているのはEEPROMというデバイスですが、これには書き込みに時間がかかるという弱点があるのです。さらに距離にも問題があって、2メートルの距離で読み取ることができても書き込みはできないといったこともしばしばです。

 しかし、今後の実用化で主眼となる技術、例えばトレーサビリティという用途では、チェックポイントを通過するたびに随時書き込みが確実に行えないといけません。そうしたデバイスがUHF帯用のチップタグには不可欠だというわけで、独自開発に踏み切ったわけです。現在も、日本でこのFRAMを使ったUHF帯チップを作っているメーカーは当社だけです。

 
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Index
UHF帯RFIDの先駆者として産業の現場へ浸透を深める富士通
Page1
UHF帯、FRAMと他社が進出していない分野へ積極展開
  Page2
「RFIDは人に優しい技術」をアピールすることが普及を促す
  Page3
増加する個人の労働負荷をRFIDが省力化する
  Page4
RFIDは日本の産業構造変化を乗りきるキーツール

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  RFID+ICフォーラムフィード  2.01.00.91



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