世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC
柏木 恵子
2007年1月17日
RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う
――NECの工場では、どのようにRFIDを活用しているのですか
平野 NECパーソナルプロダクツ米沢事業場で工程管理に利用した例を紹介しましょう。この工場では、以前は紙の生産指示書とバーコードを利用していました。実は、この工場では1日に約1万台のパソコンを作りますが、全く同じものは2台と作りません。筐体が同じでも、ユーザーのニーズによってCPUやハードディスクの容量が違って、それを生産指示書に基づいて組み立てていくわけです。
生産はセル方式で行っていますが、生産指示書のバーコードを1台当たり10回ほど読んでいました。10回を1万台分ですから、10万回の読み取りということですね。物を作りながら生産指示書のバーコードを読むというのは、大変煩雑な作業ですが、それを10万回行うというのは非効率極まりないということで、まずその部分をRFIDにしました。
効率化のほかにも、万が一、不具合品が混入した場合には、原因究明のための指示書検索が簡単になるという副次的効果もあります。紙の指示書であれば、不具合品があった場合には倉庫に行って社員数人がかりで探さなければなりませんが、現在のシステムならば検索画面から簡単な操作をするだけで、それがどのラインでどのように作っているときに混入したものかを見つけることができます。
現在、米沢の工場ではトヨタのカンバン方式を採用しており、RFIDカンバンを利用しています。生産に必要なさまざまな部材を各協力会社から工場に納めてもらうわけですが、牛乳の配達のように物流業者が協力会社をぐるぐる回ります。RFIDカンバンにより、工場にとっては棚卸し在庫の削減ができ、協力会社はタイムリーに物を納品できるようになりました。カンバンには、当初13.56MHzのRFIDを使っていましたが、EPCglobalの標準化活動が進み、タグの単価も安くなるだろうということもあって、この秋にUHF帯のものに切り替えました。
NECパーソナルプロダクツ米沢事業場 |
世界標準に“和魂洋才”で取り組む
――RFID製品に対するNECの特色は
平野 利用しているチップはインピンジ(Impinj)社製のものです。NECトーキンがリーダ/ライタやこのチップを利用したインレイというタグを作っています。アンテナなどの機能が各メーカーの差別化ポイントですが、インピンジのものは性能が高くトーキンの技術とも相性が良いようです。
RFIDに利用する周波数帯は日米欧で異なり、特に日本では周波数の幅が狭い。これらすべての周波数帯に対して高い性能を持っているのがインピンジです。UHF帯を使ったRFIDの利用は最終的にはグローバルでのサプライチェーンを目指したものですから、さまざまな周波数帯に対応することが必要です。
リーダ/ライタもインピンジとの共同開発です。インピンジのファウンダーのトップがEPCglobalのタグに関するWGの委員長をやっているので、標準化が進むのであれば最初から協力してやっていくのがいいだろうということもあります。
ただ、日本の場合は周波数帯が非常に狭く、トーキンのノウハウをインピンジのノウハウとうまく組み合わせて作る「和魂洋才」でやっています。
NECトーキンのRFIDリーダライタ。筐体の右上にインピンジのロゴが見える(写真は2006年6月のRFIDエキスポにて撮影) |
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世界標準に“和魂洋才”で取り組むNEC | |
Page1 現場により近いところでRFID事業戦略を立案するために |
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Page2 RFIDカンバンを自社の現場で実際に使う 世界標準に“和魂洋才”で取り組む |
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Page3 イノベーションセンターでRFIDをリアルに見せる |
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Page4 ROIを出せるトータルソリューションとして提供 見落とされがちな金型管理は重要なソリューション |
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Page5 RFIDを使うメリットが見えれば普及は進む |
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RFID+ICフォーラム 日本のRFID業界をけん引する人々 |
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