確定申告直前にお送りする「知れば得する」確定申告講座。フリーとして活躍するITエンジニア向けに、確定申告で賢く節税するコツをまとめた。
確定申告の季節がやってきた。フリーエンジニアとしては、賢い節税を心掛けたいものだ。特に昨今の経済情勢を考えれば、確定申告で1円でも多く税金の還付を受けたいところだろう。
そのためにはどうすればよいのか。公認会計士の深作智行氏に、フリーエンジニアのための確定申告のポイントを聞いた。
経費、節税について知りたい方は、以下の記事も参考になります
・開業【パーフェクト】マニュアル:資金計画の立て方
・アプリ開発ビジネスで独立したら、「消費税」をどう納めるのか?
賢い確定申告の基本として深作氏がアドバイスするのが、「税務署の心証を良くすること」だ。「あえて税務署とバトルしたいなら止めないが、税務署とトラブルを起こしていいことは1つもない」(深作氏)という。税務署に疑問を持たれないような、きちんとした確定申告書を作成して提出すれば、税務署の心証は良くなり、申告是認(税務調査なく、申告書の記載内容が認められること)を目指せるのだ。
では、税務署の心証を良くするような確定申告書は、どのように作成すればよいのだろう。
この時期、フリーエンジニアの間でよく話題に上るのが、「プライベートと必要経費が交ざっている費用(家賃など)について、必要経費は何%まで認められるのか」だろう。俗に「40%なら大丈夫」とか「50%を超えるとダメ」とかいうが、深作氏によれば、何%までなら認めるという画一的なルールはない。ただ「100%というのは無理な話」(深作氏)だ。
例えば、携帯電話の利用料金が年間20万円であるとする。20万円すべてを必要経費として処理してしまうと、税務署は「この中に私用電話も含まれているのでは」と疑うだろう。こんなずさんな経費の出し方は、税務署の心証を悪くする。結果としてほかの経費も疑わしく思われ、細かいチェックを受ける羽目になるかもしれない。
面倒でも携帯電話の明細をチェックして、仕事先との電話は「公」、友人との電話は「私」ときちんと分け、その内容を資料として提出できるようにしておく。そのうえで、仕事に使った携帯電話代が20万円のうち16万円になるようであれば、それはそれで認められるのだ。
公私の区別をつけ、そのうえで必要経費を算出し、「おっ、この人はきちんとやっているな」と税務署員に思われるようにすることが、トラブルを防ぎ、賢く節税する第一歩になるだろう。
公私の区別をつける話はこの後にも出てくるが、業務用の銀行口座を別に作るとか、携帯電話ならプライベート用の端末と業務用の端末を分けるなどの対策も考えられるだろう。
ここで、税務署の心証を良くし、トラブルを回避する確定申告書の作成のヒントを紹介したい。確定申告書には、収支内訳書や青色申告決算書を添付する。そこには、減価償却費や修繕費、地代家賃、利子割引料などについて、支出のうち「必要経費に算入した額」を記載する個所がある。ここで、例えば住居兼事務所の家賃の全額を必要経費として申告すると、「プライベートの部分も必要経費にしている」と疑われることになる。一部を除いた額を必要経費として申告すれば、心証は良くなるだろう。車の減価償却費も同様である。確定申告は、まさに税務署に対するプレゼンテーションなのである。
そもそも、確定申告とは何だろうか。一般には毎年2月半ばから3月半ばまで行われるイベントが思い浮かぶだろう。確かにフリーエンジニア(個人事業主)の場合はそうだ。しかし、それだけが確定申告ではない。
法人(株式会社など)であれば決算期(事業年度)を決め、その決算月末で区切った売り上げと、それに要した原価や販売管理費などを差し引いて税前利益を算出し、その利益(所得)に応じた法人税を支払う。これも確定申告である。法人税の確定申告は原則として決算日から2カ月以内に行う。確定申告は実は「年中行われているイベント」(深作氏)なのである。
サラリーパーソンが扶養者控除や住宅借入金等特別控除などの書類を会社に提出し、12月の給与で行う「年末調整」も、所得税額(源泉徴収税額)の確定作業だ(ただし給与所得者であっても、土地売買や株取引など会社からの報酬以外の所得、医療費をたくさん支払うなどの支出があれば、再度2月半ばからの「確定申告」を行うことになる)。
フリーエンジニアの場合、所得税の対象期間は前年の1月1日から12月31日までの1年間である。今回の確定申告であれば、2008年1月1日から12月31日までだ。個人の場合、法人のように決算月を自分で決めることはできず、暦年になる。その間の収入から必要経費を差し引いて「もうけ」を申告し、所得税法に即した所得税の納税額を確定させるのがフリーエンジニアの「確定申告」である。
ここで深作氏が注意点として挙げるのが、確定申告の対象となるのは12月末までの「収入」ではなく、「役務の提供」になるということだ。「例えば、請求の締めが毎月20日の場合、11月21日から12月20日までの作業についての入金が翌年の1月以降であっても、今年の収入金額としなければなりません。さらにいえば、12月21日から12月末までの作業についても、出来高や時給・日給ベースで金額が見積もれる場合には、収入金額に含めなければなりません」(深作氏)。ややこしいが、このあたりの処理を適正に行っていれば、税務調査を受けた場合でも、税務署からの好感度は増すわけである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.