第2回
こだわりCDを多くのユーザーに快適に試聴させよ
株式会社内田洋行
次世代ソリューション開発センター
UCDチーム
2008年4月7日
ミッション:こだわりCDを多くのユーザーに快適に試聴させよ
2007年4月、大阪の大型ショッピングモール「なんばパークス」内に、旭屋書店が新業態の複合店舗として「&音(andon)」を出店しました。その「&音」店内に設けられた「ジャズレーベル澤野工房コーナー用CD試聴システム」の開発事例を例に挙げて、UCD活用方法を説明してみます。
澤野工房の澤野社長は、「自分が聴きたい作品をリリースする」という言葉をモットーに優れた音源を厳選し、こだわりを持った作品制作をされています。「ウチのCDは、とにかく聴いてもらえたら売れるんやけど」「こだわりを持って制作した作品自らが語り出すような試聴機が欲しい!」。このような澤野社長の熱い言葉が、今回の開発のスタートでした。
このプロジェクトのミッションは、いうまでもなく「澤野工房のCD売上を増大させること」です。このミッションを、私たちはまず「場づくり」の考え方に落とし込み、開発の方向性を決めていきました。
「誰の」「何のため」に「どんな場」をつくればいいのか。前述の澤野社長の言葉にもあるように、「澤野工房の」「CDを売るため」にはまず、「作品を聴いてもらえる場」をつくることが必要です。さらにその「作品を聴いてもらえる場」とは、「エンドユーザーの」「試聴のため」に「快適な場」と考えることができます。
まず、試聴したくなる「場」であり、試聴していて気持ちがいい「場」をつくる。そのためにはエンドユーザーの視点で考えることが何より重要であり、開発プロセス全般にUCDプロセスを適用することを決定しました。
プロダクトが利用される文脈を知る
私たちが開発するのは、「CD試聴システム」という1つのプロダクトにすぎません。しかし、そのプロダクトがユーザーに利用される文脈を知り、その文脈上にうまく当てはまるプロダクトとすることで、そこに「場」をつくりだすことができると私たちは考えています。
実際のユーザーを観察するフィールド調査は、その利用の文脈を知る最も効果的な手段といえるでしょう。今回は、ちまたにある試聴機や試聴する人々の様子を観察することで、どのような人が利用するのか、どのように試聴機が使われるのか、試聴中に人は何をしているのか、どのような空間で試聴しているのかなど、多くの文脈に関するヒントが得られると考え、フィールド調査を実施しました。
都内の大型CDショップから小さな雑貨店まで、CD試聴機が置かれているさまざまな「場」を観察し、利用の文脈における特徴や問題点を抽出していきました。
その結果、例えば、試聴中は手持ちぶさたになりやすく、人は周囲のいろいろなものに目を向けたり手を伸ばしたりする傾向があることや、試聴中は体勢を安定させるために周囲のものに手を掛ける人が多いこと、ポップに書かれているコメントをかなり真剣に読む人が多いことなど、普段、自分がユーザーの立場ではそれほど意識しないような細かな文脈が浮き彫りになりました。
今回は、すべての開発メンバーで調査を行い、集めたデータは総数約240件に上りました。フィールド調査で得られるデータは、まさに実ユーザーに基づいた生データであり、以降の開発工程すべてのベースとなっていきます。そのため、できる限り開発メンバー全員がフィールド調査に参加することが非常に重要です。複数視点からの発見ができるうえ、「場づくり」に対する意識共有を図るうえで効果的だといえます。
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Index | |
こだわりCDを多くのユーザーに快適に試聴させよ | |
Page1 利用品質を満たすということ UCDプロセスを理解するための3つのフェーズ |
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Page2 ミッション:こだわりCDを多くのユーザーに快適に試聴させよ プロダクトが利用される文脈を知る |
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Page3 ターゲットの明文化「ペルソナ」 文脈に当てはまるプロダクトをつくる |
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Page4 デザインの背景にユーザーニーズを置く 出来上がった「場」は…… |
モノ/ヒトをつなぐこれからの「場」のデザイン |
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