GUIだけでは面倒な定型処理やシステムのメンテナンスも、コマンドラインを使えば効率よく作業できる。
「コマンドライン」とは、ユーザーがキーボードからコマンドを打ち込むなどして、コンピュータにプログラムを実行させる方法で、WindowsなどのGUI(Graphical User Interface、ジー・ユー・アイ)に対して、CUI(Command-line User InterfaceあるいはCharacter User Interfaceの略、シー・ユー・アイ)とも呼ばれる。CUIでは、コンピュータへの指示やその結果の受け取りは、すべて文字だけを使って行う。かつてのMS-DOSやこれまでに作られてきた多くのOSでは、このコマンドライン ベースのユーザー インターフェイス(操作体系)を採用していた。GUI全盛の時代にいまさら「コマンド プロンプト」かと思われるだろうが、実際には、サーバの管理やマシンのメンテナンス、システムの細かな使い勝手の向上を図るには、コマンドインを使った作業も不可欠である。というのは現在のGUIでは、プログラムの処理についての動作指定や、必要なパラメータの読み込みなどを、マウス等によるユーザー操作で行うため、あらかじめいくつものプログラムに対して必要な指定を行っておき、それを連続的に実行させることが難しいからだ。コマンドラインを使えば、このようなあらかじめ決まった処理をさせるのは非常に容易である。
確かに、コマンドラインを使ってCUIで絵を描くのは大変かもしれないが、逆に1つのGUIプログラムの実行結果を別のGUIプログラムの入力とするようなことは、現状のWindowsのユーザー インターフェイスでは難しいものがある。
また、手慣れたユーザーにとって、深いメニュー階層をたどったり、多数のタブやボタンをクリックして、やっとのことで目的のダイアログにたどりついたりという手順は、面倒だと感じるだろう。
それにGUIにすることで、「簡単」になるという思い込みもある意味間違っている部分がある。例えばDNSの設定を行う場合、確かにWindows 2000では、操作自身はマウスによるクリックや、必要な情報をキーボードから入力するだけですむだろう。しかし何を設定すべきかを知るには、DNSについての深い理解が必要である。つまりGUIが簡単にしてくれるのはプログラムの操作だけであって、正しい結果を得るために必要な操作やそのための知識については何も提供してくれないのである。ヘルプにしても、GUIならば見栄えがするだろうが、それらは情報を提供するだけで、そこに記述された内容をユーザーが理解しないかぎり、やはりDNSの正しい設定は行えない。情報の表示ということだけなら、CUIであってもヘルプファイルを表示することは可能である。
というわけでこの連載では、GUIではできない、コマンドラインならではのコンピュータの使い方について解説していくことにする。ただし、10年前ならば、パソコン ユーザーのほとんどがMS-DOS などのコマンドラインに慣れ親しんでいたのだが、最近では初めて触ったコンピュータが、すでにGUIだったという人も少なくないだろう。また、コマンドラインを使いこなすには、一種のプログラミングが必要になる場合があり、20年前のようにみんながBASICでコンピュータを使っていた時代でもないので、このあたりからも解説が必要と思われる。
このような事情があるため、すでにこうした時代を生きてきた方には申し訳ないが、最初はコマンドラインの「基礎の基礎」から解説を始めることにする。なおこのようなコマンドラインに対するニーズは、デスクトップ マシンでワープロを使うような場面よりも、サーバなどを管理する場合のほうが高いと思われる。本連載では、おもにWindows 2000システムを管理するというような場面を想定して、解説を進めていく予定である。従来のMS-DOSやWindows 9xとは違って、Windows 2000のコマンドラインで利用できるコマンドは豊富に揃っており、特に内部コマンドや環境変数の扱いに対する機能が非常に強化されているので、この連載ではWindows 2000のコマンド ラインを対象として、詳しく解説していくことにする。
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