仮想サーバのバックアップには、これまで説明してきたようにいくつかの方法があり、それぞれ長所があるものの、短所も見受けられる。では短所を補う方法はないのか。今回は最終回として、それぞれのバックアップ手法を補う新たな動きについて説明する
ゲストOS上でバックアップソフトウェアを動作させる方法は、管理や操作が極めて容易である。また、アプリケーションを意識したバックアップが可能なので、I/Oが多く発生するアプリケーションのバックアップに向いている(「第2回 ゲストOS上でのバックアップの利点と欠点」を参照)。ただし、同じ物理サーバ上で動作するゲストOSのバックアップを同時に実行する場合に、多くのリソースが必要になることがデメリットであると述べた。この負荷を軽減するには、バックアップクライアントでの重複排除技術が効果的である。
以下は、シマンテックの重複排除製品「NetBackup PureDisk」の例である。
バックアップのスケジュールが開始されると、ゲストOS上にインストールされたPureDiskクライアントにより、バックアップ対象のファイルがPureDiskサーバ(ストレージプール)上に存在するかどうかがチェックされる。存在しない場合は、バックアップ対象とされ、セグメントという単位(デフォルトでは128Kbytes)に分割される。それぞれのセグメントがさらにPureDiskサーバ上に存在するかどうかがチェックされ、存在しないセグメントだけがバックアップ対象となる。この仕組みにより、重複としてデータ転送の対象外とされるデータには次のようなものがある。
結果として、転送対象となるデータの量が少なくて済むため、バックアップによるI/O負荷が非常に軽くなるケースが多い。このため、複数のゲストOS上で同時にバックアップが実行されても、通常のバックアップと比較して物理サーバに対する負荷が軽減される。
VMwareのバックアップのために、独自のテクノロジーとしてVCBが用意されているのは、第4回で紹介した通りだが、複雑なバックアップ要求に応えるためにVCBは進化を続けており、いくつかのオプションが用意されるようになっている。その1つに、転送モードの選択がある。
SANモード
第4回で紹介した転送モードがこれだ。ESX サーバ、VCBバックアッププロキシおよびストレージが、SANまたはiSCSIで接続されている必要がある。オフホストバックアップが可能であり、高いパフォーマンスが期待できる。
LANモード
SAN(FC-SANやiSCSI)で接続できない環境では、通常のネットワークを使用してバックアップ転送ができるようになっている。このため、ストレージの選択肢が広がるなどのメリットがある一方、業務ネットワークに影響を与えることを考慮する必要がある。
ホットアド(Hot Add)モード
この転送モードでは、VCBプロキシは仮想マシンとして動作する。したがって、必ずしも専用のハードウェアである必要がない。VMDKデータの転送にESXのI/Oスタックを使用するため、LANモードよりも高いパフォーマンスが期待できる。
これ以外にも、OSの静的な状態のスナップショット作成に、従来からのSyncドライバに代わってボリューム・シャドウ・コピー・サービス(Windows Volume Shadow Copy Service:VSS)がサポートされており、より高い整合性を保つことができるようになっている。このように、VCBは機能強化を続けているので、今後の展開にも注目だ。また、これらの新機能を実際に検討する場合には、バックアップソフトウェアの対応状況にも注目してほしい。
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