自衛隊とRFID(前編)

国際平和活動における補給業務とRFID利用


明翫 正樹
アクセンチュア株式会社
マネジャー
2007年3月19日


 RFIDタグの普及促進に向けた取り組み

 本実証実験では、防衛庁・自衛隊内の補給業務を題材としながらも、官民を問わず産業界における将来的なRFIDタグの普及促進に必要と考えられる、以下の取り組みを実施した。

  • RFIDタグのコード体系としてEPCglobalに準拠した
  • EPC Class1 Generation2準拠のRFIDタグとUHF帯リーダ/ライタを使用した

 これら2つはそれぞれ、論理的・物理的なレベルの標準化を志向したものであり、RFIDタグの普及に不可欠な技術ということになる。以降では、本実証実験における、これら技術の具体的な活用方法について論ずる。

 なぜEPCglobal準拠のコード体系なのか

 防衛庁・自衛隊における補給業務は、少なくとも以下の点において特徴的である。

  • 需品、医薬品、電気・通信機器、車両、船舶、航空機、弾薬といった多種類の物品を調達しており、そのうちの1割以上が米国などの海外からの輸入に依存していることから、国内のみならず海外のサプライヤからの調達を意識する必要がある。
  • 自隊輸送のみならず、民間輸送も利用して輸送業務の最適化を図っているため、民間輸送業者との連携も効率的に実施できる必要がある。
  • 国際平和協力活動などを遂行するに当たっては、米国を含めた他国軍との物資の融通ならびに他国物資の輸配送任務の遂行などを想定し、国際的な動向を意識する必要がある。

 すなわち、防衛庁・自衛隊の補給業務においては、国内のみならず海外のサプライヤや輸送業者、さらには他国軍との連携も円滑に実施できる必要があることを意味している。そのためには、それら異なる組織間の物資の受け渡しの際にも、正確に物資の情報が引き継がれる必要がある。

 このような組織をまたがる情報のやりとりには、標準化が有効である。実際、RFIDタグと比較されることの多いバーコードが、現在世界各国でこれほどまでに普及した背景としては、バーコードの実用化初期段階において、このバーコードに記録される情報が標準化されたことが大きいといわれている。

 以上のことを踏まえ、補給業務における調達・輸送の要となるRFIDタグに記録される情報のコード体系(コードの配列に関する規則)は、国際標準に位置付けられるEPCglobalのコード体系に準拠することとした。


 EPCglobalのコード体系とは

 EPCglobalは、世界100以上の小売業、製造業、システムベンダ、公的機関が加入するRFIDタグの標準化/普及促進を図る国際非営利団体であり、Global Standard One、国際EAN(European Article Number)協会とUCC(Universal Product Codeの管理機構、北米中心)が統合し、2005年に組成された。

 EPCglobalは、RFIDタグのコード体系のみならず、タグ/リーダ間の通信方式などの技術仕様も検討している。検討の結果は、ISO(国際標準化機構)へ提案し承認を受けることで、国際標準化および世界的な普及促進を図るアプローチを取っている。

 さて、EPCglobalのコード体系では、物資の荷姿の性質や特徴などにより、以下のフォーマットが定義されている。

EPCglobalのコード体系―出所:EPCglobal 改:(財)防衛調達基盤整備協会/電子タグ実証実験プロジェクト全体連絡会議

 また、これらとは別に米国国防総省(DoD:United States Department of Defense)では、調達・補給業務において、以下のようなDoDフォーマットと称されるものが活用されている。

DoDフォーマット―出所:EPCglobal 改:(財)防衛調達基盤整備協会/電子タグ実証実験プロジェクト全体連絡会議

 国際平和協力活動などで米国をはじめとする友好国との補給物品の相互融通ならびに補給支援などが想定される防衛庁・自衛隊においては、このフォーマットについても将来的な活用の可能性が考えられる。

 また、このフォーマットは、現状ではEPCglobalにおける非標準扱いではあるものの2005年5月にはEPC Tag Data Standards改訂版(ver.1.27)に新たな一類型として加えられており、近い将来は、標準の一類型として追認されることも想定される。

◇ ◆ ◇

 今回は実験全体の流れについて紹介した。後編では、実際に使われた製品やコード体系、読取率などについて報告する。

2/2
 

Index
国際平和活動における補給業務とRFID利用
  Page1
自衛隊の補給業務におけるRFID活用の背景と目的
自衛隊補給業務のビジネスモデル
自衛隊補給業務の実験シナリオ
Page2
RFIDタグの普及促進に向けた取り組み
なぜEPCglobal準拠のコード体系なのか
EPCglobalのコード体系とは

自衛隊とRFID
前編:国際平和活動における補給業務とRFID利用
後編:自衛隊のRFID実験から得られた読取率向上策

Profile
明翫 正樹(みょうがん まさき)

アクセンチュア株式会社
マネジャー

京都大学理学部物理学科卒業。官公庁・金融機関を中心に、システム開発のプロジェクト管理に関するコンサルティングに従事。

金融機関・政府系金融機関等へのシステム開発のプロジェクト管理に関するコンサルティング、金融機関のシステム統合のプロジェクト管理、官公庁の大規模システム開発のプロジェクト管理など

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