eマーケットプレイス活用にあたっての3つの留意点

2001/4/26

 eマーケットプレイスにまつわる動向は1年前の興奮から一転し、静観の状態にあるといえよう。コンセプトが誕生した当初はN対Nのマーケットプレイスが話題をさらったが、米国ではすでに“クローズ(閉鎖)”するマーケットプレイスも出てきた。現在、順調に稼働しているのは1対Nのプライベートeマーケットプレイスがほとんどだ。

 日本ガートナーグループでは、4月24日と25日、「E-Business&Commerce Conference 2001」を開催、EC全体の動向予測を発表した。2日目の基調講演では、米ガートナーグループのシニア・アナリスト デビット・ホープ・ロス(David Hope-Ross)氏がeマーケットプレイスについての見解を語った。

マーケットプレイスの選定がより重要に

 同氏はまず、“eマーケットプレイス”と一括りにされているものを、プライベート(Private Marketplace)、パブリック(Public Marketplace)、産業特定コンソシアム型(Consortia)の3つに大分した。そして、大企業主導型のプライベートeマーケットプレイスが1500を数え主流となっている状態は長期的には続かないと語る。

 理由はいくつかある。例えば、新規取引先の開拓などインターネットならではのメリットがこのモデルでは望めない。また、大企業の特定する技術に絞られるため、参加する企業は場合によっては拡張性に乏しいシステムの実装を強いられる可能性もある。ビジネスを取り巻く環境はグローバライゼーション、マス・カスタマイゼーション、オープンで、この環境が変わる可能性はゼロに等しい。現状では活気を呈しているプライベート系だが、多くの企業が“強制されて”参加している状態だという。

 ガートナーでは、2005年には50万以上の企業が何らかの形でeマーケットプレイスに参加していると予想している。形態としては、「3つのモデルが混在して発展して行くだろう」とロス氏は語る。そしてeマーケットプレイスが提供する付加機能も発展し、プライベート系のうち、サプライチェーンや他のマーケットプレイスと接続できないものは消滅するという。

 そもそも、eマーケットプレイスというモデル自体が1999年に登場した新しいものである。これからは乱立したマーケットプレイスの淘汰の時代に突入し、その状態が2005年頃まで続くという。BtoCがたどった道のりだ。注意すべきは、40%の企業が、参加するマーケットプレイスを見誤るという予測があることだ。だからといって、企業は2005年まで参加を見送りビジネスチャンスを逃すという決断はできない。われわれはいやでも時代の波に飲まれることになる。最終的に「eマーケットプレイスを活用したコラボレィティブ・コマース(CC)が実現するのは2007年」とロス氏は見る。

 では、今われわれができることは何なのだろうか? ロス氏はこの課題に対して3つの提言を行っている。

  1. 勝ち組となるマーケットプレイスに参加するため、自社の優先事項を再定義し、参加意義を明確にする
  2. ダイナミック・プライシング(動的な価格設定)に備え、収益分析を緻密に行っておく
  3. 既存のチャネルを大切にすると同時にマーケットプレイスの提供する価値に敏感になる(新・旧、両チャネルの併用)

eマーケットプレイスを見極める

 日本のマーケットプレイス事情に詳しく『日本版 eマーケットプレイス活用法』(コンピュータ・エージ社刊)を執筆した小林秀雄氏は「日本で企業がeマーケットプレイスを活用しはじめるのは2002年からではないか」と言う。最近ある商社が開設した、台湾と日本の企業を結びつけるeマーケットプレイスの例を紹介しながら、リアルとの結びつきを強調する。「ネット上での機能やサービスだけでは不十分。人間のサポートという付加価値が大切」と語る。そのマーケットプレイスでは、商社マンがリアル・ビジネスで培った人脈や仕事のノウハウを活かし、参加企業に翻訳などの付加価値を提供している。

 「求めていることを実現する手段としての活用――ITからの発想ではなく“自分たちの戦略にITをどうとり込むか”の視点でeマーケットプレイスを活用すべき」と小林氏。簡単なようでいて、実は見落とされがちなことなのかもしれない。

(編集局 末岡洋子)

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日本ガートナーグループ

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