第1回「Ajax技術の目に見えない通信内容をのぞいてみよう」ではAjaxの技術背景を、第2回「Ajaxの特徴に潜むリスクをサンプルアプリで確認しよう」ではAjaxのセキュリティリスクを見てきました。第3回の今回は、Ajaxの本格的な開発には欠かせないAjaxライブラリについて見ていきます。
本記事は2006年に執筆されたものです。Ajax全般の最新情報は「リッチクライアント & 帳票フォーラム」総合目次のカテゴリ「実践Ajax」や「Ajax技術解説」をご参照ください。
Ajaxライブラリ(*注1)はすでに数多くのものが出回っていますが、多過ぎて全体像がつかめていないのではないでしょうか。今回は代表的なAjaxライブラリの一部を挙げ、それぞれを比較しながらAjaxライブラリの全体像を把握していきたいと思います。
(*注1)再利用可能なプログラムの機能上の集合を表す用語・分類として、「ライブラリ」「フレームワーク」「ツールキット」等がありますが、本連載ではそれらを便宜上まとめて「ライブラリ」と呼ぶことにします。
どのようなプログラミング言語でもライブラリが存在するように、Ajaxにおいてもライブラリが存在します。
初めにAjaxライブラリの必要性について見ていきたいと思いますが、ここではAjax開発ならではのライブラリの必要性を2点取り上げます(ほかの言語のライブラリと共通する必要性はあらためて取り上げません)。
Ajaxの利点として、さまざまな環境における一般的なWebブラウザ上で実行できることが挙げられます。しかしWebブラウザの実装によりAjaxの解釈が異なるケースがあります。
各Webブラウザ間、さらには同じWebブラウザでもバージョン間によって解釈が異なることもあり、それぞれに対応したAjaxプログラミングを行うのは非本質的な作業です。
異なるWebブラウザでも同様に動作するように、実装間の差異を吸収してくれる機能を提供するのがAjaxライブラリの1点目の必要性です。
Ajaxで利用するJavaScriptは、ほかのJavaやRubyのような言語と比べて標準で用意されている関数が少ないことが挙げられます。
特にAjaxでは非同期通信処理やDOM(Document Object Model)処理を標準で用意された関数のみで実装しようとなると煩雑なプログラムになりがちで、これもまた非本質的な作業です。開発効率を向上させる豊富な機能を提供するのがAjaxライブラリの2点目の必要性です。
現状ではWeb上に数多くのAjaxライブラリが出回っています。それらAjaxライブラリの一覧を提供しているサイトから数を挙げるとすると、“AJAX Matters Blog”では102個、“Ajaxian.com 2006 Survey Results”では150個以上のAjaxライブラリの名前が挙がっています。これだけ多いとすべてを調べ上げるのは大変な作業となります。
今回はそれらAjaxライブラリの中から代表的なものを取り上げ、比較を行いながら全体像をつかんでいきたいと思います。
主に以下の基準で8個のAjaxライブラリを選定しました。
これらの基準で以下の8つのAjaxライブラリを、選定しました。
次ページで、これらのAjaxライブラリについて整理します。
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