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連載:国際会計基準の会計処理を理解しよう(2)

IFRSの代表的な会計処理、日本基準との違いは?

山田和延
プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社
2009/7/28

第2回ではIFRSの会計基準として代表的な収益認識、研究開発費、リース、金融商品・デリバティブと、そのほかIFRSで特徴的な会計処理を、日本基準との違いを説明しながら解説する。(→記事要約<Page 3>へ)

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 IFRS会計処理の基礎を説明した第1回記事に続き、入門第2回記事ではIFRSの会計基準として代表的な収益認識、研究開発費、リース、金融商品・デリバティブと、その他IFRSで特徴的な会計処理を解説する。

収益認識

 日本の会計基準においては現在、「企業会計原則」以外に収益認識に関する包括的な会計基準はない。また、企業会計原則においても「実現主義」の原則に従うべきとされているものの、具体的な考え方については特に定められていない。一方、IFRSでは収益に関する会計基準としてIAS18号「収益」があり、この基準に基づき収益が認識・計上される。

 一般的に収益は利益を含んだ概念だが、会計において収益といえば利益ではなく、売上などの収入(revenue)を指す。

 ここでは収益を、(1)物品の販売、(2)役務の提供、(3)利息・ロイヤリティ・配当の大きく3つに分けるが、(1)の物品の販売とこれに関連するマイレージなどのポイント制に関する課題、売上の純額計上の要否や複数契約の課題については基礎編第2回で解説をしたため、ここでは、(2)役務の提供と(3)利息・ロイヤリティ・配当について解説する。

(2)役務の提供

 役務の提供における「役務」とはサービスのことであり、IFRSではこのサービスの提供に係る収益を進行基準で認識している。進行基準とは提供するサービスの進ちょく度合いに応じて収益を認識する方法だが、この方法を採用するには取引の成果について信頼性をもって見積ることができなければならない。

 取引の成果について信頼性をもって見積もることができるということは、下記表のような条件が揃うことである。ちょっと難しい概念だが、簡単にいうと、最終的にお客さんからお金がもらえる可能性が高くて、そのもらえる額と、進み具合、いままでに発生した原価と今後完了までに必要な原価が、おおよそ妥当に算出できるということである。

取引の成果について信頼性を持って見積もることができるための条件

  • 収益の額を、信頼性をもって測定できること
  • その取引に関する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
  • その契約の完了に要する原価と期末日現在の契約の進捗度の両方が、信頼性をもって測定できること
  • 実際発生した工事契約原価が従前の見積もりと比較できるよう、契約に帰属させることができる原価が明確に識別でき、かつ、信頼性をもって測定できること

  では、これらの条件がそろわない場合はどのように収益を認識するのであろうか? そのような場合は、発生した原価のうち、回収できる部分についてのみ収益を認識する。したがって、利益は認識されないことになる。また、発生した原価が回収できないときは、収益は認識されず、発生原価は費用として認識される。

 なお、日本の会計基準では2009年度から、ソフトウェア開発や建設工事など、請負契約のうち、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事契約については進行基準で収益が認識される。進行基準を適用する条件は上記表とほぼ同様であるが、条件に当てはまらない場合は、日本では引き渡しが完了したときに収益全額を計上する完成基準となる。

 一方、請負契約ではあってもサービスの提供を目的とするような契約については、提供が完了した段階で収益の全額を計上する完成基準が一般的である。

(3)利息・ロイヤリティ・配当

 IFRSにおいて利息・配当の収益認識は日本と同様で、利息については実効金利法、配当については受け取る権利が確定した時点で認識する。実効金利法とは日本の利息法に相当し、実効利回りを考慮した複利計算で各期の配分額を決める方法をいう。またロイヤリティについては日本では明示されている基準はないが、IFRSでは契約の実質にしたがい、発生基準で認識する。

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