スパン・ボリュームは、複数のディスクにまたがってディスクのブロックを連結したものである。複数のディスクをまとめることができるので、ディスク・サイズを超えたボリュームを実現できる。シンプル・ボリュームと同様に、拡大や縮小も可能。ただし冗長性はないので、ボリュームを構成するドライブが1台でも故障すると、すべてのデータがアクセス不可能になる。
以下にスパン・ボリュームの例を示す。領域としては5つ見えるが、ボリュームとしては2つしか作成していない。最初にディスク2台を使って50Gbytesのボリューム「SPAN1」を作成し、次に3台のディスクを使って150Gbytesの「VOL2」を作成している。
■ストライプ/ミラー/RAID-5ボリュームの作成
これらはそれぞれRAID 0/RAID 1/RAID 5に相当するボリューム機能である。詳細については次回後編で詳しく紹介する。
複数のディスクを組み合わせて、物理ディスクのサイズを超えるようなボリュームを実現できるのがスパン・ボリュームや(次回解説する)ストライプ・ボリュームの機能であるが、実際にはどの程度のボリューム・サイズまで実現できるのか気になるところである。特に仮想環境の場合は、実機のデバイスやドライバとは異なるもの(仮想デバイス/仮想ドライバ)が使われていることもあり、実際のシステムとは異なる制限があるかもしれない。少し古いが次の資料によると、ダイナミック・ディスクで利用できる(ディスク1台あたりの)最大ボリューム・サイズは2Tbytes、スパン・ボリュームやストライプ・ボリュームでサポートされている最大ボリューム・サイズは64Tbytes(2Tbytesのディスクを最大32台まで)などとなっている。
実際のところはどうなのか、さっそく実験してみよう。最初に紹介した、2Tbytesの仮想ディスクを64台接続した仮想マシン(Windows 7 Ultimate)上でスパン・ボリュームを作成しようとしているのが次の画面である。
右側には32台のディスクがすでに選択されており、さらに33台目を追加しようとしているところである。だが「ディスク 33」を追加すると、右下の[次へ]ボタンがグレーになり、クリックできなくなる。つまり、32台までしか追加できない。
そこで2Tbytesの仮想ディスク32台でスパン・ボリュームを作成したところ、次のようになった。
この画面で分かるように、64Tbytesのボリュームが正しく作成されている。ここには示していないが、ファイルの読み書きやコピー、chkdskコマンドなども正しく動作しているようである。
さてそれでは、作成できるファイル・サイズの最大値はいくらであろうか。上で紹介したリンク先の情報によると、「NTFSにおけるファイル・サイズの上限は(16Tbytes − 64Kbytes = 17,592,185,978,880)まで」となっているので、fsutilコマンドでファイルを作成してみよう(TIPS「巨大なサイズのファイルを簡単に作る方法」参照)。16Tbytesのファイルを作成するには、「fsutil file createnew testfile 17592185978880」のようなコマンドを実行すればよい(ファイル・サイズは10進数で指定しなければならないので、電卓アプリケーションなどで計算するとよい)。なお、fsutilコマンドではファイルの領域を確保するだけで、実際にはファイル全体にデータを書き込むことはない。そのため、これを実行しても仮想ディスクの実際のサイズはほとんど拡大しない。だが0以外のデータを書き込むと、本当にそのサイズのディスク領域が必要になるので、注意していただきたい。
結果は次の通りである。
やはり16Tbytesまでのようである。ボリューム・サイズは最大64Tbytes(資料によっては256Tbytesとしているものもある)までサポートされているが、仮想環境で試した限りでは、ファイル・サイズの方が制限が強いようだ。
このような大きなボリュームやファイル・サイズ・サポートは一般的には使うことはないだろうが、例えば自作したアプリケーションやツールなどが正しく動くかどうかをチェックするためには、このような環境の構築方法は知っておいてもよいだろう。なお、これと同じことを実機でテストしようとすると、当然ながら、合計で16Tbytes以上のディスクを用意する必要がある(サイズが不足していると、fsutil実行時に「エラー: ディスクに十分な空き領域がありません。」というメッセージが表示される)。
今回は、仮想環境における仮想ディスク・サポートについて解説した。ほかにも気になることがあるだろうが(例えばスパン・ボリュームの断片化はいくつまで可能か、ボリュームは何個まで作れるか、Windows OSのバージョンごとの挙動や制限の違いを探るなど)、ぜひともご自身でトライしていただきたい。
次回は続きとして、ストライプ・ボリュームやミラー・ボリュームなどについて見ていく予定である。特にディスクに障害が発生した場合の挙動やそこからの回復方法などは、仮想マシンのような安全な環境であらかじめ体験しておかないと、物理マシン環境で障害が発生したとき、操作を誤ってデータをすべて失ってしまうことにもなりかねない。
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