2002年のマイクロソフトは.NET、中小企業に注力
2002/12/26
マイクロソフトにとって2002年はどういう年だったのか。同社は業界の中心企業の1つとして、ライバル企業を含めて常に注目を集め、その動向がパートナー企業や顧客企業に大きな影響を与える。マイクロソフトが2002年に発表した製品や新サービス、施策を振り返り、2003年の方向性を探る。
相互接続性重視に転換した.NET
2002年のマイクロソフトの中心にあったのは「.NET」だった。これは2003年も同様だろう。ただ、その戦略の中心は少しずつ移動している。マイクロソフトの会長 ビル・ゲイツ氏は2002年7月に、.NETが第2フェイズに入ることを発表し、他社システムとの相互接続性を高めることを明らかにした。マイクロソフトはすべてのコンピュータ・システムをマイクロソフト製品でカバーすることを最大の目標としてきた。それは.NETでも同じ方向性だったはずだ。しかし、7月に方向転換。マイクロソフトによると「.NETの発表後2年たって、反省もあった。方針を転換し、今まで使っていたシステムはそのままお使いください。ほかのシステムを効率的に接続するのが.NET」と説明するようになったという。
マイクロソフトが重視するのはすべての環境を整えるのではなく、プラットフォームを握るということだ。中心となるのは「.NET Framework」。他社システムとの相互接続性を高めると同時に、マイクロソフトはソフトベンダに対して「これから新しい製品を作る場合は、1つのルールとして.NET Frameworkに基づけばいい」と勧めている。Webサービスという他社も入り混じる土俵で戦うのではなく、自分で土俵を作ってしまおうという作戦だ。
マイクロソフトは「Windows .NET Server 2003」を2003年4月にも発売する予定だ。マイクロソフトにとっても、IT業界にとっても2003年の重大トピックスの1つになるだろう。マイクロソフトはWindows
.NET Server 2003を「.NETに関する技術や開発ツールが整ってきた中で、全体を動かすサーバ製品」ととらえていて、Windows
.NET Server 2003の登場で、「対応アプリケーションが増える」と予想している。2003年夏には「.NETの最適なフロントエンドツール」とマイクロソフトが位置づけるOfficeの次期バージョンを発表する予定。すでに.NET対応のサーバ製品はいくつか出荷されている。それらが組み合わさることで.NETは、マイクロソフトが考えるような方向で企業システムを変えていけるのか、2003年にその真価が問われる。
ITトレーラーで中小企業を開拓
2002年にマイクロソフトが力を入れ、推進してきたのが中小企業向けの営業活動だ。マイクロソフトは2001年11月に全国のパートナー企業と協力して、中小企業向けIT導入支援のプログラム「IT推進全国会」を組織。「Windows 2000 Server」を中心としたシステムの導入を進めてきた。マイクロソフトとしては、もちろん製品を売るのが目的。だが、中小企業の中には、ITに対する認識が低い企業も多く、プログラムではITリテラシーを向上させることに重点を置いた。パートナー企業と営業活動を行う際も個別の製品名を出さずに、SQL Serverなら“データベースソフト”などと言い換えて説明し、IT導入のすそ野を広げることに注力してきた。
中小企業の経営者などを対象にIT導入のメリットを説明する「IT実践塾」(マイクロソフト主催)は、2000年8月末までに全国で426回開催し、延べ1万人以上が受講。IT推進全国会には、全国212のパートナー企業が参加。これらの取り組みで、パートナー企業と中小企業との商談は326件が成功し、1249台のサーバが納入されたという。
中小企業向けの営業では、ITに興味がない中小企業の経営者を振り向かせるために、奇抜なプログラムも用意した。セミナースペースを設けた専用の「ITトレーラー」で全国を回る「マイクロソフトIT体験キャラバン」だ。ITトレーラーによるセミナーは10月に開始し、PCに不慣れな経営者に興味を持ってもらえるようタブレットPCも用意して、中小企業のIT活用の事例紹介やソリューションの説明を行っている。
対オープンソース戦略は政治力が鍵
2002年は、これ以外にもマイクロソフトにさまざまな課題が突きつけられた年だった。以前から批判の多かった製品のセキュリティ問題については、全社的な改善プログラムを策定して、セキュリティを第一に考えた製品開発を行っているという。そのため、マイクロソフトによると2002年は「例年になく製品の修正プログラムがたくさん出た年だった」という。
2002年後半に巻き起こった電子政府を巡る反マイクロソフトの動きも気になるところだろう。日本政府は電子政府の構築にオープンソースソフトのLinuxの採用を検討していて、総務省は省内に研究会を設置する方針。経済産業省も産業としてオープンソースソフト開発をバックアップする考えを打ち出している。政府の一部からは、Windowsは高価でセキュリティが不安、海外製ソフトを政府が使用するのは情報流出などが心配など、短絡的な考えも噴き出した。Linuxを取り扱うベンダなどは、反マイクロソフトの流れに乗って電子政府案件の営業に力を入れている。2003年のマイクロソフトにとっては反マイクロソフトの流れを翻させる“政治力”も必要になるだろう。
(垣内郁栄)
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