このように、「カプセル化」と「物理マシン非依存」という特長は仮想マシンを活用する上で欠かせない要素となる。この2つの機能をいい形で応用しているのが「クローン」ならびに「テンプレート」と呼ばれる機能である。
クローンは文字通り仮想マシンを複製する機能である。既存の仮想マシンを基に新しい仮想マシンを作成することができる。このとき、内部的に実施しているのはカプセル化された仮想マシンファイル群のコピーであるため短時間で完了することができる。
このように「仮想マシンから仮想マシンを複製する」という行為を「クローン」とVMware Infrastructure 3では呼んでいる。ところで「基準となる仮想マシンの元イメージを手配し、そこから複数の仮想マシンを展開したい」という場合があるかもしれない。この「仮想マシンの元イメージ」のことを「テンプレート」と呼んでいる。
テンプレートの作成方法は2つある。既存の仮想マシンからクローン処理を行って別途テンプレートを作成する方法と、既存の仮想マシンをテンプレートに変換する方法である。作成したテンプレートを、いわゆる「ゴールデンイメージ」として保持しておき、ユーザーはここから必要なときに仮想マシンを展開する形で新規作成することが可能である。
仮想マシンのクローン、またはテンプレートから仮想マシンの展開を行う際に、完全に同一のコピーを作成するのみだとさまざまな不都合が発生する場合がある。例えば、ホスト名やIPアドレスなどは適切に変更する必要トルがあるし、OSのライセンスキーなども入れ替えなければならない。またWindows系OSの場合はセキュリティIDと呼ばれる識別子がコンピュータに対して振られているため、これについても衝突を避けなければならない。
このため、VMware Infrastructure 3では「ゲストOSのカスタマイズ」を行う機能が提供されている。すべてのゲストOSのカスタマイズをサポートしているわけではないが、Windows系、Linux系共に主流のものについてはこのカスタマイズ機能が利用可能である。特にWindows系ゲストOSの仮想マシンについては先述のセキュリティIDの問題があるため、適切なカスタマイズができなければならない。
そこでVMware Infrastructure 3ではマイクロソフトより提供されているsysprepと呼ばれるツールを活用して、Windows系ゲストOSのカスタマイズを実現するようにしている。VMware VirtualCenterを動作させるコンピュータのあるフォルダにsysprepツールのファイル一式を配置しておけば、クローン取得時、もしくはテンプレートからの展開時にこのツールと応答ファイルを自動的にゲストOSの中に配置し、カスタマイズを行うように実装されている。
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