多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
転職活動で重要な局面はいくつかあります。ですが、どんな人でもまずは「内定」を勝ち取ることを目指すと思います。特に、第1志望の会社からの内定獲得は特別うれしいものですね。
しかし、内定をもらうことだけに注力し過ぎると、うっかり落とし穴にはまってしまうこともあります。
先日、あるITエンジニアから「非常に困ったことになっているのです」と相談を受けました。実際にあったこのケースについて、ここで確認してみましょう。
中山さん(仮名)は当時28歳。私立大学の文系学部を卒業後、以前よりシステム企画業務に興味があったことから、CRM系の自社パッケージを持つ中堅SIer(システムインテグレータ)に入社しました。
その後複数のオープン系開発プロジェクトを経験した中山さん。顧客からの評価も高く、26歳になったころには基本設計以降(一部要件定義フェイズ)でプロジェクトリーダーを務め、3〜5人の工程管理までも任せられるまでになっていました。
プロジェクトでの経験を積むにつれ、中山さんはだんだんと次のような希望を持つようになっていきました。
自社の業界での位置付けを考え、現在の環境でこの3点の希望を満たすのは難しいと感じた中山さんは、転職を決断。活動をスタートしました。
初めての転職活動に不安もあったようですが、中山さんは複数の企業をピックアップして応募しました。活動を進めるうち、業界でも準大手に位置付けされるSIer、A社に出合った中山さんは、「自分の希望にぴったりの会社だ」と感じ、A社を第1志望と考えるようになりました。
幸いにも、書類選考通過・1次面接通過と順調に選考は進みました。
1次面接の日に受けた筆記試験の結果が出るのは1週間から10日後で、通常は筆記試験の合否判定後に最終面接である役員面接が行われます。ですが役員の日程の都合から、役員面接を先に行うことになりました。
役員面接でも非常に感触が良く、その場で役員から「ぜひ、うちに来てほしい。人材として期待する」といわれ握手までしたようです。第1志望のA社からそのようなセリフを聞き、中山さんは非常にうれしく感じたそうです。
すぐに転職の決断をした中山さんは、翌日、迷うことなく現職の上司に退職意思を伝えました。上司からは「君には期待をしているんだ。辞めないで頑張ってほしい」と説得されたようですが、中山さんの意思は固く、結局その日のうちに退職は了承されました。
さて役員面接から数日後、A社から連絡がありました。そこで中山さんが聞いたのは、耳を疑うような言葉だったのです。
A社 選考結果ですが、残念ながら不採用との結論に至りました。
中山さん ……え?! 先日、役員の方から「うちに来てくれ」といわれましたが。なぜですか?
A社 当社採用フローの筆記テストの結果が、基準に至らなかったためです。
中山さん ……。
あまりの結末に、中山さんはしばらく声もなかったそうです。
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