規模に応じた柔軟なネットワークを構築する鍵は可変長のネットマスクにあり。さまざまなブロードキャスト・アドレスについても解説。
■連載目次
第1回 Windowsネットワークの舞台裏
第2回 レイヤ・モデルとファイル共有
第3回 NetBIOSを理解する(1)
第4回 NetBIOSを理解する(2)
第5回 NetBIOSの通信の実際
第6回 TCP/IP始めの一歩
第7回 IPアドレスとネットマスク
第8回 アドレス・クラスとIPアドレス
第9回 IPルーティング
第10回 IPパケットの構造
第11回 MACアドレスを解決するARP
第12回 TCP/IPを支えるICMP
第13回 データグラム通信を実現 UDP
第14回 信頼性を実現するTCP(1)
第15回 信頼性を実現するTCP(2)
第16回 信頼性を実現するTCP(3)
第17回 LLCとNetBEUI
第18回 NetBIOS over TCP/IP(1)
第19回 NetBIOS over TCP/IP(2)
第20回 ファイル共有SMB/CIFS(1)
第21回 ファイル共有SMB/CIFS(2)
第22回 ファイル共有SMB/CIFS(3)
第23回 ブラウザ・サービス
IPアドレスは32bitの数値であり、それぞれの値がユニークでありさえすれば、管理者が自由に好きな数値を選択して、各ホストに付けることができると思うかもしれない。だが、IPアドレスの付け方には幾つかの基本的なルールがあるので、ここではそれについてまとめておこう。
まず重要な概念として、IPアドレスの「アドレス・クラス(address class)」という分類方法がある。最近はサブネットやCIDR(後述)などにより、その重要性が薄れてきているが、それでもネットワークの設計などを行うときには、必ず考慮しなければならない重要な概念であるので(デフォルトのアドレス・クラスというものが存在するから)、ぜひ理解しておいていただきたい。具体的には、このデフォルトのアドレス・クラスを元にして、さらにサブネット化やCIDRへと、IPアドレスの意味付けが少しずつ変わってきている。
アドレス・クラスとは、IPアドレスの値によって、IPアドレスを幾つかのカテゴリに分類したものである。次の図に示すように、IPアドレスの最上位部分のビット・パターン(図中の赤い部分)の値によって、「クラスA」から「クラスE」までの5つに分類されている。
全部で5つあるクラスのうち、ネットワーク上の各ノードにはクラスA〜CのうちのどれかのIPアドレスを付ける必要がある(実際には後述するように、ブロードキャスト用のIPアドレスなどのために、幾つか利用できないIPアドレスがある)。
アドレス・クラスの違いは、デフォルトのネットマスクの違いとなって現れる。前回述べたように(「第7回 IPアドレスとネットマスク―1.IPアドレスとは」)、IPアドレスは「ネットワーク・アドレス部」と「ホスト・アドレス部」の2つから構成されている。ネットワーク・アドレス部を長くするとホスト・アドレス部が短くなり、逆にネットワーク・アドレス部を短くすると、ホスト・アドレス部が長くなる。ネットワーク・アドレス部が長くなるということは、表現できる(識別できる)ネットワークの数が多くなるが、その分、1つのネットワークに接続できるホストの総数が少なくなるということである。逆にネットワーク部を短くすると、表現できるネットワークの総数は少なくなるが、1つのネットワーク内に接続できるホストの総数は多くなる。
クラスAからクラスCまでのアドレス・クラスでは、それぞれ以下のようなデフォルトのネットマスクの値(=ネットワーク・アドレスとホスト・アドレスを分けるためのマスク値)が決まっている。
■クラスの使い分け
以上のように、クラスが変わると、表現できるネットワークの数もその中に収容できる最大ホスト数も変わることになる。そのため、実際にネットワーク・アドレスやホスト・アドレスをどのように割り振るかは、使用するネットワークの規模に応じて決めることになる。一般的には、イーサネットの1セグメントを1つのネットワーク・アドレスに対応させるのが普通なので(それぞれのセグメントをルータで接続して、全体的なネットワークを構築する)、それぞれのイーサネット・セグメントに何台のホストを接続するかによって、どのクラスを使用するかを選択するとよい。
例えば、1つのイーサネット・セグメントに接続するホストの数が最大でも200台程度ならば、クラスCのIPアドレスを使ってネットワークを構築すればよいだろう。つまり、各ネットワーク(=イーサネット・セグメント)には192.168.0〜239.255.255のいずれかを割り当て、それぞれのネットワーク内のホストには、1byteのホスト・アドレスを割り当てればよい。
1セグメントに接続するホストの数がもっと多い場合や、もしくは、管理の都合などでもっと大まかにホスト・アドレスを割り当てるのならば(例:ネットワーク機器のアドレスは10〜99、サーバ系は100〜199、クライアント系200〜などというように、識別しやすいように割り当てたいのならば)、クラスBを使うという方法もあるだろう。
【2003/01/17】「IPアドレス・クラス」の図の説明の部分で、当初クラスDのIPアドレスの範囲を「192.0.0.0〜239.255.255.255」と記述しておりましたが、正しくは「224.0.0.0〜239.255.255.255」です。また、各クラスごとに利用可能なIPアドレスの総数などに間違いが含まれていました。お詫びして訂正させていただきます。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.