第9回 自動認識総合展 レポート

本格的な導入が進むRFIDのさらなる可能性は


岡田 大助
@IT編集部
2007年9月21日


 ハンディ端末はマルチ端末化が進む

 ハンディ端末といえば、バーコードやQRコード、RFIDそれぞれの専用機が主流であった。しかし、現場で複数のデータキャリアが併用され始めるにつれて、ハンディ端末側のマルチメディア化が進んでいる。

 ウェルキャットでは、腕時計型のウェアラブル端末の新機種「WIT-120-T」やバーコードとFeliCaに対応したハンディ端末「XIT-155-BR」などを出展した。

左)RFIDとバーコードの読み取りが可能になった「WIT-120-T」
右)FeliCaとバーコードの読み取りに対応した「XIT-155-BR」

 WIT-120-Tは、従来型の13.56MHz帯RFIDに加えて、バーコードや二次元バーコードの読み取りを行うための光学系スキャナが搭載された。通信部分はBluetoothだ。また、4つのコマンドキーを搭載し、アプリケーションのインターフェイスとしても使えるように機能を拡張している。

 担当者によれば、「すべての業務をRFIDに置き換えるのは現実的ではなく、実際には、バーコードとRFIDの併用が進んでいる。そうなると、2種類のハンディ端末を持つことが煩雑になるので、一体型の要望があった」という。発売は12月ごろを予定しており、価格は20万円程度になる見込み。従来型の「WIT-150-T」も継続して販売していくという。

 一方、XIT-155-BRは、バーコードとFeliCaの読み取りに対応した新製品。通信部分は、BluetoothとIEEE 802.11 b/gに対応している。FeliCaの鍵付きサービスにも対応しているため、決済などセキュリティが求められるシステムの構築も可能だ。年内の発売を予定しており、価格は30万円程度だという。

 住友電工システムソリューションでは、13.56MHz帯と2.4GHz帯(ミューチップ)のRFIDタグと、バーコード、2次元バーコードの読み込みに対応したハンディ端末「PU3002DR」を発表。防水性能は防塵防水規格のIP53準拠、1.5メートルからの落下衝撃にも耐える耐環境性を備えている。2007年秋発売予定で、価格は40万円程度だ。

ミューチップと13.56MHz帯RFIDに対応した「PU3002DR」

 自動認識ソリューションモールでは、ちょっぴり近未来なデモ

 日本自動認識システム協会(JAISA)の特設コーナー「自動認識ソリューションモール」では、家電のトレーサビリティやコンビニエンスストアやアパレルショップのフューチャーストア化、図書館返却システムなど、すぐにでも実現可能なRFIDシステムのデモが行われた。

 日本マテリアル・ハンドリング協会は、図書館の自動貸出/返却システムを出展。このシステムはすでに長崎の図書館で導入が決まったという。貸出時は、利用者カードと書籍に付けられたRFIDタグをひも付ける。出入口に設置されたゲートでは、利用者カードと書籍のRFIDタグが読み込まれ、貸出処理のチェックが行われる。

 返却時には、返却窓口に利用者カードを提示し、1冊ずつ投入する。投入口にアンテナが設置されており、返却手続きが行われる。返却口の後ろには自動仕分機が設置され、図書館員の作業の軽減が図られている。自動貸出/返却システムの導入によって、図書館員の窓口業務が軽減され、司書としての仕事が充実できる。

左)返却システムのインターフェイス。1冊ずつ返却口に投入する
右)返却口に投入された書籍は自動仕分機で整理される

 日本出版インフラセンターは、平成18年度に実施したRFIDタグ実証実験の成果を展示。製本段階で背表紙の中にRFIDタグを埋め込む方法と、しおりの形で書籍に挟み込み方法を検討した。

 製本段階でRFIDタグを付与するソースタグ方式では、販売時にKILL機能を使ってRFIDタグを無効化する。RFIDタグ内には、ISBNコードやタイトル、作者、発売日、巻数、あらすじなど販売店側で利用する情報が入っている。この方法の課題として、リサイクル時のRFIDタグの処理が挙げられる。現状では、どうしても金属部分が残ってしまうため、自動的に選り分ける仕組みが必要になる。

 一方、しおり型のRFIDタグは、主に購買客向けのサービスに利用される。平置き台にアンテナを設置しておき、書籍が何回手に取られたのか(アンテナから離れたのか)というデータを基に、注目度ランキングをリアルタイムで表示する。書籍をかざすことで、ディスプレイに書籍情報を流すこともできるほか、売上データを表示して実際の人気度を表示することも可能だ。

左)背表紙に製本段階で埋め込まれたRFIDタグ。リサイクル時の課題が残る
右)しおりとして書籍に挟まれるRFIDタグ。販売時に回収することでRFIDタグに対するプライバシーの懸念を払拭する

 流通システム開発センターは、アパレルショップのフューチャーストア像を示した。ゲートでは人感センサーを使って床に画像やメッセージを表示する。デモでは、敷き詰められたバラの絵が、歩みに応じて動くといった仕掛けを用意していた。

 商品のディスプレイは、東芝テックが開発した商品情報閲覧システム「RFマイスター」を使ってRFIDタグを活用する。RFIDタグを読み取って、該当製品のコーディネートを提案するシステムだが、面白いのは「どの店員のコーディネートが顧客に好まれるのか」といった店員のランキングデータを収集する点だ。

 例えば、店員ランキングに参加した顧客にはポイントサービスを提供したり、ランキングデータを使って店員のステップアップを促進したりする。もちろん、マーケティング情報としても活用できる。また、会員サービスとして購入履歴から、すでにワードローブに持っている服とのコーディネートの提案なども可能だ。

 RFマイスターは、アパレルだけでなくワインショップやドラッグストアなどさまざまな小売店で活用できるという。今回は参考出展だったが、来春にはサービス化したいとのことだ。

左)人感センサーを使い、床に画像を投影する。写真では分かりにくいが歩くとバラの花が舞い散る
右)会計台にリーダ/ライタが設置されているので、値札のRFIDタグを一括読み取りする

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Index
本格的な導入が進むRFIDのさらなる可能性は
  Page1
ケータイに押されるPHSを上手に活用する位置情報システム
宝石管理システムやワッペンタグといったニッチ製品が登場
既存のUHF帯リーダ/ライタをスペアナ化するファームウェア
  Page2
製造現場における工程管理や作業支援に浸透
新しい技術、新しい発想でRFID適用分野は拡大へ
医療廃棄物の追跡システムは2年前から稼働中
Page3
ハンディ端末はマルチ端末化が進む
自動認識ソリューションモールでは、ちょっぴり近未来なデモ

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