日本のRFID業界をけん引する人々(3)

世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC


柏木 恵子
2007年1月17日


 イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる

――事業としてのRFIDに対する手応えは

平野 RFIDというのは非常に旬な話題ですが、事業としては、各社どこも大きな数字にはなっていません。ユーザーにしても、興味は示すものの、いざ導入となるとちょっと尻込みをするといった感じです。

 それはやはり「RFIDを使ってどういうメリットがあるのか」とか「本当にRFIDを使って動くんだろうか」といった、疑心暗鬼があるからだと思います。私どもは米沢の工場で実際に使っていますので、それを見せることができます。

 2005年には2000人くらいの方が見学されました。2006年は恐らく3000人くらいでしょう。実際に運用されているシステムを見れば、「できるんだな」とか「知恵の出し方次第で何か使える」といった感想を持たれます。

 実際に実機でやってみると、「なるほど、このくらいだと水が影響を与えるぞ」といったことも見えてきます。「このような制限を考慮しながら、こういう使い方をすれば、実際にできるんだな」という大きな信頼感を勝ち得ることができるわけです。

――工場以外にもRFIDシステムを体感できる場所があるとか

平野 2006年秋に設立した「イノベーションセンター」です。私どもが倉庫として使っている東京流通センター内で実際に触れられるRFIDシステムをお見せすることも可能です。米沢では、事業で利用している実例を見せるのですが、イノベーションセンターでは技術面での実証実験ができます。そこが、他社と違うところだと思います。

 例えば、イノベーションセンターには、NECパーソナルプロダクツで実際に使用しているゲート式リーダ/ライタがあります。実証実験でよく使われるゲート式リーダ/ライタは、ポールを立てたようなものですが、これは読み取り精度に問題があります。電波が反射したり同じようなものが並んでいたりすると余計なタグまで読んでしまう。それを技術的に解決したのがこのゲート式です。ここでは、NECパーソナルプロダクツで使っているのと同じ段ボールを、現場と同じ積み方でお見せします。

左)ゲート式リーダ/ライタ
右)包装機に乗っているのはビジネス向けノートPC「VERSA」の箱

 例えば、テスト環境の段ボールの積み方が、現場のそれとはまったく異なることもあると聞きます。それで「読めた、読めない」ということをやっても、現場からすれば、「こんな積み方はしていないよ」ということになります。このイノベーションセンターでは、実際に現場でやっているとおりの積み方でお見せします。そして、読めたり読めなかったりしたら、こうすればいいというお話をします。

 また、見学者の中には、その会社が実際に扱っているような荷物でテストしてみたいという方もいます。例えば、物流業でしたら、段ボールでも大中小さまざまな大きさがあるでしょうし、紙袋やゴルフバッグなどもあるかもしれません。さすがにゴルフバッグはラインに流しませんが、できるだけ実際の業務に近い形で実証実験を行うことができます。

左)高速コンベア
右)仕分けコンベア

――イノベーションセンターで利用している周波数帯はやはりUHF帯ですか

平野 UHFでと希望される見学者が多いですね。NECは、2.45GHz帯タグである「NETLABEL(ネットラベル)」という製品も持っていますが、こちらはセキュリティとか金融といった特殊な場面で利用されます。NETLABELは非常に小さくできるうえ、メモリ領域が広く使えます。エンコーディングなども非常に簡単にできます。

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Index
世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC
  Page1
現場により近いところでRFID事業戦略を立案するために
  Page2
RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う
世界標準に“和魂洋才”で取り組む
Page3
イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる
  Page4
ROIを出せるトータルソリューションとして提供
見落とされがちな金型管理は重要なソリューション
  Page5
RFIDを使うメリットが見えれば普及は進む

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  RFID+ICフォーラムフィード  2.01.00.91



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