iPhone・Android 2.x系といったスマートフォンなどのモバイルデバイスの需要が増えるなか、マウスやキーボードなどのコントロールデバイスを介さず、指先のみで操作可能なタッチUI(ユーザーインターフェイス)の重要性が一層高まってきています。また、「タブレット」「スレートPC」と呼ばれるデバイスの分野でも、iPadやAndroid 3.x系、BlackBerry PlayBookに加え、Windows OSを搭載した製品が次々と世に出てきています。
2009年10月に発売が開始されたWindows 7では、Starter以外のエディションで、マルチタッチ操作をサポートしています。iPhoneやAndroidなどのスマートフォンだけではなく、世界で最も普及したPCのOSであるWindowsがマルチタッチ操作をサポートしたことにより、タブレット/スレートPC端末の分野でも、ますますマルチタッチに対応した製品やアプリケーションが世に出現することでしょう。
本連載では、こうしたマルチタッチ/マルチデバイス時代に対応していくために、マルチタッチの特徴や適用分野、マルチタッチで操作可能なアプリケーションを設計する際の留意事項、また開発時の環境構築、操作イベントの取得方法といった点などを説明します。
Windows 7のStarter以外のエディションは、マルチタッチ操作をサポートしています。Vista以前でも、タブレットPCなどのスタイラスイベントや、シングルタッチ操作に対応できていましたが、対応のために、別途アプリをインストールする必要がありました。
Windows 7では、タッチ操作のための「Windows タッチ」があらかじめOSに組み込まれていること、また、複数の指によるマルチタッチに対応したことが特徴です。
OSが標準機能でタッチ操作をサポートし始めたのと同時に、以下のようにいくつかのOS付属アプリで、タッチ対応がされています。
Windowsユーザーエクスペリエンスガイドラインでは、タッチ操作に対応したアプリは、アプリ中でタッチ操作がカバーする範囲ごとに、以下の3種類に分類されています。
現状、OSが標準でタッチ操作に対応し始めたものの、ユーザーがこの操作に対応したスクリーンを持っていなければ、タッチ操作の恩恵を受けられないため、一般的なユーザーに向けた、PCのタッチ操作の普及は過渡期と言えます。
また、PCやタブレット/スレート端末のディスプレイをタッチ操作する文化も新しいユーザー体験となるため、タッチ操作にメリットがある場合でも、従来のマウスとキーボードによる操作を完全に見切ることは難しく、現状では、ハイブリッドに操作可能なアプリを考える必要があります。
さらに、ディスプレイごとにタッチの検知数が、1点、2点……5点……無限など、ディスプレイを構成する部材ごとに異なるため、ハードウェアを限定する、特殊な用途に最適化したアプリを開発する場合以外は、2点以上のタッチ操作を標準操作とすることはいまだ少ない状況と考えられます。
また、Windows 7では以下の4種類のタッチ操作ができます。
マウスの左ボタンを数秒間長押し、もしくは、片方のマウス左ボタンを押した状態で、もう片方のマウスでクリックします。
Internet Explorerなどでスクロールがある画面を表示し、ドラッグして投げるような操作をすると、滑るようなスクロールできます。
素早く上下左右にドラッグします。標準では、左右方向にWebブラウザの「戻る」「進む」が設定されています。
フリックに反応するように、現在のページが横にスライドする動きをして、前のページへ戻ります。
Windows 7標準の「ペイント」はマルチタッチに対応しているので、同時に複数の線を描くことができます。
また、Bing地図では、マルチタッチでズームイン、ズームアウトができます。
今回タッチ操作で例に挙げたのは、ほんの一部のアプリですが、タッチ操作はWindows 7が標準サポートしているため、その他のアプリでもスクロール操作できるものも多くあります。
ここからは、実際にマルチタッチアプリを開発するための環境について説明します。準備するのは以下のものです。
動作を確認するためには、マルチタッチに対応したタッチパネル環境が必要になります。最近では各社からマルチタッチ対応ディスプレイや冒頭に挙げたような「タブレット」「スレートPC」が発売されています。
しかし、すべての開発PCごとに用意することは大きな負担になりますし、ちょっとWebサイトで公開されているサンプルを確認だけ行いたいということもあると思います。そのような場合はCodePlexで公開されている「Multi-Touch Vista」が便利です。これは、複数のマウスを使い、マルチタッチ操作をシミュレートできるアプリです。次ページで、使い方を紹介します。
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