Vistaの地平 5.ファイル単位のバックアップ(2)株式会社NTTデータ関西 井上 成二2007/03/29 |
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ファイル単位のバックアップ――バックアップ先に格納されるデータ
ここで、ファイル単位のバックアップ機能で、バックアップ先に格納されるデータについて簡単に紹介しておこう。
Vistaでは、ファイル単位のバックアップの種類として、「完全なバックアップ」と「通常のバックアップ」の2つがある(Vistaでは、「通常のバックアップ」とは呼んでいないが、ここでは説明の都合上このように呼ぶ)。
筆者が動作を確認したところ、「完全なバックアップ」ではファイルの変更の有無にかかわらず、対象のファイルがすべてバックアップされ、「通常のバックアップ」では前回の「完全なバックアップ」または「通常のバックアップ」以降に変更されたファイルについてのみバックアップが作られるようだ。
こうしてバックアップされたファイルは、バックアップ先として指定したドライブにzip形式の圧縮フォルダとして保存される。
この際、「完全なバックアップ」を作成した場合には、
<バックアップ先ドライブ>:\<コンピュータ名>\Backup Set YYYY-MM-DD hhmmss> |
という名前のフォルダが作成され、その配下に「完全なバックアップ」とその後に行われた「通常のバックアップ」を格納するフォルダ、
Backup Files YYYY-MM-DD hhmmss |
が作られていく(YYYY-MM-DD hhmmssはバックアップの作成日時)。
そしてこのフォルダの配下に、実際のデータが含まれる<Backup files n>(nは1以上の整数)というファイル名のzip圧縮フォルダが作成される。以降では、Backup Set YYYY-MM-DD hhmmssフォルダと、その配下に作成される一連のファイル、フォルダをまとめて「バックアップ・セット」と呼ぶ。
ファイル単位のバックアップ格納フォルダの構成 | |||||||||
バックアップ・セットは、完全なバックアップと、それに対する差分で構成されている。 | |||||||||
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作成したバックアップは、バックアップ・セット単位で削除することができる。ただし、その時点での最新のバックアップが含まれるバックアップ・セットを削除してしまうと、以降バックアップが開始できなくなる(エラーになる)ので注意が必要だ。エラーは「完全なバックアップ」を再度作成することで回避できる。なお、DVD/CDにバックアップする場合、1枚のディスクに複数のバックアップ・セットを作成することはできない。
ファイル単位の復元――復元対象の選択
Vistaのファイル単位の復元では、復元対象のファイル、フォルダをエクスプローラ形式の選択画面か、検索画面で選択する。これらのインターフェイスで、ユーザーはバックアップの世代をあまり気にすることなく復元対象を選択できる。
ただし、筆者が動作を確認した限りでは、復元対象ファイルの選択時に、検索などの対象となるバックアップは次の図のとおりであり、すべてのバックアップは対象になっていなかった。このため、古いファイルを復元しようとすると、いつもなら簡単に見つけることができていたファイルがなかなか見つけられないということがあるかもしれない。
復元対象ファイル選択時に、選択の対象となるバックアップ |
Vistaでは、エクスプローラ形式のユーザー・インターフェイスで簡単に復元対象ファイルを選択できる。ただし、復元対象のファイルを含むバックアップを正しく選択しないと、求めるファイルの復元は実行できない。 |
例えば、上記の状態でバックアップが行われている場合、a.txtは最新のバックアップを選択すれば復元可能だが、c.txtを復元するためには、n-3回目かn-4回目のバックアップを選択する必要がある。また、n-2回目時点のb.txtを復元したい場合は、最新のバックアップでは復元できず、n-1回目かn-2回目のバックアップを選択しなければならない。
復元ポイントの作成/システムの復元
復元ポイントは、基本的にシステムに変更が行われたとき(更新プログラムをインストールしたときなど)に自動的に作成される。復元ポイントを手動で作成したい場合は、シャドウ・コピーと同様に、[システムのプロパティ] −[システムの保護]タブの[作成]ボタンで作成する。
システムの復元は、「バックアップと復元センター」の[システムの復元を使ってWindowsを修復]、または[システムのプロパティ]−[システムの保護]タブの[システムの復元]ボタンで実行できる。あるいはシステム回復オプションでも実行できる。
このように、復元ポイントとシャドウ・コピーが同じ操作で作成できるのは、復元ポイントによるシステム・ファイルおよび設定のバックアップ/復元が、シャドウ・コピーの機能を使って実現されているためだ。それにより、ブロック・レベルでのバックアップを行うようになり、効率的にディスクを使えるようになった。
また、システム回復オプションでもシステムの復元を行えるようになったため、普段使用しているディスクで起動できなくなった場合でも、復元が行えるようになった。
グループ・ポリシーによるバックアップ機能のコントロール
Vista以前のWindowsには、バックアップ機能に関するグループ・ポリシーは、システムの復元に関するものしか存在しなかったが、Vistaでは設定できる項目が増えている。
まず、次のグループ・ポリシーで、コンピュータまたはユーザー単位で、バックアップ機能を無効にしたり、バックアップ先(光学メディアやネットワーク共有フォルダなど)を制限したりできる。
- [コンピュータの構成]−[管理用テンプレート]−[Windowsコンポーネント]−[バックアップ]−[クライアント]配下のポリシー項目
- [ユーザーの構成]−[管理用テンプレート]−[Windowsコンポーネント]−[バックアップ]−[クライアント]配下のポリシー項目
[注意] |
[コンピュータの構成]−[管理用テンプレート]−[Windowsコンポーネント]−[バックアップ]−[サーバー]というグループ・ポリシーも存在するが、こちらはVistaのバックアップ機能には影響を与えない。 |
Vistaのバックアップ機能をコントロールするためのグループ・ポリシー項目 |
Vistaでは、バックアップ関連機能を制御するためのグループ・ポリシーが複数追加された。 |
また、バックアップ機能をコントロールするものではないが、ローカルポリシーで[監査ポリシー]−[特権使用の監査]と[セキュリティオプション]−[監査:バックアップと復元の特権の使用を監査する]を有効にすると、バックアップ、復元について監査イベントが生成される。ただし、バックアップ、復元されたファイルのファイル名はイベントに記録されない。またこれを有効化すると、多数のイベントが生成されるため、コンピュータのパフォーマンスが低下することがあるので注意が必要だ。
以上のように、コントロールできる部分が増えたことはありがたいが、残念ながらバックアップのスケジュールや、対象ファイルの種類などに関するポリシー項目は存在しない。従ってグループ・ポリシーでクライアントのバックアップ設定を完全にコントロールするということはできない。
なお、Windows Vista Home Basic/Home Premiumでは、Windows XP Home Edition と同様にグループ・ポリシーを使用することはできない。
まとめ
以上、Vistaのバックアップ関連機能についてまとめた。ユーザー・データのバックアップから、万一のシステム障害から復旧するためのバックアップまで、Vistaでは機能が大幅に強化され、また使い勝手が向上している。これらの機能を活用すれば、追加ソフトウェアなどを用意しなくても、エンドユーザー・レベルのバックアップなら十分である。
ただし、グループ・ポリシーでの制御などは十分とはいえないので、中央から集中的に管理しようとするなら、何らかの標準以外の手段が必要になるだろう。
INDEX | ||
Vistaの地平 | ||
第6回 より高機能になったVistaのバックアップ機能 | ||
1.Vistaのバックアップ機能の概要 | ||
2.Windows Complete PCバックアップ | ||
3.シャドウ・コピーによるバックアップ | ||
4.ファイル単位のバックアップ(1) | ||
5.ファイル単位のバックアップ(2) | ||
「 Vistaの地平 」 |
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