金融危機から未曾有の世界的な経済危機へ。この動きが非常にはっきりとしてきた。IT投資への影響も避けられない。10月27日に東京で開幕したガートナーの「Gartner SYMPOSIUM ITxpo 2008」では、2009年の世界的なIT支出が最悪のケースで2.5%減少するとの見通しが披露された。
ガートナー リサーチ シニアバイスプレジデントのピーター・ソンダーガード(Peter Sondergaard)氏は基調講演で、企業におけるITは、コスト最適化の時代に入ったと話した。
では、企業ユーザーがとれる具体的なアクションは何か。ソンダーガード氏が示した提言のうち、トップ3を抜粋すると以下のようになる。
1.テクノロジ・プロバイダやサービス・プロバイダと再交渉を行う
2.機能やシステムを統合して規模の利益を得る
3.データセンターの拡張を抑制/仮想化を推進/資産を売却してリースに移行する
しかし、日本に限っていえば、ITコスト削減ばかりを考えている場面ではない、とガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は同じ基調講演で訴えた。
過去10年、日本のGDPはほとんど伸びておらず、中国に急迫されている。国際通貨基金の予測によると、日本は1人当たりGDPで2013年にギリシャやスペインに抜かれるという。日本が今後世界のなかで生き残っていくためには、企業がITをこれまでのような業務改善というあいまいな役割ではなく、ビジネスの前提あるいは武器として利用していくことが不可欠だと同氏は主張した。
日本のIT利用は大転換期にあると亦賀氏は続けた。これまでのように、数年を掛けて大規模なシステムを構築し、硬直的に運用する手法ではビジネスの変化に追随できない。今後求められるのは数日から数週間で利用開始できるようなオンデマンドのITだ。SaaSのようなサービスを使うか、社内IT部門が業務部門に対してシェアド・サービスとしてITを提供するか、その併用か。いずれにしても業務ニーズに即座に対応することで、業務を単に支えるだけでなく、これに直接貢献できるようにしなければならないと亦賀氏は話した。
私もこの意見に全面的に賛成だ。ビジネスに直接貢献できる筋肉質のITを整備すること。このことがいま、何よりも求められている。現状維持から発想しているかぎり、日本や日本企業は世界の舞台でずるずると地位を下げていくことになるかもしれない。
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