第9回 自動認識総合展 レポート

本格的な導入が進むRFIDのさらなる可能性は


岡田 大助
@IT編集部
2007年9月21日


 製造現場における工程管理や作業支援に浸透

 製造業におけるRFIDシステムの導入率は高い。特に自動車の製造現場での実績が豊富だ。

 東計電算では、組み立て加工業向けに作られたMRP(資材所要量計画)型生産管理システム「P-mocion」の製造工程管理部分にRFIDシステムを組み込んだ事例を展示した。作業指示書とRFIDタグをひも付け、「だれが、何時から、何時まで、どの作業を行ったのか」というデータをポータル画面からリアルタイムに呼び出せる。

 受注から売上までを貫く総合的な生産管理システムの中で、RFIDシステムの導入によって製造工程における効率の向上だけでなく、難しかった管理者層と現場の意識のすり合わせが容易になるのが特徴だ。

 凸版印刷では、部品のピッキング作業を支援する誤組防止システムのデモを行った。組み立ての現場では、部品の種類が多いうえ、よく似た部品が存在する。管理者層には、作業状況をリアルタイムで収集し、作業者別の作業時間を管理したいという要望がある。これを解決するために複数のRFIDタグ(13.56MHz)とLEDを使ったシステムを構築したという。

 具体的な作業は、作業者のIDが入ったRFIDタグ(作業者証)、RFIDタグ付きの作業指示書およびRFIDタグ付きの専用ピッキングトレイの3つを作業台に載せるところから始まる。作業台にはアンテナが設置されており、それぞれのRFIDタグを読み取って、その組み合わせが正しければ、該当する部品が入った部品棚に取り付けられたアンサーキットのLEDを点滅させる。

 LEDの横には必要な部品数も表示されるので、それに従って部品をピックアップし、アンサーキットの確認スイッチを押し、LEDを点灯状態にする。すべての部品を集め、作業台に持ち帰るとアンサーキットのLEDは消灯される。デモでは、ピッキングに要した時間が計測され、規定値(標準作業時間)と比較されていた。このようなデータを収集することで、作業の効率化が図られるという。

作業台が作業員証、作業指示書、専用トレイの3種類のRFIDを読み取ると、部品棚がLEDでピックアップを指示する

 大日本印刷では、工程管理システムをSaaS(Software as a Service)として提供することを発表。同社が運営するiDCにアプリケーションやデータベースを集約することで、営業拠点や工場、事務所など利用場所を制限されずに工程管理システムを利用できる。

 新しい技術、新しい発想でRFID適用分野は拡大へ

 ソフエルは、布製の“のれん”に13.56MHz帯用のアンテナを入れた「のれんゲート」を参考出品した。店舗とバックヤードをつなぐ出入り口は、両手に商品を抱えた状態で通過することが多い。のれん型アンテナは柔軟で「通過時には商品に貼付されたRFIDタグにくっつく形になるので読み取り率が向上するのでは(担当者)」と期待されている。ただし、製品化は未定とのこと。

“のれん”の中に13.56MHz帯アンテナ

 セルクロスは、東京大学大学院情報理工学系研究科の篠田裕之研究室で開発された「2次元通信技術」を使って、2.4GHz帯RFIDの読み取り範囲を平面上に制限する「CELLCROSS アンテナシート」を出展した。

 通常、RFIDの読み取り範囲は電波が届く球形の空間であり、2.4GHz帯であれば約1メートルとなる。ところが2次元通信技術を利用したアンテナシートは読み取り範囲をシートから約1センチ未満に制限する。

 また、シートの裏面は金属でできているため、外部の金属壁や金属床による影響を受けて電波特性が変化することもない。さらに、アンテナ平面上に置かれた複数のRFIDタグの一括読み取りにも対応しており、既存の書庫や棚を流用したスマートシェルフシステムなどの構築が期待できそうだ。

平たく薄いアンテナシートを既存の棚に入れるだけでスマートシェルフが構築できる

 医療廃棄物の追跡システムは2年前から稼働中

 東京都環境整備公社では、2年前からRFIDタグを使った医療廃棄物の追跡システムを稼働させている。医療廃棄物とは、注射針やメスなどの医療器具や血液・体液が付着したもののこと。これらは、バイオハザードマークの付いた専用のバケツに入れられ、焼却処分されることが法律で定められている。

 このシステムでは、専用バケツにRFIDタグを付与し、RFIDタグ読み取り機能が付いた電子秤で搬出前の重量を計測する。収集車によって中間処理施設に運ばれると、到着時に再計量され、バケツの中に入れられたものが紛失していないことを確認する。

 それぞれのデータは、PHSを使って情報センターに集約され処理過程の追跡、監視、確認が行われる。なお、重量で計算される理由は、ガーゼなどの個品にRFIDタグが付けられないという理由のほかに、焼却処理の料金が重さで決まるからだ。

 すでに、500床以上の規模の病院が5病院、日赤の血液センターのほか、約500診療所がこのシステムを利用している。

バイオハザードマークが入った専用バケツの下部にRFIDタグが付けられている

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Index
本格的な導入が進むRFIDのさらなる可能性は
  Page1
ケータイに押されるPHSを上手に活用する位置情報システム
宝石管理システムやワッペンタグといったニッチ製品が登場
既存のUHF帯リーダ/ライタをスペアナ化するファームウェア
Page2
製造現場における工程管理や作業支援に浸透
新しい技術、新しい発想でRFID適用分野は拡大へ
医療廃棄物の追跡システムは2年前から稼働中
  Page3
ハンディ端末はマルチ端末化が進む
自動認識ソリューションモールでは、ちょっぴり近未来なデモ

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