OpnePNEプロジェクトは導入をにらんでGoogleが「OpenSocial」を発表した当初から調査を始めています。
最初にお話したとおり、2007年11月に登場した「OpenSocial」ですが、2008年3月現在でも仕様策定や開発作業が続いています。2008年1月にはAPIのバージョンが0.7になり、ソーシャルアプリケーションを作成するためのに必要な機能が追加されています。というよりも、初期バージョンのOpenSocialは非常に機能が限定されており、思うようなアプリケーションは作れませんでした。
「OpenSocial」を使って本格的なアプリケーションを開発者が提供するには、まだまだOpenSocialはバージョンアップを重ねる必要がありそうです。
さて、調査を進めるうち、大きな落とし穴を発見してしまいました。
「OpenSocial」は、なんと、日本の携帯電話(少なくとも、日本で普及している携帯電話のWebブラウザ)には対応していないという点です。冒頭で述べたとおり「OpenSocial」は「JavaScript」を利用してデータのやりとりをしているため、そもそも「JavaScript」に対応していない携帯では動きません。
とはいえ、APIの性質上、「JavaScript」なしで動作させることは非常に困難です。通常のWebブラウザと遜色(そんしょく)のないiPhone/iPod touchならともかく、現在日本で普及している携帯電話に対しては壊滅状態といわざるを得ません。
しかし、今後「OpenSocial」は「Flash Lite」については対応を予定しているとのこと。日本の携帯電話で「OpenSocial」をやるなら、「Flash Lite」で…… という方向で落ち着きそうです。
日本は海外と比べてSNSの市場が特殊です。日本で特に重要視される、招待性やフレンドの認証、公開範囲のきめ細かい制限、携帯電話サポートなどが実現されてから、日本では本格的な普及期に入ると筆者は見ています。
また、SNSとは直接関係ないのですが、さまざまなサービスで共通して使用できるURL形式のアカウント(ID)である「OpenID」がYahoo!の正式採用を経て本格的な普及期に入りました。これは目が離せません。海外のSNS業界ではこれらOpenIDやOpenSocialをどう連携していくか? について焦点が集まるものと思われます。
編集部注:SNSそのものについて詳しく知りたい読者は、記事「2006年のネット界を席巻したSNS」をご参照ください。
しかし、いずれの規格にしても携帯電話のことはほとんど考えられていない状況です。日本で賛同を表明しているSNSプロバイダは、携帯対応について規格策定作業に積極的に加わる必要がありますね。
だんだん、OpenSocialについて、分かってきましたか? 勘違いしてはいけないのは、「OpenSocial」は、SNSとSNSをつなぐための規格ではないということです。多くのSNSと多くのアプリケーションとの仲立ちをするものが「OpenSocial」です。
こうなると、OpenSocialで具体的に何を作ればいいのか、実際にどのようなアプリケーションがOpenSocialで実現できるのか、また、実現すればいいのかは読者の皆さんも気になるところだと思います。
参考に、これまで筆者が多くのSNSにかかわってきた経験を基にして、筆者の頭の中にある具体的なソーシャルアプリケーションのアイデアをちょっと紹介しておきます。
SNSのフレンド同士で、プロフィール写真や日記写真などをソーシャルアプリケーション内に持ち寄ります。そこで、加工をしてフレンドに配る。現実の写真印刷サービスにつなぎ、印刷してみんなに配る……というような使い方が考えられます。
例えばの話ですが、「iTunes Store」が「OpenSocial」対応になっていたとします。
iTunes Storeで買った曲は各SNSのマイページに張り付け、訪問したフレンドにストリーミングで聞かせることができるようになります。自分で買った曲なので、特定の1つのSNSだけではなく、自分が参加するすべてのSNSに張り付け、すべてのフレンドに聞いてもらえるようにすることもできるでしょう。
現在、メールでやりとりしているグリーティングカードのように、凝ったグリーティングカードを、通常のSNS内のメッセージ機能で、自分のフレンドに送信することができるようになるかもしれません。
チャットも通常のSNS内で行われるよりもリッチな機能を付加できるでしょう。SNS上のフレンド同士や特定のコミュニティ内でチャットできるようになるといいですね。
最後に思い付いたのが、個々のSNS上の自分のプロフィールを基にした「サービス名刺」です。
例えば、社内SNSであれば、「手嶋屋SNSのIDナンバー1番の手嶋です」や「西千葉SNSのIDナンバー1番の虎岩です」というような、名刺を作ることができます。そして、SNS内のフレンドに渡したり、場合によってはSNSをまたいで、ほかのSNSの人とも名刺を交換したりすることができるようになるかもしれません。
このように、前編ではOpenSocialの概要や、登場の経緯、日本のSNS市場における対応状況、具体的に何を作ればいいのかのヒントなどを見てきましたがいかがでしたか?
API一つとっても、歴史やドラマあり、各社の思惑ありで非常にワクワクしますね。億単位のユーザーを抱えるSNSが、共通APIに関連してせめぎ合っているという構図を理解いただけたらうれしいです。
後編では、「ソーシャルアプリケーション開発入門」として、OpenSocialで実際にソーシャルアプリケーションを作成する方法について解説したいと思います。お楽しみに!!
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