くよくよしていても始まらない。星野君は、「自分1人が任されたんだ」と前向きに思うことにして早速作業を開始した。
まずは、Webサーバについて把握しなくてはならない。星野君たちが異動してくるまでは専任のWeb担当はおらず、ある社員が片手間でWebの面倒を見ていた。それでもいないよりはましなのだが、彼は4カ月前に会社を辞めてしまっていた。現状をヒアリングできる相手は誰もいなかった。
Web担当チームの席はビルの7階にある。同じフロアには、広報担当、ビジネス担当などが配置されている。Web担当は広報の位置付けだ。星野君はWeb担当になる前、ビジネス担当にいたので入社以来ずっと7階だ。しかし、Webサーバらしきものを見た記憶はないので、きっと技術担当が配置されている6階にあるのだろう。
ひとまず、6階にいる山下君にメッセンジャーで聞いてみることにした。山下君は、星野君にこの会社を紹介した友人である。山下君とはいつもメッセンジャーでやりとりをしているので最も気軽に聞ける相手でもある。
星野君 「今日からWeb担当になったんだけど、うちのWebサーバがどこにあるか知らない?」
山下君 「おー、おめでとう!星野。早速動き始めているのか。楽しくやっていけそうか?」
星野君 「それは、まあ、後で……。それより……」
山下君 「ああ、きっとサーバ室だな。それっぽいのを見た記憶がある。いまから案内するよ。6階のエレベータ前まで来てくれ」
星野君はサーバ室に案内された。サーバ室は6階にあるのだが、技術部門の部屋とは離れた場所にあった。星野君は、サーバ室に初めて足を踏み入れた。
あまり広いとはいえない部屋だが、ラックがちょこんと隅っこにあるだけ。何ともぜいたくな空間の使い方だと星野君は思った。
山下君 「あー、これだな。『外部Webサーバ』ってシールが貼ってある。……あれ?ディスプレイがつながってないな」
星野君 「それって、全然管理されてなかったってこと?」
山下君 「まあ、そうかもしれないけど、完全にリモートで管理していたのかもしれないぞ」
中身はともかくとして、取りあえず物理的な場所は分かった。次はネットワーク構成などが知りたい。だが、山下君の話によると、「たぶんそういった資料はないだろう」とのこと。山下君自身も、特定のサーバを管理しているわけではなく、サーバ室には社内LANの配線で入る程度らしい。
今日のところは、物理的な配線からある程度の構成を推測して済ませることにしよう。星野君は山下君に手伝ってもらい、Webサーバにディスプレイをつなげてみた。
山下君 「パスワードはこれかな?」
そういって、パスワードを打ち込むとあっさりログインができた。ほかのサーバのパスワードと同じらしい。星野君は、「それもどうよ?」と心の中で思ったが、取りあえず山下君からそのパスワードを教えてもらった。
山下君 「これからここにはよく来るだろうから、サーバ室への入室申請とかやっておけよ」
そういって山下君は自分の仕事へ戻っていった。
サーバはLinux系。Last loginの日付は4カ月前。恐らく、前の担当者が辞めた後、誰も触ってないのだろう。辞める直前に一通りのパッチなどを当てておいたらしく、すぐに手を加えなければいけないところはないようだ。
いくつかの設定を変えただけでリモート管理できるようになった。ただ、星野君は自宅でサーバを立てた程度の経験しかないので、これで本当に安全なのかどうか分からない。
星野君 「(後でちゃんと調べて勉強しないとな。でも、これなら今週中には間に合いそうだ)」
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