[事例研究]
株式会社神戸製鋼所 都市環境・エンジニアリングカンパニー

3.大規模拠点のExchange 2000サーバはクラスタリングにより信頼性を向上

デジタルアドバンテージ
2001/10/10

 今回のシステム導入にあたりIPEカンパニーは、ハードウェア・ベンダとして日本IBMを選択した。「ベンダの選定にあたっては、複数ベンダのコンペとしました。この結果、技術的にはどのベンダも差があるとは思えませんでしたので、第一にはコスト面と、第2にワールドワイドでの総合力を評価して、日本IBMさんを選択しました」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

 今回導入されたハードウェアの構成は次のとおりである。

機種 CPU メモリ ディスク 台数
サーバ
ドメイン・コントローラ/ファイル・サーバ
  Netfinity 5600
  Netfinity 7600
Pentium Xeon-500MHz 512Mbytes 144Gbytes 2
Pentium III-800MHz 512Mbytes 54〜104Gbytes 6
Pentium III-800MHz 384Mbytes 54〜72Gbytes 3
Exchangeサーバ
 Netfinity 5100
 Netfinity 5600
Pentium III-800MHz 1024Mbytes 414Gbytes(クラスタ) 1
Pentium III-800MHz 1024Mbytes
Pentium III-800MHz 512Mbytes 198〜270Gbytes(クラスタ) 5
Pentium III-800MHz 512Mbytes
Pentium III-667MHz 384Mbytes 54〜104Gbytes 4
クライアント
ThinkPad A20m Celeron-500MHz 128Mbytes 12Gbytes 1200
ThinkPad T20 Pentium III-650MHz 128Mbytes 6Gbytes 350
ThinkPad X20 Pentium III-600MHz 128Mbytes 20Gbytes 350
NetVista40 Pentium III-733MHz 256Mbytes 20Gbytes 100
今回導入されたハードウェアの構成

 IPEカンパニーは、大阪/神戸を中心とする阪神地区に複数の事業所を置いており、東京本社とはWINK(Wide Information Network for KOBELCO group)と呼ばれる専用回線で接続されている。

IPEカンパニーのネットワーク・トポロジー
IPEは、阪神地区に複数の事業所や工場を置き、東京本社とはWINKと呼ばれる専用線によって接続されている。

 物理的なネットワーク設計では、1拠点(図中の紫色の矩形)をActive Directoryの1サイトとし、ここに規模に応じて1台または複数のドメイン・コントローラを配置した(図中の「DC」)。ドメイン・コントローラ間の同期は、WANトラフィックの多い昼間は避け、夜間に限り実行する。このドメイン・コントローラとなるサーバは、DNSサーバ、DHCPサーバ、ファイル・サーバを兼ねる。ドメインやOU(Organizational Unit:組織単位)構成などの論理ネットワーク設計についてはすぐ次で述べる。

 図に示したとおり、ユーザー数が200人を超える大規模な拠点については、Exchange 2000 ServerとWindows 2000 Advanced Serverとを組み合わせ、ハードウェアによるクラスタリングにより信頼性を向上させた。これにより、万一、一方のExchange 2000サーバ・システムがダウンしても、他方のExchange 2000システムによってメールの処理は続行される。

 Exchange 2000には、リスク分散と信頼性向上を目的として、データベースを複数に分散させる複数データベースの機能があるが、クラスタリングの導入により、Exchange 2000のこの機能に頼る必要はなくなった。「ハードウェアによるクラスタリングとRAIDディスクの導入によって、十分な信頼性が確保されると考えました。またExchange 2000サーバは拠点ごとに設置され、1サーバあたりのユーザー数が最大でも1000人未満だということも単一データベースで十分と判断した理由の1つです」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)

全カンパニーをシングル・ドメイン化。拠点単位にOUを構成し、メンテナンス負荷を低減

藤原 隆利
コベルコシステム株式会社
総合システム本部 第一システム部都市環境エンジシステム システムアナリスト

「人事異動の多発によるネットワーク管理の負担を軽減し、ネットワークのパフォーマンス低下を防止するため、ADのOU(組織単位)構成は思い切って単純なものにしました」

 IPEカンパニーのネットワーク構成で特徴的なのは、ドメイン設計である。IPEカンパニーのように、一般に複数の事業所から構成される全社ネットワークでは、1つの事業所に独立したドメインを割り当て、さらに事業所内部の組織に対応させてOU(組織単位)を構成したいというニーズが少なくない。しかし前述しているとおり、人事異動や組織の改廃が多発するIPEカンパニーでは、それらに伴うネットワーク管理の負担を低減させると同時に、ネットワークのパフォーマンスも低下させないように、思いきったドメイン−OU構成を採った。具体的には、全カンパニーを単一のドメインとして構成し、拠点(=サイト)をOUに割り当てた。OUは2階層で、カンパニー全体を含むOUが1つあり、その下に拠点ごと(前出の図にある「大阪事務所」「神戸事務所」など)のOUが位置している。「ドメイン構成を複雑にすると、管理が面倒になります。また会社の組織に合わせてOUを割り当てると、OUの階層が必要以上に深くなりすぎてしまい、メンテンナンスの負荷が大きくなり、ネットワーク全体のパフォーマンスが低下するという問題があります。このため今回は、シンプルに全カンパニーを1つのドメインにし、拠点をOUに割り当てました」(コベルコシステム 藤原隆利 氏)

 「結局のところ、OUはグループ・ポリシーが適用される範囲というのが活用のポイントだと思います。こう考えると、OUの分割は、どれだけ細やかにグループ・ポリシーを適用する必要があるかどうか、ということになります。少なくともIPEカンパニーでは、それほど細分化してグループ・ポリシーを適用することはないだろうと予測しました」(コベルコシステム 大津自然 氏)

 ただしアドレス帳については、ドメイン全体が対象となる、Active Directoryが自動生成するグローバル・アドレス帳とは別に、OU単位にアドレス帳を準備した。「これは、AppleShareサーバごとに管理していたMacintosh時代と同レベルの機能を維持するためです。弊社のように数千人規模の組織に対し、グローバル・アドレス帳だけでは、同姓同名によって宛先ミスが生じる可能性もあるからです」(IPEカンパニー 獅山晴之 氏)


 INDEX
  [事例研究]株式会社 神戸製鋼所 都市環境・エンジニアリングカンパニー
    1.Macintoshベースのネットワーク環境をいち早く導入し、2000台規模に拡大。ネットワーク管理は煩雑さを極める
    2.ADとの連携、使い勝手のよいUIからExchange 2000を選択
  3.大規模拠点のExchange 2000サーバはクラスタリングにより信頼性を向上
    4.従来はダイヤルアップに頼っていたリモート接続にはVPNを活用
 
事例研究


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