ITシステムの構築では、アプリケーションに目がいきがちで、ストレージについて深く考慮する人があまりにも少ない。しかし、ストレージの利用のしかたによって、カットオーバー後の運用のしやすさに大きな違いが出る。本連載ではストレージの世界を、まず接続形態から考える
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
近年の飛躍的なデータ増加により、情報インフラとしてのストレージに関心が高まっている。一方、IT技術者の多くはストレージを意識せずシステム構築を行うことが少なくない。それでは「ストレージを意識する」とはどういうことだろうか? 本連載では、下記テーマを中心にストレージの基礎知識について全4回で紹介していく。
企業で利用される大型のストレージ・システムは、多数のハードディスクドライブ(HDD)を搭載している。これらのHDDを組み合わせ、単一あるいは複数のRAIDグループに構成して用いる。RAIDの設定は、専用の装置(RAIDコントローラ)で行う。
RAIDコントローラは、複数の物理HDDを組み合わせて論理的に1台のHDD(RAIDグループ)に構成し、これをLUN(Logical Unit Number)に分割する。これを、必要に応じてパーティショニングした上でファイルシステムを構築する(図1)。
図1に出てくる用語の意味は次の通りだ。
RAIDグループ(またはRAIDセット)
物理HDDを組み合わせた1つの論理HDDを構成するグループ
LUN(Logical Unit Number)
サーバから1台の物理HDDとして認識される単位。RAIDグループから1つ、または複数に分割して作成する
パーティション(スライス)
物理HDDを論理的に分割した区画(OS領域、アプリケーション領域、ユーザーデータ領域など)
ファイルシステム
OSが記憶装置に記録されるデータを管理する仕組み
(WindowsではNTFS、FAT、UNIXではUFS、JFS、XFSなど、Linuxではext2、ext3、ReiserFSなど)
LUNは、ストレージの世界で初心者にとって最もイメージがつかみにくい用語であり、本記事の後半部分にも登場するので、ここで一通り解説しておきたい。
RAIDグループ、あるいはRAIDセットと呼ばれるものは、ディスクドライブを物理的に複数組み合わせたものだ。一方、LUNは直訳すると「論理ユニット番号」で、このRAIDグループを論理的に構成し、それぞれに番号を付与してサーバ(ホスト)から識別できるようにしたものだ。
これはストレージ・システムを複数のホストで共有する際に、より大きな意味を持つ。複数のホストが同一のストレージ・システムを共有するといっても、ファイル共有ではなくブロックアクセスで利用する場合、一般的なファイルシステムでは複数のホストが同一の領域に対して読み書きすることはできない。そのため、各ホストはそれぞれ別の領域を使う必要があり、各ホストにおいて、ストレージ・システムのどの領域を使うかを設定しなければならない。この設定の際に、ストレージ領域を識別するためにLUNを利用する。
1つのRAIDグループには1つのLUNを割り当てることもできるし、複数に分割して複数のLUNを割り当てることもできる。
ストレージ側で行う設定は、通常LUNの作成までである。後はホスト側からLUNを自分のストレージ領域として認識し、必要に応じてパーティション分けをして、ホストのOSのファイルシステムを適用する作業(つまりフォーマット)を実施する。
サーバに接続されるストレージは、サーバ占有型、ネットワーク接続型と大きく2つに分類される。
サーバ占有型は、サーバ筐体または外部の専用エンクロージャにHDDを搭載し、サーバのRAIDコントローラにより管理される。
RAIDコントローラとHDDの接続インターフェイスには、SCSI(Small Computer System Interface)やSAS(Serial Attached SCSI)などの規格が利用されている。SASはパラレル接続のSCSIに代わり、近年急速に普及してきたシリアル接続のインターフェイスである(図2)。
サーバ占有型は、その導入の容易さから、小規模から大規模なものまで、企業のさまざまなシステムに採用されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.