[事例研究]
株式会社神戸製鋼所 都市環境・エンジニアリングカンパニー

1.Macintoshベースのネットワーク環境をいち早く導入し、2000台規模に拡大。ネットワーク管理は煩雑さを極める

デジタルアドバンテージ
2001/10/10


獅山 晴之 氏
株式会社神戸製鋼所
都市環境・エンジニアリングカンパニー 企画管理部 システム企画グループ長
「Active Directoryによって、ファイル・サーバもメール・サーバも一元管理することで、人事異動や組織改編に伴う管理作業を効率化できるという点がWindows 2000+Exchange 2000の最大の魅力でした」

 冒頭で述べたとおり、(株)神戸製鋼所 IPEカンパニーは、早期からパーソナル・コンピュータを活用した水平分散システムに注目し、1988年にMacintoshをベースとする全カンパニー規模のLAN、メッセージング環境を構築した。「1988年といえば、使い勝手のよいGUIなどでMacintoshが大きく注目されていた時代で、さっそくこれを全カンパニー規模で導入し、1人に1台ずつ割り当てて、組織のフラット化を推進しようということになりました。当時は組織的にMacintoshを導入するという例は珍しく、雑誌の取材なども数多く受けたものです」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 今回(2001年1月)Windows 2000環境へのリプレースを行うまで、必要に応じてMacintoshクライアントやサーバを追加・リプレースしており、最終的にはMacintoshの台数は2000台規模に達していた。「初期のMacintosh Classicから、最近のPower Mac G3まで、Macintoshの歴史とともに、すべての機種が社内にあったんじゃないでしょうか」(コベルコシステム 大津自然 氏)

 社内でのファイル共有に使用するファイル・サーバとしては、Macintoshのファイル共有サーバであるAppleShareサーバを使用していた。しかしこのAppleShareは、Windowsネットワークでいえばワークグループ・ネットワーク・レベルのファイル共有システムであり、Windows NTドメインやActive Directoryのような、大規模なネットワーク環境での運用や管理は想定されていない。「AppleShareでは、サーバ単位にユーザー管理を行わなければなりません。したがって、あるユーザーが複数のサーバを使えるようにするには、各サーバごとにそのユーザーを登録する必要があります。またAppleShareサーバで共有できるディスクサイズには強い制限があり、サイズが不足すると、必要に応じて新しいサーバを立ち上げるという状態でした。管理・運用は煩雑さを極めていました。こうした煩雑な管理・運用に起因するTCOの増大に加え、事実上、Apple 1社独占でハードウェアやOSが供給されるということもあり、激しい競争にさらされたPCのように思うように製品のコストパフォーマンスが向上しないという二重の問題に直面していました」(コベルコシステム 大津自然 氏)

大津 自然
コベルコシステム株式会社
総合システム本部 第一システム部 都市環境エンジシステム担当課長
「UNIXメール・サーバ、Macクライアントという2種類のベース・テクノロジで構成される従来のシステム管理は非常に面倒でした。安価なLinuxも候補の1つではありましたが、こうした経験を踏まえると、やはりクライアントからサーバまで、シングル・アーキテクチャであってほしいというのは、私たち管理する側の強い希望でした」

 国内・海外を問わないプラントビジネスを手がけるIPEカンパニーでは、現地事務所との頻繁な情報共有も必要になる。このような遠隔地との情報共有では、ARA(Apple Remote Access)を使用して、ダイヤルアップによって現地事務所と本社を接続していた。「プラントビジネスでは、プラントを設計し、資材を調達して現地に持っていき、建設し、試運転し、最終的にお客様にお渡しします。この過程で、膨大な人数のスタッフがかかわり、お互いに情報のキャッチボールをしながらプロジェクトを推進します。事業対象は、国内だけでなく海外もあります。従ってARAによるリモートアクセスは不可欠な存在だったのですが、海外から国内のサーバへのダイヤルアップ接続による電話料金は恐ろしいほどの金額になっていました」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

従来は社内と社外のメッセージングを別系統で管理

 メッセージング環境としては、社内用と社外用の2種類を別系統で運用していた。社内のスタッフ同士のメッセージ交換では、QuickMailというメール・システムを使用し、社外とのメッセージ交換では、UNIXベースのメール・サーバを立ち上げ、メール・クライアントとしてはNetscape Messengerを使用していた。「インターネットの普及以前に社内メール環境があったため、結果的にこのような構成になりました。しかし歴史的な経緯はともかく、統合的なメッセージング環境を早期に構築することが強く求められていました」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 また社外とのメッセージ交換では、Macintoshクライアントならではの悩みもあった。「書類をメールに添付してもらえるのはいいのですが、それらは例外なくWindows環境のファイルなのです。場合によっては開くだけでも一苦労でした」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 長年にわたる莫大な投資と、Macintoshネットワークに関するさまざまな運用ノウハウを蓄積してきたIPEカンパニーであったが、そうした過去の資産にいつまでもとらわれるのではなく、電子商取引など、次世代のeビジネスに向けたITインフラの足場固めが急務となっていた。

次世代のデファクト・スタンダードとしてWindows 2000を選択

 以上のような背景から、IPEカンパニーでは、現行のMacintoshに代わる次世代プラットフォームの検討を開始する。しかしプラッットフォームの選定にあたっては、あれこれ考えるというより、まずはWindows 2000の導入ありきだったようだ。「選定のキーワードは『デファクト・スタンダード』でした。次世代の主流となる環境を選ばなければなりません。すでに官公庁でも、Windows OSは広く使われています。こうした取引先とのデータ交換を考えても、Windows OS以外の選択はありえませんでした」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 しかし今回の移行計画を検討し始めた1999年の段階では、Windows 2000はまだ発売されていなかった(Windows 2000の国内発売は2000年2月)。「Windows 2000はまだ発売されていませんでしたが、目前には見えていました。あわててWindows NT 4.0を導入しても、すぐにWindows 2000へのバージョンアップが必要になるのでは困るので、Windows 2000に照準を合わせて移行計画を練ることにしました」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 クライアント側にはWindows 2000を導入するとしても、サーバ側にはLinuxや他のUNIXシステムなどを検討する余地はあったのではないか? だがこれまでの苦い経験から、そのような選択肢もあり得なかったという。「安価なLinuxの導入も考えなかったわけではありません。しかしクライアント側とサーバ側でベース・テクノロジが異なるというのは、管理が非常に面倒になります。これまでも、クライアントはMacintosh、メール・サーバはUNIXという環境を長年にわたり管理してきましたが、たいへんな苦労を強いられました。やはりクライアントからサーバまで、シングル・アーキテクチャであってほしいというのは、私たち管理する側の強い希望でした」(コベルコシステム 大津自然 氏)


 INDEX
  [事例研究]株式会社 神戸製鋼所 都市環境・エンジニアリングカンパニー
  1.Macintoshベースのネットワーク環境をいち早く導入し、2000台規模に拡大。ネットワーク管理は煩雑さを極める
    2.ADとの連携、使い勝手のよいUIからExchange 2000を選択
    3.大規模拠点のExchange 2000サーバはクラスタリングにより信頼性を向上
    4.従来はダイヤルアップに頼っていたリモート接続にはVPNを活用
 
事例研究


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