Windows Server 2008 Hyper-Vでは、バックアップのためにボリューム・シャドウ・コピー・サービス(VSS)がサポートされている。VSSを使うと、稼働中のシステムでも、バックアップのためにシステムをシャットダウンすることなく、ファイルの整合性を保ちながらバックアップを行うことができる。前回、VMwareが提供するVCBで解説したのと同様に、バックアップ専用にバックアッププロキシサーバを使用する構成にもでき、バックアップ実行中に生じる物理サーバに対する負荷をバックアッププロキシに分散することができる。この場合は、バックアップソフトウェアがVSSを使ったHyper-Vのバックアップに対応している必要がある。
このような仮想化環境ならではの手法が使用できないケース(ゲストOSがスナップショット技術に対応していないなど)では、ゲストOS上でのバックアップ(第2回を参照)を実行することになる。ゲストOS上でのバックアップは、VMwareやHyper-Vに限らず、Citrix XenServer など、どのような仮想化技術でも基本的には適用できる。ただし、バックアップソフトウェアがサポートする環境であることを確認する必要がある。また、1台の物理サーバ上で同時に実行されるバックアップジョブの負荷が、ゲストOSの数に応じて増えることを考慮して、サーバを設計することが重要となる。
また、ホスト型の仮想化技術(ホストOS上でアプリケーションとして仮想化が実行される場合)では、ゲストOSのイメージをファイルとしてバックアップできる場合もある。このときは、バックアップ実行中の負荷に加え、ファイルの整合性についても考慮する必要があるのは第3回で解説したとおりだ。
これまでさまざまなバックアップ手法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介してきたが、それでは仮想化環境にベストなバックアップ手法は何だろう、と思われるかもしれない。残念ながら、これがベストという手法はなく、環境や使用されるアプリケーションの種類、重要度などにより、コストとSLAの関係を考慮の上、決定する必要がある。昨今では重要なアプリケーションや大規模な環境にも仮想化技術が導入されるようになっている。重要なことは、仮想化環境を構築する際には、設計の段階でバックアップ手法についても検討し、インフラの構築やリソースの配分を決定する必要があるということだ。
バックアップソフトウェアを検討の際には、実現したいバックアップ手法に対応しているかどうか、またその対応のレベルやバリエーション、操作性に加え、仮想化環境と物理環境が混在した際の統合管理などについても考慮してほしい。
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