ユーザビリティを定義する規格はあっても、開発プロセスにすぐに組み込めるようなものではありません。そこで、おのおののソフトウェアベンダは自社独自のUI標準規格を作成し、それに準拠することで品質にばらつきのないUI開発の仕組みづくりを行っています。このうち特に有名なものは、米アップルの「Apple Human Interface Guidelines」です。
この中では、ユーザビリティ設計の指針を示すキーワードはもちろん、より具体的な例も豊富に含まれています。例を挙げると、ボタンが守るべきサイズをピクセル単位で指定したものや、アイコンの描き方、色使いまでもが事細かに解説されています。
これなら開発者も現場で有効に使用できます。このような厳密なガイドラインにより、洗練されたMacのUIが生み出されているのです。日本語に翻訳されたものも存在しますので、ぜひ検索してみてください。
また、現在Webアプリケーション開発プラットフォームとして普及しているAdobe Flexにも、Flex Interface Guidelinesというガイドラインがあります。まだ英語のドラフト版のみの提供ですが、現時点でもかなり読み応えのある内容となっています。図やムービーが豊富ですので、眺めているだけでも得られるものは少なからずあるはずです。
実際の開発にてユーザビリティの向上や統一を図るためには、このUI標準が必ずといっていいほど必要となります。デザイナが複数稼働している現場の場合はなおさらです。もちろん、前述したような公開されているUI標準をそのまま適用することも不可能ではありませんが、世の中にはさまざまな開発案件があります。
おのおのの会社で扱うものは、ゲーム、モバイル、業務システムなど、何かしらの傾向があり、ターゲットとなるユーザーや使用される状況も異なります。また、会社の特色やレギュレーションを推し出したい場合もあります。
このような場合、前述した国際規格をベースにして、あるユーザーや業界に特化させたり、新しいアイデアを組み込んだりして、独自のUI標準を作ると提案したいと思います。
私の所属する会社でも、独自のUI標準を作成しました。先にご紹介したニールセンらの定義を、開発の現場に適した形に独自解釈したもので、特に時間経過の概念を重要視しています。
「買った当初は満足していたけれど、長く使っていたら不便な部分ばかりが気になってしまう」という経験をしたことはありませんか? このように「製品(システム)の使用前と使用中では、ユーザーにとって有益な要因は変化する」ということを念頭に、下記の6つをユーザビリティの構成要素と定義しました。
以上を時間軸に沿って並べると以下の図のようになります。
分かりやすくするために、これらの要素を車に当てはめてみます。
さて、次回からは実際のアプリケーションの事例や例え話、具体的なチェック項目を交えつつ、これらの要素についてより深く解説していきたいと思います。ぜひ、独自UI標準を作成する際の参考にしてください。
嶋田 豪介(しまだ ごうすけ)
クラスメソッド所属 ユーザーインターフェイスデザイナー
もとはゲーム業界に在籍していたこともあり、3Dモデリングもできる。ユーザーに対してある種「飛び道具」的な提案を行うこともある。Adobe Flex/Flash、Ajax系のフレームワークに詳しい。
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